シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

駒場東邦中学校

2016年07月掲載

駒場東邦中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.学びの題材は身の回りにある。それを実感できる授業を行い、興味関心を引き出す。

インタビュー2/3

社会科は暗記科目ではない

「社会科は暗記科目」という子は多いですか。

先生 多いです。

その認識をどう変えるのですか。

先生 「暗記は勉強か?」というところから入っていきます。たとえば、「日本について学ぼう」と言った時に、暗記してきた生徒は「山の名前を覚えるの?」となります。山の名前、川の名前を覚えれば日本を学んだことになるのでしょうか。ならないですよね。

この学校に置き換えると、「11ルーム(駒場東邦の1年1組)について知りましょう」と言った時に、11ルームの全員の生徒の名前を覚えただけで、11ルームを知ったことにはなりません。名前を覚えることは出発点であって、その後、どうするかというと、「身長や誕生日を覚えましょう」ではなく、みんながクラスで居心地よく過ごすために、お互いにどうかかわっていくべきか、を考えると思うのです。「それが社会だ」ということを、感じてほしいです。

駒場東邦中学校

駒場東邦中学校

身近な題材を取り入れて社会科のおもしろさを伝える

どのような授業を行っているのですか。

先生 たとえば公民では、これまでの選挙公報や選挙ポスターをずらっと並べて壁に貼り、気づいたことをグループで話し合います。候補者の表記にひらがなが多いとか、自民党のポスターは安倍さんの顔がどんどん大きくなっているとか、いろいろなことに気づくんですね。そこで、なぜかを考えさせます。色や構図などにより、党の情勢をはじめ、いろいろなことが見えてくるので、おもしろいです。

そういう授業をすると、最初は「先生、テストには何が出るの?」と、不安そうに聞いてくる生徒もいますが、実際にテストを受けると、「解くことがおもしろかった」という声を聞けるようになります。

興味関心をモチベーションにおもしろい授業を展開

どのようなきっかけで選挙ポスターを題材にしたのですか。

先生 本校では模擬選挙(本校の場合、国政選挙にあわせ、実際の候補者や政党を選ぶ選挙の体験プログラム)を導入しています。選挙の時期により、いつ模擬選挙をやるかを検討しなければならないので、普段から気にしていますし、選挙に絡んだ教材研究や授業研究も、他校の先生と一緒にやっているので、選挙公報なども題材にすることがあります。

また、豊かさをはかる指標を自分たちで作る課題では、いろいろな統計データをもとに式を立てる時に、どのデータの割合を多く出すかなど、よりよい工夫をしてもらい、発表してもらうこともあります。結果も、式のたて方もおもしろく、普段は社会科が得意ではないといっている数学好きの生徒たちが活躍する場面もあります。

駒場東邦中学校

駒場東邦中学校

地理でも社会事象への感心を深め、認識を掘り下げる授業を実施

公民以外にも、貴校らしい授業はありますか。

先生 中1の地理では都道府県別データからわかることをテーマに、統計地図を作って発表しています。テーマは自由です。発表することが前提なので、「どういうデータが適するか」をみんなで話したり、書きやすい図を紹介したりしています。

インターネットでキャッチしたデータを、そのまま伝えてもおもしろくありません。データを2つ組み合わせたり、自分なりの考察を加えるなど、工夫を入れられるかどうかがポイントになります。たとえば、NHK受信料払いと都道府県民の特徴をテーマに選んだ生徒は、「地方は民放が少ないので、NHKを見る可能性が高い」と考察しました。中1なりの目の付けどころも、この授業のおもしろいところです。

中1では日本各地の、中2では世界各地の白地図を使って行います。図を作成する時の色の使い方もまた、センスが光るところで、上手な生徒がいます。

生徒さんのモチベーションは、どのように引き出しているのですか。

先生 自由に多方面からアプローチできるところが、やる気につながっていると思います。他の生徒の切り口を見て、「すごいな」と思ったり、「他の人と一緒は嫌だ」と思ったり。さまざまな刺激を受け合い、工夫するようになります。

データの見方も1つではない

先生 データの見方も学習します。初見のデータは、生徒がもっている知識を使って読み解くことが必要です。見尽くされているデータでも、一方向からしか見ていなかった場合があるので、それを聞いて、いろいろ方向から見ることを促します。

たとえば、札幌と東京の気候を比べると、「札幌は寒いから気温が低い」というイメージが浮かびますが、2つの都市の気候をデータ化し、折れ線グラフを書いて、そこからわかることを聞くと、最初に気づくのは「寒い」という数値(値)よりも、「寒暖の差が大きい」という変化量についての方が多いと思います。フラットな目で見て、あらためてデータを解析することは、非常に大事です。

駒場東邦中学校

駒場東邦中学校

インタビュー2/3

駒場東邦中学校
駒場東邦中学校1957(昭和32)年4月、東邦大学の理事長であった額田豊博士が、当時の名門・都立日比谷高校校長の菊地龍道先生を招き、公立校ではできなかった夢を実現させるため、現在地に中・高を開校。71年に高校募集を停止し、完全中高一貫教育の体制が確立した。2017(平成29)年に創立60周年を迎えた。
神奈川、東京のどちらからも通学至便で、東大教養学部にも程近い都内有数の文教地区に位置。300名収容の講堂、6万9千冊の蔵書を誇る図書室、9室の理科実験室、室内温水プール、トレーニング室、柔道場、剣道場、CALL教室など申し分ない環境が整っている。職員室前のロビーには生徒が気軽に質問や相談をできるよう、机やイスを設置している。
先生、生徒、父母の三者相互の理解と信頼に基づく教育を軸に、知・徳・体の調和のとれた、科学的精神と自主独立の精神をもった時代のリーダーを育てることを目指す。年間を通じて行事も多く、とくにスポーツ行事などでは、先輩が後輩の面倒をよく見る「駒東気質」を培う。中1では柔道・剣道の両方を、中2・中3はどちらかを履修することになっている。
2004年から中学校では1クラス40名、6クラス編成に。「自ら考え、自ら行動する」習慣を身につけながら、各教科でバランスのとれた能力を身につけることが目標。英・数・理では特に少人数教育による理解の徹底と実習の充実をはかっている。中1・中2の英語と理科実験は分割授業。数学は中2(TT)・中3(習熟度別分割)・高1と高2(均等分割)の少人数制授業を行う。英語は、深い読解力をつけるために中3~高3までサイドリーダーの時間を導入。さらに高3ではネイティブ指導のもと自分の考えを英語で表現するコンプリヘンシブ・クラスなど独特の指導も展開している。文系・理系に分かれるのは高3になってから。中学生は指名制、高校生は希望制の夏期講習を実施する。
濃紺の前ホック型詰襟は、いまや駒東のトレードマーク。伝統的に先輩・後輩の仲がよく、5月中旬の体育祭では全校生徒が4色の組に分かれ、各色、高3生の指導の下、一丸となって競い合う。9月の文化祭は、多くの参加団体と高校生約200名で構成される文化祭実行委員会によって、一年かけて準備される。中学では林間学校、鎌倉見学、奈良、京都研究旅と探究活動が充実しており、高校の修学旅行は生徒によって毎年行き先が決められる。クラブは文化部16、体育部16、同好会15があり、兼部している生徒も多い。中学サッカー部・軟式野球部・アーチェリー部・囲碁部・陸上部・化学部・模擬国連同好会などは関東大会や全国大会に出場。アメリカ・台湾への短期交換留学制度もある。