シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

攻玉社中学校

2016年05月掲載

攻玉社中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.「文章を書ける!」という自信をつける

インタビュー3/3

目標は同じだけれどプロセスは教員に任される

栗原先生 「大学受験に太刀打ちできる学力を身につける」という教育目標は教員で共有していますが、そのためのアプローチは各自の裁量に任されています。語彙を増やそうと漢字を徹底的に鍛える教員もいれば、とにかく書かせる教員もいます。選ぶ教材も教員によって異なります。

記述力を鍛えている教員は多いと思います。入学時、文章を書くのが嫌いな生徒が多いので、私が心がけているのは、まず文章を書くことへの抵抗感をなくすことです。読書感想文などの課題を出したり、ふだんの授業でも、文章を要約させたり、自分の発言をまとめたり、機会を見つけてとにかく書いて、書くことに慣れさせます。

攻玉社中学校

攻玉社中学校

どんな小さな一歩でも「よくできたね!」と褒める

栗原先生 生徒には「何でも書いていいんだよ」「とにかく思ったことを書いてみよう」と声をかけます。

私は白紙を1枚配ってとにかく書くといったテストをしますが、その場合は採点基準を緩くします。がんばって書いた答えは、「よくできたね!」と○をつけます。ちょっとしたことでも褒めると、生徒は喜んでやる気になってくれます。

読解は読み取り方を1つに絞らずに、いろいろな読み方を認めています。オーソドックスな読み取り方だけでなく、「こういうとらえ方もできるよ」ということを生徒に示しながら、「君たちはどう思う?」と投げかけて思考を広げるように意識しています。だからこそ、授業はパターン化されず、教員によって教え方が異なるのだと思います。

「その続きを読みたいな」で生徒をやる気にさせる

栗原先生 2015年度の卒業生は私が中1から6年間教えた生徒でした。中学で手をかけた分、高3の小論文の指導で苦労することはあまりありませんでした。

国語の記述対策をしていない理系大学に進学した生徒も、高1までひたすら書かせていましたから、書ける自信がついています。卒業生からは「大学のレポートが苦にならない」と言われました。

そんな彼らも、中1のときはペンを持ったまま固まってしまい、最初の1行がなかなか書けませんでした。「何を書いてもいいんだよ」と言うと、「何も書くことがありません」と返され、「何か思うことあるでしょう?」と促しても、「思いません」という生徒ばかりでした。

ようやく1行書いたら、「いいところに目をつけたね。その続きを読みたいな」と言うと、書いてくれました。

校祖 近藤真琴先生

校祖 近藤真琴先生

「自分は書けない」という思い込みを取り除く

栗原先生 中2に梶井基次郎は早いかなと思いながら『檸檬』をテーマにレポートを書いてもらったところ、きちんと読みこなしてくれました。彼らに書く力はあるのです。だからこそ、いかにやる気にさせるかが大事です。

書くのが苦手、嫌いな生徒は「書けない」と思い込んでいます。そこで「書けるんだ」ということに気づくと自信がつきます。

600字、800字と書けた字数が増えていくと、自分の変化を実感できます。するとお母さんも「こんなに書けるようになったのね!」と褒めてくれる。成長を見ていてくれる人がいる、認めてもらえることがわかるとがんばることができます。

中高生だからこそ読んでほしい文学作品がある

栗原先生 高校になるとどうしても評論文を扱うことが多くなります。大学入試は大きな目標ですが、本校では高校でも文学作品も深く読む、味わうことを大切にしています。

夏目漱石の『こころ』のように、この年代だから読んでほしい作品があります。高2まではどの教員も名著とされる文学作品を積極的に紹介していると思います。

思い返すと、私が国語を教える道に進んだ原点は、高校時代の志賀直哉の作品レポートでした。若いときの本との出会いを大切にしてほしいし、教員がそれを手助けできればと思っています。

攻玉社中学校

攻玉社中学校

国際学級の生徒から多様性を学ぶ

栗原先生 本校の中学には国際学級があります。彼らのよさは、自由で、生きる力にあふれていることです。

一般クラスの生徒は目立たないようにしようという意識が強いようですが、国際学級の生徒は積極的に自己主張します。行動が奔放すぎてハラハラさせられますが、頭ごなしに叱ると彼らのよさをなくしてしまうので、時間をかけて成長を見守っています。

彼らののびのびした姿を見ると、縛りすぎてはいけないことに改めて気づかされます。一般クラスの生徒も「もっとのびのびしていいんだ」と思うでしょう。ふだんの生活の中で、国際学級の生徒を通していろいろな価値観に触れ、多角的なものの見方を身につけることができるのは、一般クラスの生徒にとって貴重な体験だと思います。

インタビュー3/3

攻玉社中学校
攻玉社中学校1863(文久3)年、蘭学者の近藤真琴が創立。89(明治22)年、海軍予備科を設置。海軍軍人の養成など頂点を極めたエリート教育はつとに有名。1947(昭和22)年、学制改革により新制攻玉社中が発足。66年より中高一貫校となり、英才開発教育体制が整う。90(平成2)年に高校募集廃止。
校地はそれほど広くないが、室内温水プール、コンピュータ使用のLL教室、目的別理科実験室、地下に柔・剣道場を備えた地上4階建ての2号館など施設は充実している。03年には、1500名収容の講堂兼体育館や図書室、生徒ホールなどを完備する新校舎が完成した。自然光を取り入れた吹き抜けた回廊式の構造で、屋上は庭園になっている。雨水の利用など環境にも配慮。明るい学校生活が送れる。
道徳教育を教育の基礎とし、詩経の「他山ノ石以テ玉ヲ攻(みが)クベシ」に由来する「攻玉」の2文字を理想に掲げる。自主性を尊重し、体力・気力の強化をはかり、6年一貫英才開発教育を推進。校名から受ける硬派でスパルタ的なイメージとは違い、生徒はいたってのびやかで、先生と生徒の距離が極めて近く、一体感のある面倒見のよさが感じられる。帰国生のための国際学級がある。
英・数・国の時間数が多く、中3で高校の内容に入る。中3と高1は選抜クラスを1クラス設け、成績により進級時に入れ替えを行う。成績不振者には指名制補習、希望者には特別講座、英語は2005年から『トレジャー』を使用し、中1から外国人教師による英会話が週1時間。中3では自由題材の卒業論文に1年間取り組む。高2から文系・理系に分かれ、それぞれに国公立大志望クラスを設置。希望制の特別講座・指名制の補習・補講などバックアップ体制も充実。
中学生の約95%がいずれかにクラブに所属している。バスケットボール、サッカー、野球、テニス、バレーボール部は人気が高く、50名以上の部員がいる。学校行事は多彩で、英語暗誦大会、芸術鑑賞、中学自由研究発表会などの文化的な行事のほか、中学生は16km、高校生は20kmを歩く耐久歩行大会、夏の臨海・林間学校、スキー教室など体育的行事も多い。中3では希望者制海外ホームステイも実施。中1~中3の国際学級に所属する帰国生とは行事やクラブ活動などで接し、海外への視野を広げる一助になっている。