シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

攻玉社中学校

2016年05月掲載

攻玉社中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.“古今長短”のいろいろな文章に触れよう

インタビュー2/3

“食わず嫌い”にならないで、まず読んでみよう

貴校の文章読解は、比較的古い作品から最近の作品まで、また文章も長めだったり短めだったり、いろいろな文章を取り上げていますね。

栗原先生 それは、いろいろな文章に触れてほしいというメッセージでもあります。作品の年代や難しさ、文章の長短にかかわらず、えり好みをしないこと。「まず読んでみよう」と前向きな気持ちを持っていてほしいと思います。

また文章の傾向が似通らないように選んでいるのは、受験生が過去問に縛られて、同じような問題ばかりに取り組むことを避ける意味もあります。

入試問題は持ち帰りできるそうですから、自宅に帰ったらぜひ読み返してほしいですね。

栗原先生 本校を続けて受験するお子さんにとって、第1回入試はいい練習になるでしょう。「今日はちょっとわからなかったけれど、明日の受験のために読み返してみよう」と前向きな気持ちで取り組んでくれたらうれしいですね。

攻玉社中学校 校訓

攻玉社中学校 校訓

読みにくい難しい文章は設問の難易度を下げる

第1回入試の小説問題で取り上げた『べんけい』(直木三十五著)の文章は難しい語彙がたくさん出てきます。ただ、注釈は尺貫法の単位だけにとどめていますね。

栗原先生 注釈がたくさんあると、受験生はそればかり見て内容が頭に入らなくなります。わからないなりに「こんな話だろう」と類推しながら読んでもらえれば十分です。

読みにくい、難しい文章ですが、男子が好みそうな戦記ものなので、読むのに時間はかかったけれど、読みやすかったと思います。正答率も全体で66%とよくできていました。

古い作品や難しい文章のときは読むだけで大変なので、設問をやさしくしています。一方、短めの文章のときは設問の選択肢を長めにして難易度を上げています。

本文の読み取り不足が目立った記述問題

栗原先生 第2回入試の文章読解の正答率は、概ねこちらの想定通りでした。ですが、評論の記述問題(「疑わしきは罰する」とはどういうことかを説明)は、要点を押さえて満点もしくは満点近く取れた受験生が、例年より少なかったですね。

「疑わしい」や「罰する」ことについて説明をしてほしかったのですが、文中の表面的なところをつなげたものが多かった。ということは、設問の意図をとらえきれなかった、読み込みが浅かったのでしょう。

「疑わしきは罰する」というのはふだんの生活でなじみがありませんが、本文中に説明があります。それを拾いきれなかった、読み取り不足だったと思われます。

攻玉社中学校 砲弾状のモニュメントについて

攻玉社中学校 砲弾状のモニュメントについて

漢字の「へん」の間違いは意味をとらえていないから

漢字の書き取り問題の出来具合はどうでしたか。

栗原先生 漢字の書き取りは、第2回の正答率は45%でした。もう少し書けてもいいかなと思います。意外だったのは「港湾」が書けなかったことです。「感傷」も書けませんでした。「カンショウ」は同音異義語がいくつかありますが、「感傷」が出てこなかったのは例文「卒業写真を見て感傷にひたる」のような気持ちになった経験をしていないからかもしれません。

第1回では、「漂う」を「標」と間違えた受験生が目立ちました。惜しい間違いですが、意味をとらえず何となく見た目で覚えるとこうした間違いをしてしまいます。

漢字は機械的に覚えるだけでなく、意味をきちんととらえましょう。どんな場面で使う言葉なのかも押さえた上で、使いこなす練習もやってほしいと思います。

親御さんはお子さんに突っ込んで聞いてみて

栗原先生 おそらく親御さんたちはお子さんと一緒に過去問を解いているでしょう。そのとき、「それはどういう意味なの?」などと、もう一歩突っ込んで聞いてください。知識を覚えたかどうかだけでなく、覚えた知識を使えるように会話の中で練習してみましょう。

お子さんがわからなければ答えを教えるのではなく、「辞書を引いてみよう」と言って、子どもが自分で答えを見つけられるように誘導してほしいと思います。

Dの句中の「門波(「海峡に立つ波」の意味)」は初めて聞く言葉でしょう。これはどんな波なのか、辞書で調べてほしいですね。入試問題を新たな知識を得るきっかけにしてくれればと思います。

インタビュー2/3

攻玉社中学校
攻玉社中学校1863(文久3)年、蘭学者の近藤真琴が創立。89(明治22)年、海軍予備科を設置。海軍軍人の養成など頂点を極めたエリート教育はつとに有名。1947(昭和22)年、学制改革により新制攻玉社中が発足。66年より中高一貫校となり、英才開発教育体制が整う。90(平成2)年に高校募集廃止。
校地はそれほど広くないが、室内温水プール、コンピュータ使用のLL教室、目的別理科実験室、地下に柔・剣道場を備えた地上4階建ての2号館など施設は充実している。03年には、1500名収容の講堂兼体育館や図書室、生徒ホールなどを完備する新校舎が完成した。自然光を取り入れた吹き抜けた回廊式の構造で、屋上は庭園になっている。雨水の利用など環境にも配慮。明るい学校生活が送れる。
道徳教育を教育の基礎とし、詩経の「他山ノ石以テ玉ヲ攻(みが)クベシ」に由来する「攻玉」の2文字を理想に掲げる。自主性を尊重し、体力・気力の強化をはかり、6年一貫英才開発教育を推進。校名から受ける硬派でスパルタ的なイメージとは違い、生徒はいたってのびやかで、先生と生徒の距離が極めて近く、一体感のある面倒見のよさが感じられる。帰国生のための国際学級がある。
英・数・国の時間数が多く、中3で高校の内容に入る。中3と高1は選抜クラスを1クラス設け、成績により進級時に入れ替えを行う。成績不振者には指名制補習、希望者には特別講座、英語は2005年から『トレジャー』を使用し、中1から外国人教師による英会話が週1時間。中3では自由題材の卒業論文に1年間取り組む。高2から文系・理系に分かれ、それぞれに国公立大志望クラスを設置。希望制の特別講座・指名制の補習・補講などバックアップ体制も充実。
中学生の約95%がいずれかにクラブに所属している。バスケットボール、サッカー、野球、テニス、バレーボール部は人気が高く、50名以上の部員がいる。学校行事は多彩で、英語暗誦大会、芸術鑑賞、中学自由研究発表会などの文化的な行事のほか、中学生は16km、高校生は20kmを歩く耐久歩行大会、夏の臨海・林間学校、スキー教室など体育的行事も多い。中3では希望者制海外ホームステイも実施。中1~中3の国際学級に所属する帰国生とは行事やクラブ活動などで接し、海外への視野を広げる一助になっている。