シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

攻玉社中学校

2016年05月掲載

攻玉社中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.語句問題は初見でも解けるヒントがある

インタビュー1/3

実生活で使える「生きた言葉」を身につけてほしい

栗原先生 言葉は使ってこそ生きてくるものですが、本校に入る子どもは「国語嫌い」が多く、漢字や語句を丸暗記しがちです。これでは知っているけれど日常会話で使えません。

漢字や語句は機械的に覚えるだけ、知っているだけでなく、実際に使えるようになりましょう。語句の問題は、実生活で使える「生きた言葉」を身につけてもらいたいとの思いを込めて作問しています。

攻玉社中学校

攻玉社中学校

地名が出たら地理の知識を引っ張る

栗原先生 俳句も丸暗記に頼っていないでしょうか。それではつまらないし、何より苦痛でしょう。せっかくなら俳句の鑑賞を楽しみましょう。

俳句はE「五月雨を 集めてはやし 最上川」(松尾芭蕉)のように、場所がわかる言葉が含まれていることがあります。「最上川はどこにあるか」「どんな川だろう」などと、社会科の地理の知識も活用して俳句の光景を想像してみましょう。すると作者の思いに近づけて、俳句の鑑賞が楽しくなると思います。

この問題では、選択肢の中に川は2つしかありません。「五月雨を~」は芭蕉が『奥の細道』で詠んだ句ですから、その知識があれば、地図上の選択肢は九州の川(筑後川)ではなく東北の川を選べるはずです。

ことわざもある「牛に引かれて」はどういうことか

栗原先生 この問題は、地名などの名称と場所が両方正解(完答)して得点できます。正答率は78%と非常によくできていました。

間違いが多かったのは、C「春風や 牛に引かれて 善光寺」(小林一茶)と、D「流氷や 宗谷の門波 荒れやまず」(山口誓子)の句でした。

Cの「牛に引かれて」とはどういうことか、句の光景が想像できなかったかもしれません。ただ、「牛に引かれて善光寺参り」ということわざがあるので、これは知っておいてほしかったです。実は、2015年の第1回入試の語句の問題に「牛に引かれて善光寺参り」を出題しています。過去問を覚えていたら答えられたかもしれません。

社会科の塾講師に聞いたところ、善光寺(長野市)は社会科の教科書には出てきませんが、時折ニュースで報じられることがあります(2015年に行われた数え年で7年に一度の御開帳など)。ある程度の知識がある子どもは選べるだろうということでした。

攻玉社中学校 制服

攻玉社中学校 制服

句の中の「流氷」から場所を類推する

栗原先生 Dの「流氷や~」は初めて見た句でしょう。それでも「流氷」がヒントだと気づけば答えられたでしょう。地図上の選択肢で流氷が見られるのは北海道の宗谷岬だけです。流氷ですから、北海道とはいえ内陸の夕張はさすがに選べません。このように、知らない句でもヒントから類推すれば答えにたどり着けるように作問しました。

ただし、地名については地理の知識が必要です。地図上の場所は選べたけれど、「宗谷(岬)」という地名がわからず、名称の解答欄が空欄だった受験生がいました。

中には「津軽」を選んだ受験生がいました。場所と地名が一致していたので選んだと思われますが、津軽海峡に流氷はやってきません。地理の知識と結びつけて考えればおかしいことに気づいたでしょう。

俳句の五・七・五の音の数もヒントになる

栗原先生 この問題は俳句ですから、五・七・五の音の数もヒントになります。「荒海や【B】に横たふ 天の川」(松尾芭蕉)の空欄に入る音の数は「2」だとわかるので、10ある選択肢のうち「伊勢」と「佐渡」に絞られます。さらに、「荒海」から日本海を連想できれば、たとえこの句を知らなくても、「佐渡」にたどり着けると思います。

与えられた情報や覚えた知識を総動員して、いろいろな角度から問題を考えましょう。算数が得意なお子さんはそうしたアプローチができるのではないでしょうか。語句の問題はアタマをやわらかくして取り組むようにしましょう。

校祖 近藤真琴先生

校祖 近藤真琴先生

言葉を覚えるときは言葉の意味も調べよう

栗原先生 例年、語句問題はいろいろな問い方をしています。似たような問題ばかり解いていると思考もパターン化してしまうので、一問一答式でもなく、型どおりとも違う、いろいろな問題を出すようにしています。知識だけに走らず、総合力で思考できる生徒を育てたいとの思いが、入試問題にも表れていると思います。

問い方は違っても共通しているのは、問題中に何かしらヒントがあることです。この問題は出題した俳句を知っているかどうかを聞いているわけではありません。初見でもヒントを見つけてそれをもとに考えれば正解にたどりつけるようにしています。

言葉を覚えるときは、「この言葉はどうやって使うのかな」というところまで踏み込んで、意味を調べるようにしましょう。思考するには最低限の知識量が必要ですが、覚えることと並行して知識を生かす訓練も行うようにしましょう。

インタビュー1/3

攻玉社中学校
攻玉社中学校1863(文久3)年、蘭学者の近藤真琴が創立。89(明治22)年、海軍予備科を設置。海軍軍人の養成など頂点を極めたエリート教育はつとに有名。1947(昭和22)年、学制改革により新制攻玉社中が発足。66年より中高一貫校となり、英才開発教育体制が整う。90(平成2)年に高校募集廃止。
校地はそれほど広くないが、室内温水プール、コンピュータ使用のLL教室、目的別理科実験室、地下に柔・剣道場を備えた地上4階建ての2号館など施設は充実している。03年には、1500名収容の講堂兼体育館や図書室、生徒ホールなどを完備する新校舎が完成した。自然光を取り入れた吹き抜けた回廊式の構造で、屋上は庭園になっている。雨水の利用など環境にも配慮。明るい学校生活が送れる。
道徳教育を教育の基礎とし、詩経の「他山ノ石以テ玉ヲ攻(みが)クベシ」に由来する「攻玉」の2文字を理想に掲げる。自主性を尊重し、体力・気力の強化をはかり、6年一貫英才開発教育を推進。校名から受ける硬派でスパルタ的なイメージとは違い、生徒はいたってのびやかで、先生と生徒の距離が極めて近く、一体感のある面倒見のよさが感じられる。帰国生のための国際学級がある。
英・数・国の時間数が多く、中3で高校の内容に入る。中3と高1は選抜クラスを1クラス設け、成績により進級時に入れ替えを行う。成績不振者には指名制補習、希望者には特別講座、英語は2005年から『トレジャー』を使用し、中1から外国人教師による英会話が週1時間。中3では自由題材の卒業論文に1年間取り組む。高2から文系・理系に分かれ、それぞれに国公立大志望クラスを設置。希望制の特別講座・指名制の補習・補講などバックアップ体制も充実。
中学生の約95%がいずれかにクラブに所属している。バスケットボール、サッカー、野球、テニス、バレーボール部は人気が高く、50名以上の部員がいる。学校行事は多彩で、英語暗誦大会、芸術鑑賞、中学自由研究発表会などの文化的な行事のほか、中学生は16km、高校生は20kmを歩く耐久歩行大会、夏の臨海・林間学校、スキー教室など体育的行事も多い。中3では希望者制海外ホームステイも実施。中1~中3の国際学級に所属する帰国生とは行事やクラブ活動などで接し、海外への視野を広げる一助になっている。