「受かったよ。繰り上げの連絡が来た。」
スマホが震え、ラインに喜びの文字が絵文字と一緒に浮かんだ。
チャレンジ校に二度トライし、結果「繰り上げ候補」は頂けたものの、模試の偏差値では大きく及ばない。
一縷の望みは持ちつつも、可能性は限りなく低いだろうと、合格を頂けている第一志望校への手続きの準備を進めていた。
「今日、夕方教室にあいさつに行ってくる。」
けじめなので、お世話になった教室に挨拶に行くという。
「出かけるときにラインするね。」
出かける際のラインと思った連絡は、喜びの連絡でした。
薄氷を踏むような場面が多く、およそ順風満帆ではなかった娘の中学受験でした。
沢山の失敗もしました。正直、何度も諦めようかと思ったことか。
同じような状況に陥った方の一助になれば幸いです。
駄文ですがご容赦ください。
11月から12月の模試で成績が伸びず、下降(特に算数が急降下)。
加えて体調も不調となり、毎週日特に向かう前に嘔吐するような調子、体調、成績ともに最悪のコンディションで冬を迎えることになりました。
このまま娘の努力は報われないのではと不安に押しつぶされそうになりながら、どうしよう、このままでは拙い。でも勉強量はこれ以上増やせない。悩みぬいて、すがる思いで教室長に面談を申込みます。
「もう一度基本問題に帰りましょう。」
「え?」
「“なんとなく解る”の“なんとなく”とか“つもり”を排除しましょう。」
「先生、これ以上は時間の捻出が・・・」
「宿題はやらなくて結構です。教科の方には言っておきます。」
「・・・」
「今、足場を再度固める必要があります。」
「わかりました。」
12月、我が家は大きな賭けに出ます。
周囲のお子さんが問題演習を積み重ね、過去問を次々とこなす中、基本問題をやり直すことに。「考えよう」を3分、「深めよう」を5分と定めて、一問ごとに解法を確認します。そして自力で立式と正解まで再現させる。来る日も来る日も基本問題の反復です。出口の見えない地道な作業が続きます。
「本当に、今これやっていていいの」「今は地固め。チャレンジ校に最高のコンディションにしよう。」娘が抱く不安への回答は、親自身の焦燥感への答えでもありました。
1回転目が終わり、不得手分野と志望校の頻出分野を中心にした2回転目に入ると変化が現れました。
問題を解くスピードが上がり、正確性が増してきたのです。いままで手が出なかった問題まで、ほんの少し解けるようになってゆきます。少しだけ余裕が生まれ、他の教科にも良い影響が出始めました。過去問を再開すると、全体的に得点が伸び出しました。
恐らく焦るあまり、あれもこれもと娘は完全にキャパオーバーになっていたのです。完全に消化不良を起こしていました。一時的に情報量を大幅に制限したので、整理が出来たのだと思います。ほんの少しだけ標準的な問題も挑戦できるようになりました。
「間に合うか?ギリギリか」 消えかかった希望がほんの少しだけ残りました。
ほとんど時間切れのように入試本番に突入しました。これ以上はどうしようもありません。本文と設問をよく読む。時間配分を気にする。この二つをお題目のようにして、毎日送り出しました。あとは祈るだけ、毎日綱渡りのような感覚でした。
教室で、「一喜一憂せず淡々と解答用紙に向かうように」と指示を頂いたとのこと。
本人の意志だけが頼りでした。
-あの時、決断が遅かったら間に合わなかった。-
どうぞ来年挑戦する皆様、もし消化不良を起こしていたのなら、基本に返ってみてください。指導いただく教室スタッフの先生と相談のうえで、最善の処方が見つかると思います。
最後ですが、A教室の皆様にはお礼の言葉しか浮かびません。時には励まし、時には支えて頂きました。皆様のお力なしでは合格はありえませんでした。娘にとってスタッフの皆様に巡り合えたことが最高の幸運だったのだと思います。本当にありがとうございました。
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- 今後も寄せられたドラマを、各カテゴリーに随時アップしていきます。