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親と子の栄冠ドラマ -中学入試体験記-

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ある風景

  • 年度:2019
  • 性別:男子
  • 執筆者:
※闘いの始まり
完全燃焼した者にしか見えない風景がある。その風景を、息子にも見てほしかった・・・。

息子が小4の2月に、中学受験することを決めた。私も妻も中学受験未経験のため、息子に中学受験を勧めるようなことは何も言わなかったが、息子は自ら中学受験を希望する意思を示した。
私は、その意思を頼もしく喜びつつ、半信半疑でもあり、息子に「
やるの?本当にできるの?2年間長いよ。思ってるより、つらいよ。中学受験をしない友達が遊んでいる間、あなたは勉強しないといけないんだよ。それに、がんばって努力しても志望校に合格できるとは限らないんだよ。それでもいいの?」
と矢継ぎ早に質問を浴びせた。
しかし、息子は、「うーん」と数秒考えた後、
「それでもいい。中学受験したい!」
と言って、意思を変えなかった。
息子がなぜあえてイバラの道を選んだのか、それは今もって謎である。ただ、そうなれば、私も妻も全力でサポートするのみである。
そのときから、約2年にわたる家族3人での闘いが始まった。

※塾選び
塾選びにあたり、息子の性格や学力等を総合的に検討し、日能研を選んだ。

日能研では、模擬試験の成績でクラスや座席が決まるシステムになっていて、それは息子のやる気を大きく引き出した。そのようなシステムは、すべての子どもにとって良いとは限らないかもしれないが、息子には合っていた。
息子は、まず、3クラスのうちの真ん中のクラスに入り、その半年後くらいに上のクラスに移った。
移った先のクラスには、約1万人の全国模試で全国1位をとってしまうような絶対王者のX君がいた。しかも、そのX君は、家でほとんど勉強していないというのだから、正真正銘の天才である。
息子は、そのX君にはもちろんとてもかなわなかったが、クラスメイトと成績を競い合うことで良い刺激を受けていた。
また、息子は、日能研での授業や友人との交流が楽しかったようで、帰宅後にいろいろとその話をしてくれた。

※褒め方、叱り方
家での学習のフォローは、理系出身の私が算数と理科を担当し、文系出身の妻が国語と社会を担当した。私は当初、自分は息子に対して指導的立場にあり、自分の知識や経験に基いて、学習内容、学習方法、受験に対する心構え等を教えればいい、と簡単に考えていた。

しかし、私は知らず知らずのうちに、大きな過ちを犯していた。それは、息子に対する発言である。
息子が算数や理科に関して成績や飲み込みが悪いと、私はつい「なんでこんな簡単な問題が解けないんだ」、「いつになったらまともな学力が身につくんだ」というような発言をしてしまい、息子の機嫌を損ねてしまっていた。
妻からの指摘もあり、私は、自分のそういった発言の不適切さをやっと認識し、いろいろ調べた結果、1つの結論に達した。
それは、褒めるべきは子供が努力しているとき、叱るべきは子供がさぼっているとき、それに尽きる、ということである。
決して、成績の悪さや理解度の低さで叱ってはならない。また、意外なことに、成績が上がったことを褒めることも良くない場合がある(「成績が上がらないと褒めてもらえない」と子供に思わせるのはNG)。
私は、息子にそれまでの不適切な発言を謝罪した。息子は、元来気持ちの切り替えが早いせいもあってか、笑顔で許してくれた。
以降、私は、息子に対して、さぼっているとき以外は厳しい発言をしないように気を付けた。

※算数、理科が苦手
息子は、当初から、国語、社会に比べて、算数、理科が苦手だった。
ところで、哲学者ソクラテスや物理学者ファインマンの言動等からわかるように、人に何かを理解させるときは、こちらの説明を一方的に聞かせるより、まずは相手に説明させるほうがはるかに効果的である。そうすれば、理解の弱点がわかる。本人もそれを自覚できる。説明の練習にもなる。などなど、一石三鳥、四鳥である。
そこで、私は、算数、理科に関し、息子に徹底的に質問攻めすることを中心に、家での学習を進めた。算数、理科の家での具体的な学習法は以下の通り。

※算数の学習法
4科目をバランスよく勉強するのが重要であるが、最重要科目をあげるとすれば、なんといっても算数である。算数を制する者が中学受験を制する、とよく言われる。理由は、差がつきやすい、理科にも大きく影響する、配点が大きい等々いくつもある。
また、各科目と学問との関係を簡単にいうと、国語は言語学で、社会は社会学で、理科は自然科学で、そして、算数は論理学である。
よって、特に算数は論理的思考が重要。
そこで、私は、算数の問題を解くときの息子の思考に論理的な矛盾や曖昧さや飛躍が無いかどうかを逐一チェックし、少しでも疑義があるときは質問をぶつけた。
例えば、息子が「三角形の内角の和は180度だから・・・」と言えば、私は「じゃあ、まず、その三角形の内角の和が180度であることを証明して」と言って説明を求めた(最初は当然(?)説明できなかった)。
また、算数の全分野を勉強すべきであるが、息子のいくつかの受験予定校で重要(頻出)なのは、速さ、場合の数、図形の3つであった。
速さは、日能研でもよく教わっている進行グラフを書くことを徹底させた。これで、ほぼ対策できた。
場合の数は、息子はすぐに計算だけで答えを出そうとして、間違ったり、方針が立たなかったりすることが多かった。
そこで、私は、すぐに計算するのではなく、4つか5つくらい試しに調べて、規則性を確信してから計算するよう、徹底させた。これで、ほぼ対策できた。
また、図形は奥が深いが、私の知見によれば、図形の主なポイントは次の通り。
重要な要素は、相似(合同を含む。)、二等辺三角形(正三角形を含む。)、対称性、等積変形(等積移動を含む。)の4つ。
その中でも最重要の相似については、パターンは、ピラミッド型、砂時計型、直角三角形型、ねじれ型の4つ。
これらを常に意識するのがよい。
そうすれば、よほど特殊な問題以外はほとんど解ける。私はそういうポイント(全体像)を随所で説明しながら、例えば、この問題は補助線を引いて砂時計型の相似を作ってから等積変形すればいい、といった問題ごとの具体的な説明をするようにした。
これによって、息子は、そういう全体像を意識しながら問題を解くようになり、次第に図形が得意になっていった。息子は、特に砂時計型相似がお気に入りのようで、いつの間にか砂時計型相似使いの達人になっていた。

※理科の学習法
理科は、算数と比べて、分野が多いのが特徴である。
私は息子に、モータの動作原理、虹の発生原理、光の三原色と色の三原色の関係、乾留の原理、偏西風の発生原理、音のドップラー効果の原理、エアコンの原理等々、多くの事項について説明させた。
また、例えば、日食については、日食をただ漠然と説明させるのではなく、皆既日食と部分日食と金環日食の発生条件の厳密な相違点を説明させた。
息子の理解や説明が不十分と感じると、私は「太陽と地球と月が一直線って、どういうこと?北極上空から見て一直線だったら、それでいいの?赤道上空から見ても一直線である必要はあるの?ないの?そもそも、太陽に対する地球の公転面と地球に対する月の公転面との関係はどうなってるの?」などと質問した。
息子は、私からの説明要求に対し、いつも、しどろもどろになりながらも、がんばって考えながら説明してくれた。息子が説明した後、私が息子の理解不足の点について説明した。
また、インターネット上でわかりやすい実験や説明の動画を探して息子に見せた。これも効果が大きかった。

日能研での授業や模試に加えて、そういったことを繰り返していくうちに、息子の理科の成績は、少しずつ伸びていった。

※妻の尽力
妻も、息子の学力向上のために、最大限の尽力をした。
酒もテレビもやめ、自由時間のほとんどを使って、息子の国語と社会の弱点強化に努めた。
妻は、例えば、模試の結果を精査し、社会の雨温図が苦手と知るや、息子に雨温図の説明をするとともに類題を何問も解かせてその弱点を克服させた。そういった弱点克服を多くの点について行った。
そのような妻の献身的な行動に、私も少なからず影響を受けた。

※努力至上主義
物事に取り組む場合に、結果を重要視する考え方と、努力を重要視する考え方がある。物事の種類にもよると思うが、受験に関しては、私は後者である。極端に言えば、全力で努力することだけが重要で、結果は、次の行動を決定するための単なる情報に過ぎない、と考えている。
受験結果に影響する要素は、才能、努力、運の3つ。
そのうち、本人が変えることができるのは努力だけ。だから、少しでも多く努力して実力を向上させることだけが、合格する可能性を増やす。「合格したい」とか「落ちたらどうしよう」とか考えても意味がない。そんな暇があったら少しでも多く勉強するべき。
つまり、最高の結果を出すためには、結果のことを考えずに全力で努力するべきである。
子供のころからそう思っていて、それを実践してきて、今でもそれが正解だったと信じている。
また、大人になってから知ったが、心理学等の専門家に言わせても、そういう考え方のほうが変なプレッシャーやストレスを感じずに済み、いい結果が出やすいとのことである。だから、息子にもそういうことを何度も伝えた。
それに対して「努力が重要なのはわかるけど、結果も出したい」と訴える息子に、私は「もし志望校に落ちて本当に悔しかったら、その瞬間からリベンジのために高校受験か大学受験の勉強を始めればいいじゃないか。そのときはまた付き合うよ」と答えた。
それを聞いた息子は、少し和らいだ表情になって、そっか、それもそうだね、と納得した。

※受験本番
そして、いよいよ、受験シーズンが到来。
私は息子に「時間配分に気を付けること。難しい問題は捨てること。最後の1秒まで絶対に諦めないこと」とアドバイスした。
息子も、うんうん、とうなずき、臨戦態勢に入った。
なお、予定では、東葛飾中学校の一次と開智中学校の「先端特待」か「先端」と市川中学校に順当に合格し、渋谷教育学園幕張中学校と麻布中学校と渋谷教育学園渋谷中学校で勝負、ということになっていた。

まず、東葛飾中の一次に合格。しかし、その次に想定外の事態が起きた。
開智中の「一貫」に合格したものの、その上の「先端」へのスライド合格にわずかに届かず(合格最低点と本人の点数の通知あり)。
これには、妻も息子も動揺した(模試結果から考えると余裕で合格できるはずだったので)。
しかし、これで息子の闘志に火がつき、明らかに目の色が変わった。

そして、翌日、開智中の「先端」よりさらに上の「先端特待」に合格。続いて、市川中も合格。
これで、失敗は完全に帳消しにし、準備が整った。
なお、渋幕中(1回目、2回目)と麻布中と渋渋中(3回目)のうち、渋幕中(2回目)と渋渋中(3回目)は定員が少なくて激戦なので、渋幕中(1回目)と麻布中のどちらかにぜひ合格したいと考えていた。

渋幕中(1回目)の受験。
私も息子と妻と一緒に試験会場まで同行した。行きの電車で、理科の重要事項の再確認を行った。
試験会場近くの公園で、日能研の多くの先生方に出迎えていただき、息子を含む多くの日能研生が先生方と握手し、アドバイスをいただいた。先生方はみんな優しい笑顔で、最初は緊張や不安の面持ちだった子供たちも自然に笑顔になっていった。
親子ともに不安な試験当日の寒い早朝ではあったが、公園の一角のその空間だけ、陽だまりのようであった。
しかし、現実は厳しかった。
二日後の合格発表で不合格。落胆する妻と息子。
しかし、息子は、その日の夕方には、私と妻に「僕、もう落ち込んでないから。残りの試験に向けてがんばって勉強するから、心配しないで」と言った。その言葉に成長を感じた。
私も「そうだな。ここからが本当の勝負だ」と答えた。家族3人で、残りの時間に全力を尽くすことを誓った。全科目、模試や本番の不正解箇所を見直す等、弱点強化に努めた。

そして、麻布中と渋幕中(2回目)を連日受験。
しかし、いずれも不合格。
だが、息子は、落胆しつつ、どこか冷静でもあった。
残りの時間、渋渋中(3回目)の出題傾向に合わせて、全科目の最終調整を行った。私も仕事を休めるだけ休んで算数と理科の弱点強化に努めた。
渋渋中(3回目)の受験当日の朝、私は息子に「もう今日の試験で本当に終わりだから。勉強を2年間がんばってきたこと。渋幕と麻布に合格できなくて悔しかったこと。そういう思いを、今日の試験にすべてぶつけておいで。もう結果は関係ないから」と言った。息子は「わかった」としっかりした口調で答えた。
その日の夜、私が仕事を終えて帰宅すると、2年間の勉強から解放された息子は、その間ずっと封印していた大好きなレゴブロックをリビングの床一面に広げて楽しそうに遊んでいた。
試験の手応えは良かったとのことだった。
そして、翌日、私が仕事での客との打ち合わせを終えて正午過ぎにスマホを見ると、合格発表を確認した妻から「合格しました!」というメールが届いていた。

※日能研
思い返すと、日能研の先生方は、子どもたちに勉強をわかりやすく教えるだけでなく、真正面から子どもたちと向き合い、優しい言葉と厳しい言葉を織り交ぜ、やる気を引き出してくれた。
また、先生方は、例えば、受験直前の数か月間、子どもたちが提出する大量の過去問の答案を1つ1つ丁寧に採点し、多くのアドバイスを書き込んで返す等、授業時間外にも手厚いフォローをしてくれた。
息子の通う塾が日能研でなければ、志望校合格は無かったと思っており、大変感謝している。

※闘いの終わり
かくして、約2年にわたる家族3人での闘いは終わった。
多感な時期の息子に、中学受験未経験の両親。
困難の連続だったが、なんとか乗り切った。まさに、家族3人での総力戦だった。

結果としては、トリプル志望校のうち、2校で散るも、最後の1校で踏みとどまることができた。
そして、息子は、あの風景を見たのだろうか。
それはわからないが、ともあれ、家族3人、試行錯誤や悪戦苦闘の中で、ほんの少しでも成長できたのだとすれば、中学受験に取り組んで良かったと思った。
また、家族で、楽しいイベントもいいが、こういう真剣勝負への取り組みこそ、いい思い出になったり、絆が深まったりするような気もした。

外に出て、ふと空を見上げると、きれいな青空だった。
忍耐はすべての扉を開く、という小学校のときに習った名言を久しぶりに思い出した。
今後も寄せられたドラマを、各カテゴリーに随時アップしていきます。
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