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出題校にインタビュー!

2013年 清泉女学院中学校【社会】

清泉女学院中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.社会科学を学ぶにはまず、自分の生活を充実させることが必要。家族と一緒に社会に関心をもとう。

「2つの写真と地図を見て考える問題を出題」

社会科の地理の分野には資料の出し方に特徴があるのではないかと思っているのですが、今のような入試問題になった経緯で、つけ加えることはありますか。

橘先生 今回の入試問題で、私は2-問3にも注目してもらいたいと思っています。2つの写真と地図を見て、人々の生活がどんなふうに考えられるのかを問う問題です。地図にすると、言葉で説明するよりもスッキリ収められるのでおもしろいです。

この問題ですね。

橘先生 写真を見せて、田んぼの中になぜ時計があるのかを聞いているんですね。どんな答えが返ってくるのかなと思っていたら、「お昼の時間」あるいは「お弁当の時間を知るため」と書いている子もいたのですが、並べられている2つの写真をよく見るとわかるんですよね。こっちからきた水があっちへ流れ、こっちへ流れていることが。ですから、公平に水を流すために使われてきたということになるのです。そういうことが、社会を科学する心をもった生徒を選んで、預かって、育てることにつながっていくと思って作りました。

社会科/橘 英彰先生

社会科/橘 英彰先生

「自分の目で見て考えて、自分の言葉で説明できる力を問いたい」

その他に問題を作られる上で意識していることはありますか。

橘先生 自分で見てきたことを中心に考えてみるということがあります。見てきて、聞いてきて、教えてもらってきたことを中心に、物語を組み立ててみると、思っている以上に小学生の心に響くのかなと思っていて、中には先ほどの「お弁当の時間」と答えてしまう子も出てきてしまいますが、思っている以上にきちんとした答えが出てくるのです。

以前、りんごの樹を曲げて低くしている写真を出したことがありました。わざと自転車も入れて写して、自転車の高さからりんごの樹がどんなふうに変形させられているのかをわかるようにしたんですね。りんごの樹は自然のままだと10mくらいの高さになるものもあるそうなのですが、それをわざと曲げてりんごを取りやすくしているのです。写真を見せて目的を聞き、「りんごをとりやすくするため」など、自分の言葉に置き換えて説明してもらう問題でしたが、そういう問題を遊び心で入れてみると、いい入試問題ができるのではないかと思います。

「互いに尊敬し合える関係をつくるためにも “遊び心のある問題”」

橘先生 先ほどから「多角的」と言っていますが、学校を運営していくにあたり、いろいろな視点をもった子がいないとおもしろくないと思うんですね。これはできないけど、これならできるという子が集まって、初めてクラスが成り立つと思うので、本当の意味で互いに尊敬し合える関係づくりをするためにも、入口となる入試でも遊び心をもった問題を意織的に入れていくことで、いろいろな生徒が入って来られるのではないかと思います。

それができるのが社会科ということですね。

橘先生 そうです。社会科でなければできないことかもしれませんね。思い込みや決めつけなどで見てしまう危うさを教えるのが社会科だと思うので、そういうものも入試問題に入れるべきものだと思って盛り込んでいます。

清泉女学院中学校

「気になるキーワードは“持続可能”」

大設問のテーマ以外で重視していることはありますか。

橘先生 2005年から「国連・持続可能な開発のための教育の10年」(ESD)という取り組みが出てきていますよね。これは私個人の考えですが、「持続可能性」という言葉、「持続可能な社会に向けて」という言葉が重要だと感じています。

例えば「地球環境を保護しよう」とか「生態系を守ろう」とか、そういう教育があるじゃないですか。それだけでは成り立たない社会になってきているんですね。「持続可能」という観点で考えると、地球環境を保護する視点と、産業を育成する視点と、それを両立するもう一つ、何か別の視点を設けて、三すくみになるような構造を考えなければいけないのです。

小学校も新課程に徐々に切り替わっていく中で、「持続可能な開発」「持続可能な社会」という言葉を一つの大きなテーマにして、産業のあり様などを細かく分析していくような記述が、小学校の教科書に増えてきていると思います。中学生の教科書や高校生の教科書よりもはるかにくわしい内容におどろかされます。例えば地理では、何々県の名産物は何々というような内容は薄れて、中学生の新課程の内容に移ってきた感があります。だからこそ地図などを使って、持続可能をテーマに、小学生のレベルで見聞きする力を測りたくてこういう問題を作っています。2期の入試では、水産業を中心に出題しました。漁業というのは境界線の産業です。人間が住めない海の上での産業なので、そこで苦労する人たちと経済性について聞きました。

「リーダーの視点でものごとを考える力も重要」

橘先生 私は中1の授業で「社長感覚」「県知事感覚」で考えてみようねと言います。「もし地域でリーダーになったら、こういう問題に直面して、みんなに『こういう問題を解決して』と言われるはずだよね。どう考える?給料を払わなきゃいけないしさ」という話をよくするのですが、その土台になる感覚を見るテストを作れたらいいなと思っています。そして、これからもできる限りそういう方針で、問題を作っていきたいなと思っています。きっと誰もがリーダーになれる時代が来ると思うのです。誰もがリーダーにならなければいけない時代が来ると思うのです。だからこそそういう視点をもった人を招き入れて、育ててあげたいなと思っています。

女の子で小学生、中1、中2あたりだと、まだ人前でしゃべることがとても恥ずかしいんですね。授業はどんどん進めなければいけないので、全員に聞くことはできないのですが、できるだけ「みんなはどう思っているのか」と問いかけてあげたいと思っています。

社会科/橘 英彰先生

社会科/橘 英彰先生

「手の届く夢をもっている子に入ってきてほしい」

橘先生 私は「こういう夢をもっていて、こういうことがしたいんだ」と語れるなら、きっとその夢をかなえられるように応援できるだろうと思います。そのためには1回でも2回でも、リーダーの立場になってものごとを考えられないといけないのではないかと思うんです。もちろん結婚して専業主婦になりたいという子もいるわけですが、それでも家庭の中のリーダーにならなければならない時もありますので、そういう時のために物事を考えられる練習をさせてあげたいなと思います。

ただ、夢をもっていない子がすごく多いんですよね。夢をもっているといっても、例えばアイドルになりたいなど、100万人に1人の確率でしかかなわない夢をもっている子はいるのですが、手の届く夢を持たせてあげるのが進路指導だと思います。自分の夢を言葉にできる力のある子が集まってくれたら、私だけでなく先生方全員で力を引き出してあげられると思うので、そういう子に入学してもらえる問題を作らなければなりません。

社長というのはもしかしたらなれますよね。卒業生の中にも実際に○○事務所のリーダーになっている人がいます。たとえばCAを退かれて会社を立ち上げて、活躍されている方とお会いしたりするといつも感じるのですが、自分の夢を具体的にもっていて、それに向かって進んでいる。自分の夢は自分の夢、あの人の夢はあの人の夢、この人の夢はこの人の夢。それぞれが最善の力を尽くして夢を追い続けることで社会が成り立つ、社会が平和になるということを知っている人が多いのです。だからこそ、こういう問題を出すことによって、「何を考えていますか」「あなたはどんなふうにしたら社会が平和になると思いますか」それを考えて、答えて、教えてほしい、という思いのこもった問題ができたのではないかと思います。

「社会科を一通り学んだ上で倫理と照らし合わせる」

橘先生 それはたぶん、本校では倫理科が、社会科とは一歩離れたところにあり、そこで自分を肯定することを教えてもらったり、聖書を読んでそこに登場する人々の生き方を見ることで、自分の生き方を固めていったりする機会があるからだと思います。

他の先生もおっしゃっていたのですが、本校の社会科の特徴は高1で世界史を全員必修にしていることと、高3で政経を必修にしていることだと思うんですね。中1で地理をやり、中2で歴史をやり、中3で公民をやり、高1で世界史をやって、一つ完成という図式で成り立っています。そこからは受験勉強に入ろうか。でも、受験勉強をやっている間に政経や倫理が入ってくる。いろいろな社会勉強をして、歴史的なことも経済的なことも学んだ上で、倫理というものを照らし合わせてみて、いろいろなことを考えて、それから卒業して下さい、というしくみになっているので、それがいい卒業生を生んできているに違いないし、そこに私が担っている部分があるのかなと思います。

清泉女学院中学校

「大事な倫理観を、本校で育んで社会で役立ててほしい」

橘先生 ちょうど震災の後、ヨーロッパの経済危機も合わせて起こっていた時に、たまたまドイツの連邦議会の話が出ていたんですね。ドイツでは今、原発ゼロを目指して進んでいますが、すごくいいなと思ったことがありました。これはヨーロッパ的な考えかもしれませんが、「倫理は経済よりも優先する」と委員会を立ち上げて、「その委員会の意見を最重要視しよう」と、まず言ったのです。そこがすごく感動的でした。それは本校の中にもそういう考えがあって、大事な倫理観というか、本校で生活していく上で育まれる善悪の感覚とか、清潔の感覚とかをもって社会へ出て行ってくれたらいいなというふうに思っています。

他のカトリック校でも、シスターが世界平和のために生徒とともに真剣に祈りを捧げているところを見ました。6年間、そういう環境の中で生活していたら、影響を受けますよね。

橘先生 はい。私も教員をやり続けたら、世界が少しでも平和になるのではないかなとまじめに考えているんですよ。私は今年の春に、初めて担任した子を送り出したんですね。途中で引っ越して転校した子もいましたが、171名を無事に卒業させることができたので、その子たちがそれぞれの平和のタネを蒔いてくれたらいいなと思っています。

「多くの生徒とかかわる教員は世の中を平和にできる、素晴らしい仕事」

橘先生 私は今、33歳なので、なんとまだ30年も教員を出来るんです。その間に、何人の卒業生を送り出すことが出来るんだろうと思ったら、胸がいっぱいになりますよね。

先輩教員が1万人と言っているんですよ。1学年180人×勤務年数が30~40年なので、「それくらいになるんじゃないのかな」と言っていたのを聞いて、自分の夢もふくらんだんですね。私は中1を担当させてもらうことが多いので、入学した生徒のほぼ全員を受け持つことができる。そこで、先ほどお話したようなことを教えることができたら、世の中を平和にすることができるだろうと思うのです。生徒一人ひとりに進むべき道はあるだろうけど、私や、清泉女学院の社会科の教員、誰かがかかわることでできるに違いないと、そんなことを考えています。

先生はキリスト教系の学校で育ったのですか。

橘先生 いいえ。キリスト教に触れたのは清泉女学院で教鞭を取り始めてからです。まったく触れたことがなかったので、最初は少し不安もありましたが。この学校には幅広い学力の子が入ってきます。当然、得意、不得意もありますが、全員の子ができることとして、キリスト教で教えられた「許す」ということがあると気付いた時に、キリスト教系の学校で教鞭をとることに不安がなくなったというか、自分でも大丈夫だなと思いました。苦手なことがあっても、堂々と許すことのできる学校で教えられるのはいいことだなと思います。

社会科/橘 英彰先生

社会科/橘 英彰先生

「自分の目で見たり聞いたりして社会科への関心を高めてほしい」

最後に、小学生にはどんなふうに社会科を学んでほしいか、メッセージをお願いします。

橘先生 教科書に出て来る人物名、事件の流れ、県庁所在地の都市と、県内にあるもう一つの都市・・・など、やはり基本的な知識は大事にしてほしいのが一つですよね。また人物にしても、名前を覚えるというよりは、この人は何をした人なのかを覚えてほしいのです。

それから、社会科でよく話すのは、家庭で社会のことをよく話し合ってほしいということです。「今の生活はこうだけど、昔はこうだった」と比較するにも、机上の勉強だけでなく、さまざまな経験、旅行などを重ねておくことを実は重視していて、「それが伝わるような問いかけをしていきましょう」という方針で一致しています。「こういうことを経験してきているよね」と問いかける問題を作るのは大変なのですが、先生方はチャレンジ精神旺盛なので、「そういう問題を作ってこそ社会科」と言っています。

インタビュー 3/3

清泉女学院中学校

清泉女学院中学校1877(明治10)年に創立の聖心侍女修道会(本部はローマ、世界20数カ国に68の学校を経営)により、1938年、前身の清泉寮学院創立。47年に横須賀に中学、翌年高校を設立。56年、中高を統合。63年に現在地に移転し、98(平成10)年に創立50周年を迎えた。進学率のよさから「鎌倉一の女学校」の座を堅持している。

大船駅西側の丘陵地帯、栄光学園と谷ひとつ隔てた玉縄城跡に位置する。緑の芝生が美しい7万m2もある敷地には、観覧席がある体育館、2面の広いグラウンド、コンピュータ室、憩いのスペースのラ・フェンテなどがあり、充実した施設・設備を完備。02年には修道院を改修した新校舎ラファエラ館が完成、美術室や音楽室、少人数授業対応の教室など設備が一新された。

「神のみ前に、清く、正しく、愛深く」をモットーに、社会の変革に貢献する人材の育成を目指している。利益や結果よりも目に見えない精神的価値を大切に考え、祈りをとおした情操教育を熱心に行う。ほかのカトリック校に比べると、「校則」や校内の雰囲気は驚くほど自由だが、「社会奉仕活動」などへの参加は他校より相当強力に推進されている。

完全中高一貫を生かして、独自のカリキュラム。大学受験を強く意識し、英語は海外出版社の教材を多く活用し、中1から1クラス2分割の少人数制授業を実施。数学は中2後期で習熟度別授業となる。理科は実験・観察が重視され、社会では新聞・ビデオなど現実感のある教材を活用している。どの教科もレポート重視。その集大成で「中3論文」はレベルが高い。高2から文系・理系の2コース選択制になる。理系に数学演習などを設置したり、文系のための国公立大学向けの授業(選択)を追加したりと、大学受験対策がより充実しさらなる飛躍を目指している。医学部系にも強い。

入学後、5月に箱根で1泊2日のオリエンテーションキャンプが行われ、清泉と友人への親しみを養う。中2の夏休みの錬成会、理科校外学習、体育祭、合唱祭、クリスマスミサなどの行事がある。清泉祭(文化祭)は2014年度は春と秋に開催、2015年度からは秋開催へと移行する。ボランティア活動も盛んで、さまざまな福祉活動に参加。23あるクラブは参加率90%以上。なかでも、音楽部と演劇部は全国大会で高く評価されるレベル。音楽部は2013年に第1回 European Choir Games Austrian Open Competition(ヨーロピアン クワイア ゲームス オーストリアン オープン コンペティション)にて総合グランプリ(全団体中1位)を受賞。

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