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出題校にインタビュー!

2013年 清泉女学院中学校【社会】

清泉女学院中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.清泉女学院には社会とのつながり、世界とのつながりを意識した教育がある。

「“つながり”がこの問題の原点」

橘先生 この問題を考えるにあたり、まず浮かんだことは、この学校の創設に関わった方たちの思いだったと思います。聖心侍女修道会ができて、その創立者である聖ラファエラ・マリアがよく「つながっていなさい」と言っていたそうなんですね。そういう言葉を聞いて、私も社会とのつながり、世界とのつながりを意識した教育というものを常に考えて参りました。

すごくおこがましいのですが、私が教員をしている理由も、そういうところにあると思っています。生徒を教えることで無限の可能性が広がります。もしかしたら・・・という可能性なのですが、教員という仕事は可能性が少しであっても、世界の平和につながる素晴らしい仕事だと思っています。

「つながっていなさい」というのは、人であったり社会であったりということですか。

橘先生 そうですね。少し前までは「いつも世界とつながっていなさい」と教えられたように思っていたのですが、シスターに伺ったところ、そうではなくて「つながっていなさい」だと。それをどうとらえるかはこちらの自由なんですね。いつから、ということはわからないのですが、修道会から伝えられている言葉だと聞きました。

清泉女学院中学校

「自分にとってベターなものを選べる。それが社会科の育てる生徒像」

震災の後によく聞かれるようになった言葉ですよね。

橘先生 そうですね。だからこそ、清泉女学院の存在意義というか、本校で学ぶ子どもたちの素晴らしさというのを伝えられるのではないかと思いました。

社会科という学問を「つながり」という言葉で見ていくと、この観点で見るといいけれど、この観点で見るとダメだ。あの観点で見ればいいけれど、あの観点で見るとダメだ、というようにどうしてもぶつかり合うんですね。そういう時に理科や数学なら答えはストレートに出るのかもしれないのですが、そうではない中で自分にとってベターなものを選べるというのが、社会科として育てる生徒像なのかなと思います。

選挙をしたりする時もそうですよね。自分と全く同じ考えの人はいないわけです。同じではないけれど、近いところのある人に票を入れるわけで、そういうのが実社会にあるのであれば、入試問題でも近いものができないかなと思って考えました。

「作問のきっかけは当時読んでいた沖大幹著の『水危機 ほんとうの話』」

橘先生 2013年入試の作問については、たまたま当時読んでいた、沖大幹著の『水危機 ほんとうの話』(新潮社)という本がきっかけになりました。水の問題とはどういう問題なのか、水の問題を単なる水の問題で終わらせてはいけない、というテーマで書かれていて、すごく世界が広がりました。

この本から得たもので小学生にも解ける問題を考えてみようと思っていた時に、当時、時事問題として取りあげられていた大飯原発や敦賀原発の問題。再稼働するのかしないのか。福井の人たちがいろいろな意見を交わしているとか、敦賀の町は原発を稼働させないと仕事が成り立たないとか。そんな意見を聞く中で、こういうことを問題にできるのではないかと考えました。

多くの人たちが「原子力発電所をなくそう」と言っている中で、小学生に問えることはどんなことかと考えた時に、エネルギー源がもし化石燃料ではなくなった時にどんなものがあるか、という問いでした。ただそれだけではおもしろくないというか、過去に他の私立中学校で類似している問題も出ていたので、もうひと工夫しようと思ったんですね。まわりには、このような問題を出して大丈夫なの?という意見もあったのですが、採点基準さえしっかりしていれば大丈夫なのではないか、ということで認めてもらい、出題しました。

社会科/橘 英彰先生

社会科/橘 英彰先生

「“生活をできるだけ変えない” この条件が簡単なようで難しい」

橘先生 その時にこだわったのが、問題文中にある、「私たちの生活をできるだけ変えることなく」という一言だったんですね。簡単なようで実は難しいのがここ。子どもたちとも話したこともあるのですが、「原子力や火力などに反対という人もいるけれど、今の生活ががらりと変わっちゃうよ」と言った時にすごい反応があったんです。10年くらい前のパンフレットなのですが、「石油がなくなるとどうなる」というイラストを見せて考えさせたり、少し前に、木でできたスマートフォンがCMで使われていたのですが、それを例にして話をしたりするわけです。「もしかしたらプラスチックじゃなくて木でできているスマートフォンが出て来るかもしれないよね」と。

「私たちの生活をできるだけ変えないまま、何かを変えることができるんじゃないの?」と思ったので、それを問題にしてみました。その時に「これがいい」と思うものを自分で書ける。そういう子がこの学校に入ってきてくれたら、授業を一生懸命してあげたいなと思って、このような問題を作ってみました。

「初めて見る問題。でも知識を駆使すれば解ける問題を作りたい」

橘先生 清泉女学院の社会科として意識していることの一つに「書けること」があります。入試問題には記号選択や単語だけを答える問題も必要なのですが、それに加えて自分の言葉で書けるかどうかを問える問題を出したいと考えています。歴史でも少し長めの説明問題を出して、配点を高めにしているのも、書ける子に入ってきてほしいという思いの表れです。

また本校では、小学校の教科書の範囲を逸脱しないというのが、入試問題を作る上での絶対ルールなんですね。ですが、今まで見たことのないような問題を出したい。受験生にとって初めて見る問題だけれど、知識を駆使すれば解けるというような問題を考える時に、言葉になっていないものを読み取る力、考えられる力などを問える問題を出しているのが、最近の傾向といってはなんですが、私が入試問題の作成に関われるようになってから意識していることです。

先生のご専門はなんですか。

橘先生 私の専門は地理です。今は中1の地理(日本地理)と高2の文系地理、理系地理の3科目を担当させてもらっています。

清泉女学院中学校

「満点と途中点をもらった受験生が約4割」

正答率はいかがでしたか。

橘先生 満点をあげた子が31%、途中点以上をあげた子が38%。途中点の38%は満点を含んでいます。

まったく書いていない人はほんの数名でしたが、解答の6割は、書きたいことが読み取れない、この問題の条件に当てはまらないことから書き出している、そんな理由から1点をあげるのがやっとだったり、書いている内容に間違いはないから2点、といった感じでした。例えば、地熱発電と言いながらダムという言葉が出てきてしまうと、間違っているので加点できないということになります。

例をいくつかあげさせ、その中から一つ選んで理由を書かせるという構造にして、期待した答えというのは出てきましたか。

橘先生 私が期待したのは、解答例のような答えだったんですね。多かったのは解答例の(1)。風力や太陽光、地熱など、自然エネルギーをいくつか出してみる。その自然エネルギーを使っていけば社会も変わっていくだろうということを書いてくる人は多かったです。

解答例の(2)に書いてあることも、私としては期待したところです。例えば「照明器具」と書いてありますが、具体的に「LEDに替える」というような解答も出てきていました。

「発電方法のベストミックスは想定以上」

橘先生 受験生の夢を書いてくれるような気がして面白かったのですが、サマータイムの導入や、発熱繊維ですね。発熱繊維のものをみんなで着れば石油燃料を使わずに済むのではないかというような答えは意外なところでした。

また、「自然エネルギーをたくさん使い、そのバランスを考えて使っていけば解決できるはず」と答えた人がいたんですね。この人は今、私の担任するクラスにいるのですが、発電方法のベストミックスという言葉を使って答えていて、私の考えていた模範解答を上回っていて一本とられたなと思いました。

あと、私自身は、小学校の教科書でも取りあげられるようになった、ノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんの「もったいない」という言葉をもっと広げればいいんじゃないかとか、電気自動車をもっと広めて、石油の消費量を減らせばいいんじゃないかというような答えを想定していました。いろいろな答えを期待して作ったので、いくつかの方法というのを並べると小さな○がついて、その中から自分のいいものを選ぶことができたら○がついて、選んだ理由を答えられたら○がついて「満点」というふうに考えていました。

書こうとはしているけれど、表現として不十分であったり、時間がなくて途中で終わってしまったりしたものに対しては、途中点をつけるに留めました。

社会科/橘 英彰先生

社会科/橘 英彰先生

「原子力や火力に頼らないという趣旨がわかればOK」

先ほど、サマータイムや発熱繊維という言葉が出ましたが、「よほど違うでしょ」というものでなければ加点したということですね。

橘先生 そうですね。それで理路整然と説明していれば点数をあげていますので、そういう意味では思った以上に加点することができました。

それは社会で言われていることではなくて、身のまわりのものでもいいということですか。

橘先生 はい。ただ満点にはならないかもしれませんね。クールビズなどもそうですが、そういう言葉を使って、エアコンの設定温度を下げるなど、明らかに原子力や火力に頼らないという趣旨がわかればOKということにしています。家のまわりに花を植えるというような答えでは、直接原子力を減らすとか、化石燃料がなくなっても大丈夫だということにはつながらないので、そこは考えて設定をしています。

「いくつでも」とありますが、どのように答えればよかったのでしょうか。

橘先生 複数というか。やはり多角的な観点で見て欲しいので、そうしました。理想を言うと、自然エネルギーのことをいくつ並べられても加点はしないつもりでした。大人だったらエネルギー源のことについて、クールビズについて、もったいないことについて、というように広がった発想で説明できると思いますが、小学生なので、例えば風力と太陽光と地熱というように答えられればOKにしようとは考えていました。

書けていましたか。

橘先生 再生可能エネルギーについてはみんなよく勉強していたので、バイオマスも出てきましたし、自然エネルギーも風力、太陽光、地熱・・・と、5種類くらい書いている人がいて、勉強しているのだなと思いました。

「多角的な視点と理由づけに難を感じた」

今回、3段階にして出題されていましたが、受験生にとってどの段階が一番大変そうな感じでしたか。例えば複数あげるというところを読み飛ばしたかなにかで、「私はこれがいいと思う。なぜなら」という解答が多かったのか。複数をあげたところまでは書けたけれども、なぜならばのところがうまく書けなかったのか。

橘先生 やはり「なぜならば~こう思う」というところが書けていなかった人が多かったような気がします。一つめの「多角的に見る」というところも、まだ難しいのかなという印象でした。

それから「できるかぎり変えることなく」というのはあまり効き目がなかったのかなと思いました。そこをきちんと書けている人は点が高くなっていますし、「できるかぎり変えることなく」を読み飛ばしたわけではないと思うのですが、そこまでしたら変わっちゃうよね、というような答えが少し多かったかなと思います。

事実として、「これとこれがあります」というのは上手に書けていたと思います。ただ、その上で自分はこれがいいんだ、これをもし実現できたら、社会はきっとよくなるだろうというところを、理由も含めて上手に表すことができなかったのかなと少し感じました。こちらとしてもすごく考えさせられる問題でした。作問している間も考え続けていて、解答用紙が返ってきて、○をつけている間もずっと悩んでいて、こうして取材の機会をいただいたことで、また悩み始めて・・・。でも自分としてはすごく勉強になったと思っています。

清泉女学院中学校

インタビュー 1/3

清泉女学院中学校

清泉女学院中学校1877(明治10)年に創立の聖心侍女修道会(本部はローマ、世界20数カ国に68の学校を経営)により、1938年、前身の清泉寮学院創立。47年に横須賀に中学、翌年高校を設立。56年、中高を統合。63年に現在地に移転し、98(平成10)年に創立50周年を迎えた。進学率のよさから「鎌倉一の女学校」の座を堅持している。

大船駅西側の丘陵地帯、栄光学園と谷ひとつ隔てた玉縄城跡に位置する。緑の芝生が美しい7万m2もある敷地には、観覧席がある体育館、2面の広いグラウンド、コンピュータ室、憩いのスペースのラ・フェンテなどがあり、充実した施設・設備を完備。02年には修道院を改修した新校舎ラファエラ館が完成、美術室や音楽室、少人数授業対応の教室など設備が一新された。

「神のみ前に、清く、正しく、愛深く」をモットーに、社会の変革に貢献する人材の育成を目指している。利益や結果よりも目に見えない精神的価値を大切に考え、祈りをとおした情操教育を熱心に行う。ほかのカトリック校に比べると、「校則」や校内の雰囲気は驚くほど自由だが、「社会奉仕活動」などへの参加は他校より相当強力に推進されている。

完全中高一貫を生かして、独自のカリキュラム。大学受験を強く意識し、英語は海外出版社の教材を多く活用し、中1から1クラス2分割の少人数制授業を実施。数学は中2後期で習熟度別授業となる。理科は実験・観察が重視され、社会では新聞・ビデオなど現実感のある教材を活用している。どの教科もレポート重視。その集大成で「中3論文」はレベルが高い。高2から文系・理系の2コース選択制になる。理系に数学演習などを設置したり、文系のための国公立大学向けの授業(選択)を追加したりと、大学受験対策がより充実しさらなる飛躍を目指している。医学部系にも強い。

入学後、5月に箱根で1泊2日のオリエンテーションキャンプが行われ、清泉と友人への親しみを養う。中2の夏休みの錬成会、理科校外学習、体育祭、合唱祭、クリスマスミサなどの行事がある。清泉祭(文化祭)は2014年度は春と秋に開催、2015年度からは秋開催へと移行する。ボランティア活動も盛んで、さまざまな福祉活動に参加。23あるクラブは参加率90%以上。なかでも、音楽部と演劇部は全国大会で高く評価されるレベル。音楽部は2013年に第1回 European Choir Games Austrian Open Competition(ヨーロピアン クワイア ゲームス オーストリアン オープン コンペティション)にて総合グランプリ(全団体中1位)を受賞。

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