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出題校にインタビュー!

2013年 森村学園中等部【社会】

森村学園中等部の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.考えさせる授業に切り換えて3年。2、3年後の大学合格実績によい変化が表れることを期待。

「入学直後の社会科の勉強に対するモチベーションは非常に低い」

入ってくる子どもたちの、社会科に対する好き嫌いの幅は広いですよね。そういう子たちを相手にどういう授業をしているのでしょうか。

大木先生 そうですね。社会科だけで入試を行っているわけではないので、社会科でいくらこのようなことを要望しても、現実的には知識を詰め込んで入ってきたという子もたくさんいます。年度はじめにアンケートを取ると、社会科が好きという子はだいたい25%。「なぜ好きじゃないの?」と聞くと、「暗記ばかりでつまらなかった」「苦しかった」というような答えが返ってきます。ですから、社会科の勉強に対するモチベーションは非常に低いです。社会で苦しめられたからいやだ、わからなかったからいやだと。

そうだと思いますね。公民分野などはわからなかったと思いますよ。生活と結びつかない中で抽象的概念を操作するわけですから。また、受験勉強を進める中で、算数、国語は大事だけど、理科、社会はさほど大事ではないという概念が身についているから、社会科は流していいんだと思っているんですよ。そういう子どもを前にして、私たちは社会科を好きになってもらいたいと思って授業をしています。モチベーションをアップするということを主眼に置いた6カ年の1年目という位置づけをするわけですね。

社会科/大木 崇先生

社会科/大木 崇先生

「社会科の学習観を変える努力をする」

大木先生 いくら大学合格実績を上げたいからといって、受験生定番の、山川出版社の教科書を中学生に与えて、「さあ、今からやるぞ」なんてことは絶対にしないし、それを圧縮したようなプリントを配って、「さあ覚えろ」なんてこともしません。「これで受験に間に合うんですか」と心配されるくらい情報は精選。その代わり発想をがらっと変えていきます。覚えることは意味がなくて、先ほどお話したメガネの曇りがスパッと消えてスッキリする快感というのを2回、3回と味わわせていきます。そのうちに、パーセプションチェンジですよね。社会科の学習観を変える努力をしています。「暗記すればいいんでしょ」と言っている子に「違うらしいぞ」と気づかせる。「なぜ?」と考えて、その理由のところで、前に習った話とつなげていき、「だからこうなるんだ」とか、比較をする時に同じ基準をあてがうと、「なるほど、今まではぼんやりだったけど、特徴が浮かび上がってきた」という知的体験を何度も何度もさせていき、最終的には「社会科が好き」と言わせるように仕向けるのです。年度終わりに、同じアンケートを取ると、嬉しいことに「社会科が嫌い」という人が少し減ってですね。去年の中1は、学年で1人になりました。誰でしょう。会いたいですね。

「中1には社会科を好きになってもらうことが大切」

そのアンケートは無記名なんですね。

大木先生 そうです。正直に書いてほしいので。項目は、すごく好き・好き・普通・嫌い、大嫌い、となっていて、大嫌いが1人います。女子ですね。

男女で違いはありますか。

大木先生 この学年は嫌い、ないしは普通という子は女子のほうが多いですね。でも、一昨年はそんなに違いはありませんでした。

これは僕の仮説ですが、女子は社会科があまり好きではないと思うんです。偏差値の高い子はそれなりに成功体験があるから好きになります。従来、森村は偏差値の高い女子が受かっていたので、女子の社会科好きがいたのですが、ここ数年、女子の偏差値が下がりぎみで、男子のほうが上がってきているんですね。学力の差に関係なく性差がアンケート結果にそのまま出てくるから、ひょっとしたら女子のほうが社会科が嫌いかもしれないと思っています。

それともう一つ。これは自分の反省なのですが、去年は「なぜ?」というのを大事にしたがために、授業が理科や数学のようになってきてしまったんですね。「なぜヨーロッパでは、北海道よりも緯度が北なのに、そんなに寒くないのでしょうか」と聞けば、暖流があって、偏西風によって…と、内容が理科になっていくんですよね。人々の生活は入って来ない。ひたすら数字と記号が因果関係でガシガシくるという授業になりがちだったので、それが嫌になってしまったのかもしれないです。そこは反省点なのですが、1年目は学習の仕方を変えて、とりあえず好きになってくれればいいという感じで取り組んでいます。

森村学園中等部

「社会がクリアに見える快感を味わわせるのが社会科」

1年間で、大嫌いを1人にするって、すごいことなんじゃないですか。

大木先生 逆にいえば、最初の1年で好きにさせられなければ、6年間変わらないですよ。入学したばかりだからできるんです。

そこが勝負どころなのですね。

大木先生 中学受験はお疲れさま。よく頑張りました。でも、それをいつまでも引きずらないで。今、変えてくれと言えるんですよね。

日能研では5年生から歴史が始まるのですが、やはり最初の2時間は勝負ですね。嫌いにさせてはいけないですから。

大木先生 どっちかなんですよね。とにかく覚え込まされてきて嫌だと思っているか。「秀吉は信長のぞうりを懐で温めた」などというおもしろいエピソードをたくさん話してくださる先生と出会えた子は、好きにはなるのですが、「だからなに?」という感じになるんです。どういう事情性をもっているか、ほかの話とどうつながって、それによりどういう謎が解けるのか。さらに自分の生活につながってこないと「ふ~ん」という感じで終わってしまうんです。やはり先ほどから言っている因果関係や意味をつかませる、それにより社会がクリアに見えてくるような快感を味わわせる。それが社会科だと思います。

「社会の出来事に関心をもった時に、初めて社会科にも興味をもてる」

大木先生 逆に、社会に関心のない子にいくらそれをやってもダメなんです。「社会が見えたからなんだっていうの」となってしまうので、非常にパーソナルな世界に閉じこもっている子に、社会科を好きになってもらうのは厳しいです。女子2、3人ですごく仲がよくて、その中の話だけで充足してしまっていると、世の中に今こんな問題があるんだとか、世の中がこうなっているのはこういう理由があるからだと言っても興味を持たないんです。それは社会科がどうこうできることではなくて、心が成熟するのを待たなければならないんですね。

でも、就職にしろなんにしろ、いつかは世の中と向き合う時が来るわけなので、中2の歴史では興味を示さなかったけど、中3の公民で「就職難」なんてことを学んで初めて実感するのかもしれません。25、26歳でいい男の子を見つけて専業主婦になろうとしていたけど、年収400万円あるのは40人中1人しかいないと、この間NHKでやっていました。このクラスで1人しかいないんじゃムリだと。自分は専業主婦になれないことを悟り、じゃあ就職できるのかとなってくる。就職率は何割。結婚し、出産したら、6割の女性が仕事を辞めている。その時に「なるほど」と思ってくれるかもしれないのであきらめてはいませんが、まずは中1で好きになってもらうことを大事にしながらやっています。

社会科/大木 崇先生

社会科/大木 崇先生

「授業でも思考法を明確にする」

大木先生 考え方、勉強の作法を変えていく上で、黒板に毎回「考える力とは以下の5つの作業をすることだよ」と言って提示します。「なぜをつなげる」「本質を見抜く」「因果関係をつなげる」「問題点に気づく(問題意識)」「比較」というように。そして「今やっているのはこの作業だよね」と確認しながら進めていくと、みんな1年目で覚えてくれます。こちらの思惑どおり、私のモノマネをする時に、そのフレーズを使ってくれるようになるわけですよ。

いつか私をからかうために、子どもたちは「なぜ、つなげる」へへと笑っているわけですよ。そうやって口に馴染ませてくれれば、それが習慣になりますよね。定期テストなどで初見の問題を出しても、「比較ね」と書ける子が出てきてくれたので、とても楽しみです。

今の中3くらいから意図的に変えてやっているので、大学受験でいけば3年後くらいですか。もし、森村の合格実績に質の変化が生まれるのであれば、少しは貢献できたのかなと思いますね。社会だけで大学に合格できるわけではありませんから、ハッキリと言えるわけではありませんが…、それは偶然ではないという気がします。

「世の中を変えたい。まだ夢を追いたい」

3、4年生を対象に小学生の学習観を変えるイベントができたらおもしろいですよね。

大木先生 大学受験の河合塾さんが同じコンセプトで、保護者に対して予備校の一流講師が授業をするという機会を作ったんですよね。保護者が変わらないと、子どもを伸ばしきれなくなってしまう。大学受験でも子どもに影響を与える部分があるのだとしたら、中学受験では親がトレーニングすることが多々あるわけですから、そこを変えていく意味でも、今、入試問題はこう変わってきているんですよ。だからこういう指導を親もしなければならないというようなメッセージが伝わるようなかたちでショップをやるということはとてもいいことだと思いますね。

考えることは楽しいことだということを少しでも伝えていければ世界は変わりますよね。

大木先生 一介の私立中学の教員が世界を変えることはできませんが、ちょっとでも伝われば変わっていくと思うんですよね。大きなことを言っていると思われるかもしれませんが、そうじゃないとつまらないですよね。夢を追いたいところはいまだにあります。

森村学園中等部

「入試問題の傾向を変えないのは対策しやすくするため」

森村学園の問題形式は毎年あまり変わらないですよね。それは受験生が過去問対策をしやすいように、ですか。

大木先生 そうですね。過去問対策はしやすいですし、塾でこの問題を使って対策を立ててもらうにも使いやすいと思うんですよね。私たちも大学受験に向けた授業をしますが、複数のテーマが盛り込まれた問題は使いにくいんですよ。単元のチェックテストをやるにしても、切り貼りしなければならないので、地理なら地理、歴史なら歴史で完結しているほうがいいのかなと思っています。ただ、こうきたらこう返すというオウム返し的な問題になってしまう可能性があるので、最後に本校名物の「なにこれ?」という問題を入れています。 毎年傾向が変わらないので、対策は立てやすいと思うんですよ。逆に塾では、森村学園を志望する子にどんなアドバイスをしているのですか?

やはり基本的な知識が考えるための土台になりますので、それをしっかりやろうねということと、森村学園だけを受験するのであれば過去問を何年か分、やろうねということでしょうか。
個人的には問題がとてもいいと思っていまして、特に去年の地形図の問題はおもしろいと思いました。子どもたちは等高線が読めないんですよね。山が立体的にどうなっているのかを、切ってくれる入試問題があまりなくて、こういう問題を出してもらえると入試問題からも学べますし、こういうことだったんだというのがわかると思うんですよね。

「森村対策に分厚い参考書の丸暗記は不要」

大木先生 他校がひしめく中、塾で森村対策が存在しているとは想像しがたいところがあるのですが、もし面談などで森村に入りたいという子がいれば、「まず基礎的な力を」ということになるわけですね。なるほど。

逆にいえば、森村に入りたい子は基礎的な知識だけでいいんですよ。歴史で細かいことは出していませんし、ましてや地理なんて本当にあっさりですよね。県庁所在地や人口…などはまず出てこないので、僕が塾の先生なら、「地理は捨てていい。当日、問題を見て、思ったことを書けばいいから」と言いますね。それで5問中2問はできる。その分、歴史に時間を投入して勉強すれば、基礎知識しか出していないので、歴史は取れる。最後は総合問題ですよね。そこではあきらめないで、最後まで粘って点数を取れば受かりますよ、きっと。やり方次第では、日能研さんの偏差値で35くらいの子でも受かることがあるのではないでしょうか。

それは難しいんじゃないでしょうか。

大木先生 (笑) 作り手はこちらですから言えるせりふでしたね。なにが出るかわからない状態だったら、都道府県全部覚えれば…ということになりますよね。

ただ、基本知識しか出しませんから、分厚い参考書を丸暗記しなくても大丈夫だよというメッセージは発し続けたいですね。

塾の授業を2~3年受けていれば、社会科で大事な知識は頭に入ると思うんですけどね。

大木先生 そうだと思いますよ。市販されている問題集などを見ると、ここまで小学生に要求するのかと驚かされます。自分が中学生だった時よりも明らかに多いですよ。公民分野などでは、概念がわからないのに、とにかく暗記していくというスタイルで学ぶのは、テニスで例えるなら絶対に強くならないフォームを最初に身につけるようなもの。主権がどういう意味だかわかっていないのに、主権在民と答えなくてはならないんですからね。私たち出している側にも半分責任はあるのですが、危険ですよね。

社会科/大木 崇先生

社会科/大木 崇先生

「授業のニーズはテレビからネットへ変わりつつある」

大木先生 僕の授業はテレビドラマの手法なんですよね。常に飽きさせないように、何分かで目先が変わるようにする。で、番組終了の30分前くらいに真犯人が出てくる山場がくるというイメージでしょうか。

授業のシナリオを考えるときに、生徒さんも想定するのですか。

大木先生 しますね。この子がこうくるはずだから、その時はこうするとか。

自分はテレビ的だから、そろそろ時代から取り残されるのかなという思いがあります。おかげさまでこの20年は楽しくやって来られましたけど、今の子どもたちはテレビ世代ではないですよね。ネット世代ですから。テレビのように目先を変えて、チャンネルを変えさせないという手法ではダメな時代だと思うんですよ。知りたい情報があれば、パッと自分で検索して、つまらなければ省いていく時代が来ていると思います。僕はIT的な授業は好きじゃないし、自分自身がITから距離を取っていますから、ITに順応した子たちからすれば、いずれ僕の授業では反応しない、自分が受け身にならざるを得ない。子どもたちが常に主導権を握るようになると読んでいるんですよ。

本当は自分がITに興味をもって、生徒が疑問をもったら「今、すぐ調べてごらん」と言うような回転の速い授業をしていくべきだと思うんです。流れがあって、その中でいかに乗せられ、操られているかというのがテレビ的であるとするならば、メインストリームなんてない。自分の興味の赴くままに調べていくような時代が来た時には、いよいよ僕も賞味期限を終えてチョークを置くんだろうなと思います。そういう子が増えてきていると思いませんか。

「人を賢くするための、普遍的な方法を追求したい」

わからないことがあるとパッとネットで調べる習慣は身につきつつあるとは思いますが、なにかをまとめたりする時は(今までと)同じなのかなと思いますよ。

大木先生 だとちょっと嬉しいですね。私の寿命ももう少し伸びますから。常に時代についていこうという発想だと、ついていけなくなった時に用済みという宣告がなされるんだろうけど、時代の要請を超えて、人間がものを考える時にはこういう思考をするんじゃないのという、普遍的なものに対応できれば、案外いつの時代も通用するのかもしれない。その一例が、さっき言った対比をするだとか、抽象化していくとか。そういうことかもしれないですね。大学にゼミナールというものが、いつになっても存在し続けるのは、それが真理に到達する上で、人間を賢くするための方法なのかもしれません。

科目は違いますが、数学で携帯料金の計算をさせると生徒が食いつくという話をよく聞きますよ。

大木先生 グローバルというのを、いくら社会科的に教えようと思っても、抽象的でダメなのですが、実は子どもたちはとっくにわかっていてという話があって、ゲームをやると、世界中の人とつながって、対戦できるじゃないですか。今、自分が戦っている相手は、ひょっとしたら中国人かもしれないし、シンガポール人かもしれない。そんなことを普通にやっていれば、政府のIT協議など通り超えて、ゲームを通じて子どもたちはグローバルとは何かを知っている時代なのかもしれません。学校はいつも遅れてしまうんですね。

森村学園中等部

インタビュー 3/3

森村学園中等部

森村学園中等部大実業家であり、立志伝中の人物でもある森村市左衛門は、日本を担う人材育成の必要性を痛感。「花をつくるより人をつくろう」の決意のもと、「社会の役に立つ人をつくる学校に」と1910(明治43)年、港区高輪に自宅の庭を開放し幼稚園と小学校を創立。幾多の星霜を経て78(昭和53)年現在地へ。

総面積8万m2の広大な緑地に、幼稚園・初・中・高等部がグランドを囲むように建つ。創立80周年記念の中央棟は、中・高等部を連結し一貫教育のシンボル的存在。パソコン教室や講堂、学園資料展示室など、最先端の設備で一貫教育をより充実させる。図書館の蔵書は5万冊、パソコン補習コーナーも備えている。

校訓は創立者自身が実業家人生のなかで学んだ「正直・親切・勤勉」。人間を磨き、学力や体力、情操を養いながら、真の国際人を目指して、幼稚園から高校まで、それぞれの年齢に応じた教育を展開している。少人数クラスを堅持し、明るく品の良い家族的な雰囲気が情操教育の基盤。家庭とも連携を保ちながら、一人ひとりを把握した教師が、進路・進学指導にあたっている。

2004年から週6日制に移行。自主性を重んじながら生徒会活動、クラブ活動に取り組む。中学では運動部、文化部とも11のクラブがある。学校行事は多彩で、林間学校、英国修学旅行、アイルランド、カナダでの希望制海外研修、スキー教室、体育祭など。文化祭は準備に時間をかけ、内容の豊富さと独創性は毎年好評。保護者懇談会や個別面談、授業参観、PTA主催のバザーなど、学校・生徒・家庭が親密なのが森村らしさ。中学の合唱コンクールも「みなとみらい大ホール」で行われ、盛り上がる。弁当持参が原則だが、購買部で弁当やパンを買うこともできる。

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