
函館ラ・サール中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
「遊びの要素+理科的なセンスを問う問題にしたいと思った」
この問題の作成意図を教えてください。
岡田先生 入試問題は理科の教員が全員で、毎年分野を変えながら作成しており、この問題は私が作成しました。知識を聞くだけなら、とても簡単な内容ですが、遊び的、ゲーム的な要素を取り入れて、理科のおもしろさを感じてほしいと思いました。また、個々の知識だけでなく、共通した特徴をもつグループとして見ることができる、いわゆる理科的なセンスを問う問題にしたいと思い、このような問題を作りました。
植物の特徴を知識としてだけでなく、教科書に出てくるような、「花が咲く」「咲かない」など、検索図のようなイメージとしてとらえられている子なら、答えを出せるだろうと思いました。全体像が見えている子というのは、おそらく理科が好きな子であって、図表などを日頃からよく見ているような子だと思います。理科的なセンスがあって、科学的視野を持っている子も解けたのではないかと思います。
理科/岡田 匡憲先生
「枝豆=大豆、かんぴょう=ユウガオ。身近な食物の植物名を問題に」
どのくらいできていましたか。
岡田先生 正答率は6割程度で、予想通りでした。塾で受験勉強をしている子には多少形態が変わっているだけで、解きやすかったのかなという気がしています。
この問題は3問ある中の3問めです。問1と問2は身近な話題にしたいということで、日常の食べものを題材に作ったのですが、こちらのほうができていなかったですね。グリーンピースの植物名などは大人でも答えられないかもしれません。枝豆は大豆の若い状態。あれをさらに熟させると、豆腐を作る時の茶色い大豆になるんです。知識だけを問う問題は極力出したくないのですが、このような、日常生活では目にしているけれど、改めて聞かれるとどうなんだろうという、理科的な知識は聞きたくなりますね。
特に問2は難しかったようです。多くの植物が花を咲かせるしくみには夜の長さが関係しているんですね。知識としては、高校の生物で出てくる「短日植物」「長日植物」に関連しているものなので、難しいと思うのですが、身近に見られる植物であれば小学生でも、その花がいつ頃咲くのかは考えられるのかなと思いました。
季節のニュースの中でアヤメやアブラナ(菜の花)が出てきた時に、注目するような子は理科が好きな子なんだろうと思うんですよね。普通に咲いている花を見て、「これ、なんだろう?」と興味が湧く子もわかるだろうと思って出題しました。家に帰ってから、お父さん、お母さんに「こういう問題が出たんだよ。わかる?」と、話題にしてくれていたらうれしいですね。
「理科的な思考力をどう問うか。毎回そこに頭を悩ませている」
岡田先生 私ども理科の教員からすると、理科の好きな子が入ってきてくれるほど授業が楽しくなるので、そういう子ができるだけ点数を取れるような問題を出していきたいと思っています。
理科的な思考力をどうすれば問えるのか。毎回そこに頭を悩ませていますね。たとえば、できるだけ計算をさせて、忍耐ではないですけれども、それにへこたれないだけの粘り強さを持っているかを見たり、表やグラフ、図などをできるだけ多く出して、理科的なセンスを見ようとしています。生物はどうしても知識的な問題が多くなってしまうので、遊び心というか、子どもが解いていて楽しいと思ってもらえる問題を作ることも心がけていることの一つです。
「小学生が外遊びで感じるものを大事にしたい」
理科の入試問題で大切にしていることはなんでしょう。
岡田先生 小学校の学習内容を極端に超えないこと。知識だけでは解けない問題や、理科的なセンス(計算、グラフや表の読み取り、作成など)を問える問題を重視しています。さらに日常生活に即したテーマを扱い、身近な物事を科学的な観点で見ることも促しています。
最近の子どもたちに不足しているのは、外で遊ぶことだと感じています。受験がそうさせているという責任も感じているので、それに報いるというか。外で遊んでいる子が有利になるような聞き方や質問の仕方があると思います。例えば花の名前など身近なものを聞いて、外で遊んでいたからこそ解けたのだと思ってもらえる問題があってもいいと思います。これからもっと、外遊びを体験する機会が減っていくでしょう。北海道という自然の中の学校なので、小学生だからこその感性を、受験の中でも尊重したいと思っています。
「塾通いをしていない北海道の子どもたちもチャレンジしやすい問題づくり」
岡田先生 塾に通っている、通っていない、この差が出にくい問題を作りたいということも考えています。北海道にある学校なので、雪虫など、北海道に身近な話題を意識して出すといったことはあると思います。当然、あまりローカルすぎる話題ではなく、全国のニュースで紹介されるようなものを扱っていきたいと思っていますが…。
他教科も同じような雰囲気でしょうか。
岡田先生 そうですね。学校はまずは地域に根ざし、愛されるような学校が望ましいので、「あの学校は塾に通っていないと入れないんだ」という雰囲気は好ましくないと思っています。地元に近い話題を出すのは、「ぜひ一緒に学ぼう」というメッセージですね。本校には入試において函館枠があり、30名は地元の子どもたちをとることになっています。ですから学年の4分の1は函館の子なのです。その子たちを除くと、北海道出身者は学年に10人もいないと思います。北海道では12歳から親元を離してまで進学校に入れるという考えの保護者の方がそれほど多くないように感じます。
校長/フェルミン・マルチネス先生
「のどかな北海道。トータルで育ててくれる学校が評価される」
岡田先生 北海道は公立志向が強いですね。中学受験対策の塾があまり浸透しないのも、そこまで勉強させなきゃいけないのかという感覚があるからだと思います。勉強だけではなくて、トータルで育ててくれる学校が評価されます。ですから函館ラ・サールと鹿児島ラ・サールでは、同じラ・サールでも求められている価値観が違うように感じます。
私は鹿児島ラ・サールに1度訪問したことがあるのですが、学習に対する緊迫感がかなり違うように感じました。鹿児島は夜遅くまで勉強のために教室に残っている生徒がいました。お話を伺うと、薩摩藩が江戸末期に活躍したように、中央志向が強い傾向があるのかもしれません。東京へ進出することに対する意識が高く、そのためには努力をいとわない、いわゆる九州男児と呼ばれるものを感じます。北海道はとにかくのどかです。私は北海道出身ではないのですが、大学も北海道から出たくないという子が多いのにびっくりしました。北海道の子は、例えば東大を狙える力をもっていても「北大でいい」という言い方をするのです。地元に対する深い愛着心と、「大志を抱く」というよりは堅実な志望を持つという謙虚さが、函館ラ・サールという学校をつくる重要な要素となっているような気がします。
受験のために、特別クラスを作り大学合格を目指す進学校は日本中にたくさんあります。「函館ラ・サールが目指しているのは人間教育と進学教育の高いレベルでの両立であり、進学結果を追い求めるだけであれば、函館ラ・サールという学校である必要はありません。」と、ラ・サール会の修道士でもある校長も常に述べています。
インタビュー 1/3

キリスト教の精神はもちろん、新時代の人間として、世界に対する広く正しい知識を養い、知・心・体の調和のとれた社会に役立つ人間の育成を教育方針として掲げている。ラ・サール学園に共通するファミリー・スピリット(学校を一つの家族のように考え、生徒たちに隣人愛を理解させ、さらには人類愛へと導く精神)が満ちていて、先生方の面倒見の良さにも定評がある。
鹿児島でも中学・高校を運営するカトリックのラ・サール修道会が、1960(昭和35)年に函館ラ・サール高校を設立。名称は、近代教育に偉大な業績を残したフランスの聖ラ・サールに由来している。99年(平成11)年に中学を開校し、独自の教育方針に基づく中高一貫教育を開始した。
聖堂、多目的ホールなどの施設をもつ。広い敷地には野球、サッカー、ラグビー部が一緒に活動できる大きなグラウンドのほか、テニスコート、2つの体育館、道場もある。校舎内は木のぬくもりが温かく、採光も抜群なので明るい雰囲気。中学250名、高校450名を収容できる寮がある。
進学優先のカリキュラムはとっていないが、授業のレベルは高い。生徒は確かによく勉強しているが、個性的な先生も多く、雑談なども交えながら楽しさも味わっている様子。中学段階では基礎を重視し、宿題や単元ごとの小テストが多く、予習・復習より授業を大切にしている。英語の授業は外国人教師と日本人教師による2人担当。留学やアメリカの高校で教えた経験のある先生もいる。高2で外進生と混合し、文科系・理科系に分かれ、それぞれの進路に応じた授業を受ける。難関大医学部にも対応。道内よりも道外の大学を希望する生徒が多く、進学先は早慶上智大、東京理科大をはじめ日本全国にわたる。医歯薬系大学・学部への指定校推薦枠も多い。
宗教の時間は週1時間。27kmの山道を走破する6月の速歩遠足が名物行事。ほかにも函館を調べる中1・中2の秋のフィールドワーク、雪にまみれて騎馬戦や棒倒しを戦う冬の雪中運動会などの行事がある。また世界中にネットワークをもつ学校らしく、中3では英語圏への海外修学旅行を実施(ただし、ここ2、3年は国内に変更)。体育系・文化系合わせて中学は17、高校は37あるクラブ(同好会を含む)はとても活発。参加率は約80%。体操・剣道・放送部などが全国レベルで活躍している。高校は私服だが、中学では紺のブレザーの制服がある。7割の生徒が寮生活を送るが、中1・中2は学年単位の大部屋方式。