
成城中の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
「子どもが『やってみよう!』と親しみをもてるような問題を作りたい」
後藤先生 私の娘が登場する「マユ・リナ問題」を作るようになったのは、およそ10年前からです。私は本校で教鞭を執って25年になりますが、昔の入試問題は、いかにも“カタイ”印象でした。入試問題といっても、もう少し子どもたちが親しみを持って取り組める問題を作れないだろうかと思っていました。
「マユ・リナ問題」の発想のヒントは娘たちの行動にあります。幼い娘たちが公園のブランコで遊んでいる様子を見ていると、2歳年上の姉の方が大きく、早くこぐことができるのですが、2人がブランコをこぐタイミングが同じになることがあり、またしばらくするとずれていくことに気がつきました。そこで、「どれくらいの割合で、タイミングが同じになるのだろうか」と考えました。このように身の回りのことを「どうしてだろう」と考えるのは楽しいし、子どもたちにも考えてもらいたいと思いました。
たとえば、公園でドングリ拾いをすると、姉の方がたくさん拾います。通常、ドングリが落ちるのは連続的ではなく離散的ですが、「仮に、ドングリが一定の割合で落ちてきて、2人が同じ速さで拾ったならば、どれくらいの時間で拾い終えるだろう」と発想して作った問題もあります。
数学科/後藤 竜文先生
「身近な人物の名前を用いることで、問題が親しみやすくなる」
後藤先生 問題にあえて娘の名前を使っているのは理由があります。問題の趣旨を正確にとらえてもらうには、「Aさん・Bさん」や「太郎さん・次郎さん」のように余計な想像がはたらきにくい名称がよいのではないかという意見もありました。ただ、それでは無味乾燥な印象を受けます。「マユさん」「リナさん」といったリアリティーのある名前にすることで、親しみがわいてイメージしやすいのではないでしょうか。
「実際の場面を想定しつつ、現実との違いは誤解しないように配慮」
後藤先生 この問題も、実体験をヒントにしています。近所のコンビニエンスストアに行くのに、姉はこの道で、私と妹は別の道で、どちらが先に着くかを“競争”したのです。あとで「これを問題にするとおもしろそうだな」と思い、問題にしました。
この問題をとおしてどんな力を見ることができるかというと、「2つの変数を一度に考える力」「グラフを読み取る力」といったことが挙げられますが、始めからそうしたことを意識して作ったわけではありません。日常生活のなかで、「もう少し速く歩けば電車に間に合った」などの経験があるでしょう。そうしたことを問題にできれば、算数を身近に感じてもらえるのではないかと思います。
小山先生 この問題のように実際の場面を想定した問題は、純粋な図形問題と違って設定条件にどうしても無理なところがあるため、誤解しないように細部に配慮が必要です。ですから条件に「長方形の土地の辺の上を歩くものとする」として、道の真ん中を歩くのではないことを示しました。
数学科・入試広報室/
小山 治郎先生
「大問の最初の問題はチャレンジしよう」
藤井先生 正答率は、
が52.5%、
が48.3%、
が33.1%という結果でした。解き進むにしたがって難しくなるので、正答率から受験生がどれだけ深く学習しているかをみることができます。この結果を見て感じたのは、
の正答率からすると、
はもう少しできてもよかったのではないかということです。一方、
がわかれば
と
は比較的解けたことがわかります。
後藤先生 入試問題では、最初の小問の解答を使って次の問題を解いていくことになるので、最初ができないと次もできないということになってしまいます。入試説明会では、「算数は大問の最初の問題は比較的易しいので、とにかく解いてください」と言っています。最初の小問は正答率60~70%をめやすに作問しています。
小山先生 誤答というよりも、無回答が多かったように思います。計算間違いは考えにくい問題なので、時間がなかったのではないかと思います。
後藤先生 この問題が最後(大問9)ではなく、それより前に出題されていれば、もう少し正答率がよかったかもしれません。落ち着いて取り組めば、グラフの読み取りや文章理解はできただろうし、解けない問題ではないと思います。
「曲線を含むグラフに、入学後に何を学ぶかが見える」
後藤先生 グラフは、出発してからの時間と2人の間を直線で結んだときの距離の関係を表していますが、先に着いたリナさんがマユさんを待っている部分は、直角三角形の斜辺の長さの関数なので、直線ではなく曲線になります。
小山先生 この曲線に関してはかなり議論しましたね。
藤井先生 入試の観点から、果たして曲線を出すのがふさわしいかどうか。解答には直接関係ないとはいえ、できるだけ正確に表現すべきではないか。実際の動きをきちんとグラフ化すれば曲線がなければおかしいが、それを受験生がどうとらえるか、解答の妨げにならないだろうかなど、ずいぶん時間をかけて議論しました。
後藤先生 議論の末、載せることにしたのは、「中学になったら、こんなことを学ぶんだ」と知ることで、数学への興味・関心を広げてほしいという願いからです。子どもたちは曲線のグラフといえば反比例のグラフしか知りません。入学後、「あの入試問題のグラフのこの部分は、実は2次曲線になるんだよ」と教えたら、「どうして2次曲線になるのか」など興味をもってもらえるのではないかと思います。
数学科/藤井 靖司先生
インタビュー 1/3

1885(明治18)年、陸軍軍人志望の養成機関の文武講習館として創立、翌年成城学校と改称。91年、現在地に移転。1925(大正14)年、成城第二中学校を分離移転(後に成城学園となる)。2010(平成22)年、創立125周年を迎えた。
成城とは、「哲夫以て城を成す」の言葉に由来する。哲夫とは智徳のすぐれた男子、城は国家で、国家社会に貢献する有為の人材を育成することを表す。教育目標は、「自由な人間、開かれた心、社会への参加、青年の使命」の4つ。伝統校ならではの静かで落ち着いた環境のもと、生徒は大らかでのびのびとした学園生活を楽しんでいる。日常生活を大切にし、規律ある自主性を重んじる校風。
都心にもかかわらず、緑に囲まれた土の広いグラウンドも整い、屋外温水プールやバスケットコートが2面とれる広さの体育館、350席もある食堂など設備も充実。50台のパソコンを設置するマルチメディア教室は、各授業に利用され、昼休みや放課後には開放されている。図書館の蔵書数は3万冊以上で、雑誌も豊富にそろっている。
自学自習について、古くから“学習15則”と呼ばれる勉強の仕方が受け継がれている。主要5教科の時間数が多く、特に中学の英語では週1時間の英会話でネイティブと日本人の先生のチームティーチング。理科では実験・調査などを重視。国語でも中学から古典の文法を学び、漢字検定にもチャレンジさせている。全体的に面倒見がいいのが特徴で、習熟度別授業は中学段階では取り入れず、成績に応じて随時補習などを実施している。高2から外進生と混合クラスとなり、文系・理系に分かれる。高3からは4時限目までが必修授業、それ以降は選択科目。志望大学と習熟度別に応じた指導を行い、現役合格者数を着実に伸ばしている。
教師と生徒の信頼関係が、責任をもった行動と、けじめのある学校生活を生んでいる。生徒会活動も盛ん。クラブ活動は中学生全体では8割が参加し、活発で運動部15、文化部10、同好会16があり、なかでも陸上競技、自転車競技、相撲同好会はそれぞれ大会で活躍。全国大会に毎年出場している速記部や、古典ギター同好会などユニークなものもある。行事は中高合同の文化祭、全校マラソン大会、映画などを鑑賞する視聴覚行事や、伝統の中1臨海学校、中2の林間学校、スキー学校、中3の沖縄修学旅行などがある。