
暁星中の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
「素晴らしい定義を発見した生徒もいる」
倉橋先生 誰がどう間違えているというのを指摘しながら返していくと、驚いていますよ。そこまで見ているんだなと。1学期の期末は平均点が92.5点。80点いかなかった子が2人だけでした。
すごいことを発見してくれた子もいるんですよ。最初に見たときは「たまたまだろう」と言って返してしまったのですが…。その日の夜、どうしても気になって問題を解いてみたら、それが正しいということがわかったんです。
この問題なのですが、この面積とこの面積の和を求めなさいというものなんですね。するとこの3点で結ばれる三角形の面積に等しいということを書いてきた子がいまして。論理がなかったので、「たまたまだろう」と言って返したのですが、とんでもない。すごい発見だったんです。それをちょっと発表したら、すごい反響で。彼の名前をとって、「ウエノジュンイチの定義」と名づけています。
そうそうたる中学校の先生に話しても、誰も知らなかったですね。要するに同じ幅であれば同じ面積になるから、この図形の面積の和はこの三角形の面積になるわけです。これ、計算するとものすごく大変なんですよ。それがほんの数秒でできてしまうという。これは添削の中で見つけた、生徒が作った定義なんです。思わぬ出来事に出合う可能性があるから、入試問題でも子どもたちがどうやって解くかは、楽しみにしているところなんです。
教務部長・数学科主任/倉橋 伸幸先生
「数学の教科書は、教科書という名を借りた書物。自分で読んで習得するのが基本」
倉橋先生 これは書物なんですよね。教科書という名を借りた書物なんです。読んで、基本的な概念を習得するための問題が載っているのであって、解くための問題ではないんです。誰もが理解できるように作られているので、自分で読んで習得しなさいと。「読む」といことは基本的な作業ですが、それをずっと続けてほしいと思いますね。
今まで僕が出会った中で一番できる子は、高校2年生のときに3年生の教科書が全部終わりました。それで大学の教育課程の教科書を渡したのですが。「先生、これ、どうしても理解できない」というので読んでみると、教科書の記述が間違っていたんですね。
この教科書は6年分渡してしまうんですか?
倉橋先生 いえ、渡すのは学年ごとなのですが。早めに終わった子にはコピーをして、先のものも渡しています。
高校3年生のときに、僕が「解析概論」を買ってあげると読んでいる生徒がいました。子どもたちには、人に教わらないとできないという言い方はしてほしくないんです。教えたらからできるようになるのではなくて、自分でやったから理解できるんだと。紙と鉛筆で考えてもらって、我々はどこができないか、それを見つけてサポートしてあげる。そういう形でいいと僕は思っています。
「添削することにより、自分自身ができないところを発見するための勉強に変わる」
倉橋先生 伸びる可能性は感じられますよね。子どもたちが自分自身との勝負をしているわけですから。添削してもらうということは、人の点数ばかりを気にしてしまうというところから、自分自身ができないところを発見するための勉強に変わっていくわけですから。その中で、さらにというものもありますよね。1回り127題あるのですが、2回りして、3回り目までいけば、かなりの基礎力がついていると思います。
大学入試への手応えもつかめそうですね。
倉橋先生 だいたい見えますね。このペースでいけば早慶には受かるなとか。
暁星では、数学の先生は持ち上がることが多いんですか。
倉橋先生 そうですね。中1をもつとたいてい高3までもつことが多いです。ですから「これができない」というときに、「中3のここに載っているから復習してごらん」ということが可能なんです。
要は、どの子も自分で教科書を読んで、予習をして、授業を受けて、復習をして、ノートを出して、添削してもらって、返ってきて…ということを繰り返していけば力はつくと思うんですよね。ゲームなど、いろいろな誘惑に夢中になって、子どもたちは時間の使い方がまだまだ未熟なものですから、正解がないというのが正しいかもしれないんですけどね。
「地方の国立大学よりも早慶を選ぶ傾向」
神田先生は、教頭先生のお仕事も多いと思いますが、いかがですか?
神田先生 今年は高校3年生の演習しか見ていないんです。どこまでできているかを確認してあげているところなのですが。理系といえども、あまり難しいものを入れるのではなくて、そういうときこそ簡単なものをやらせて確認したり、自信もつけてあげて。最後のところでは少しでも不安はないか、そういう確認も必要かなと思っています。
入試シーズンになっても生徒さんは学校に来ますか。
神田先生 最後まで来る子はきます。支えになるんでしょうね。
倉橋先生 結構来ますよね。センターが終わって、国公立の独自試験のところまではきますね。
ただ、うちはセンター試験を受ける子は多いのですが、早慶に受かってしまったら、東大、一橋以外は受けないですね。ですから進学先は、最近医学部が多いのと、早慶に受かったら、千葉大など地方の大学に受かっても行かないし、「早慶に受かっているから」と、受けない子もいます。今年、宮崎大学の医学部に出願していた子がいたのですが、慈恵医科大学に受かったら受けに行きませんでした。センターで9割以上取っていて、A判定が出ているんですよ。東京医科歯科大学と慶應大学に受かった子は、慶應に行きましたから。世の中とちょっとずれているかもしれません。
最近の子は地方の大学で一人暮らしするよりも、親元から都心の大学に通いたいという子のほうが多いですよね。昔は親元を離れたかったものですけど。
倉橋先生 そうなんですよ。わからないですよね。最終的に、国公立大学へは3分の1も行ってないんじゃないかな。受けている子は受かるという状況です。
教頭(数学科)/神田 信之先生
「柔軟に考えて対処できるチカラを伸ばしてあげたい」
倉橋先生 僕は負けず嫌いなんですね。子どもたちにどういうふうに教えてあげたらできるようになるかという、アイデアでは誰にも負けたくないというのがありまして。
例えば確率の問題では、樹形図ではなくて、全てのケースを表に書いて見せてやるんですね。名づけて「サイコロ必勝法」。この方法でほぼ全ての生徒が、「先生、わかった」といいます。
確率の問題はカリキュラムに入っていますから、センター試験にも出るんですよね。これがサイコロ3個までなら、どんなことでもできるんです。それこそ偏差値30の子でも、中学入試、高校入試でサイコロ3個までの問題だったら、100%できます。どんなに難しい最難関の学校の問題でもできてしまうんです。これはずっと教えてきて、やっと浸透してきました。ベネッセさんの調査によると、暁星は確率の平均点が異様に高いということです。
どんなふうに数学を好きにさせていくか、という工夫はどの教員もしていることだと思うのですが、先ほど指の掛け算の話をしました。教える側が、子どもたちの興味を引き出す方法をいくつも持っていることが肝心で、数学に限らず、柔軟に考えて対処できるチカラを伸ばしてあげたいですね。世の中に出て、いろいろなことに当たったときに、柔軟かつ大胆に考えられる能力を、数学を通して熟成させてあげられたらなと思っています。
インタビュー 3/3

「『自由主義』の色彩が強いカトリック校」が同校の特徴を表す。個性を生かし、他者との関わりの深さを教え、「他者の痛みを理解し、社会の核となり多くの人々の幸福のために指導的役割を果たす」ことが目標。一貫してフランス風の知性を誇り、7つの金ボタンの詰襟制服に身を包む生徒はスマート。外国人教師に恵まれた語学教育は定評があり、英仏2カ国語は中1より履修する。