
攻玉社中の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
「理系で国公立を狙う子は3分の1くらい」
数学科としての目標値を教えてください。
大学進学という面では、中間層よりも下の子を引き上げるのが、目標というよりも大きな課題ですね。数学ができないのに、理系志望の子をどうするかというところもありますし、どんな子も理科大やGMARCH(学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政)あたり、あるいは東京電機大学や東京都市大学といった理系の老舗あたりを受けられるレベルまで引き上げられれば嬉しいです。文系の子はセンター試験でなんとか点数を稼げるように…と思っています。
理系で国公立を狙う子はどのくらいいますか?
3分の1くらいですかね。なかなか社会や古文についていけないのが実情です。
社会に出てからの目標というとどうでしょう。
今、微分積分ができない理系大学生がいるというのが問題になっていますよね。ああいうのはなくしたいですよね。大学に入ってから勉強するかどうかは彼ら次第ですけれども、その材料をもって卒業していってくれればいいと思っています。入ってから、教授の話がよくわからないというのでは不幸ですから。大学に入ってから勉強していけるようなセンスというか、知識というか、そういうものを身につけてほしいと思っています。
「生徒の反応がいい、アトラクション的な教材を準備したい」
そのために、私個人でいえば、図形を担当しているのですが、なるべくおもしろいものをもってこようとしています。例えば立方体を切っていくと形が変わっていくといった時に、発泡スチロールなどを切ってもって行くんですよ。生徒の反応がいい、アトラクション的なものをできるだけ準備しようと思っています。
直線の平行などをやる時には、黒板に書いてもわからないので棒を2本用意して、1本持って、「これ垂直だろ?」とか「平行だろ?」とか。目に見えるものを大事にしたいと思っています。そうしないと、今の子はわりと字面だけ覚えてしまうので。
内分点、外分点では、内分はわかりやすかったのですが、「外分は?」となった時に、はてなマークが飛び交ったんですよ。「どうしてここにくるんですか?」という話になったので、生徒に棒を持たせてビョーンと、「こっちに点が伸びるんだよ」とやるわけです。これは結構反応よかったですよ。
「お~っという、生徒の表情や手ごたえを感じたい」
食いつきって大事だと思うんですよね。テキストの字面だけではなくて、少し離れて、「お~っ」という表情や手ごたえを感じられればいいなというのはよく考えていますけれども。
正多面体は作らせますね。自分では作れないので、のりしろまでついた図面を配って、夏休みの宿題にしているんです。提出させるとなると満員電車でつぶれてしまうので、「5種類作って写真に撮りなさい」と言ったら、ある子の写真が構図、影の出し方、グラデーション…、すべてが完璧ですごく美しかったんですよ。後で聞いたら美大卒のお母さんがかかわったということでした。
正多面体は中1の2学期に出てくるのですが、黒板では説明しづらいので。まず夏休みに形を作らせています。工作をやらせると、はさみとのりをうまく使えない子がいて驚きです。うまく切れないんですよね。のりづけもコツがあって、ここまで複雑になると、最後の一面がなかなか貼れないんですよ。完全に閉じる時に、どう貼るかということで苦労していましたね。セロテープはダメと言ったので、棒や串を入れたりしながらやっていました。
さいころを作る時も、折り目をつけてからたためばいいのに、いきなり形にしていくから角の丸いサイコロになってしまったり。その辺りもやっぱり勉強だと思いました。
もちろん目的は正何面体があって、形があって、辺がいくつで、頂点の数はいくつで…というのがメインなのですが、下地として、作ってみないと説明できないところがあるので、こういう工夫をしています。
私は今、たまたま図形を担当していますが、数量でも、いきなりグラフの線を引くのではなくて。
方眼紙を持たせて、ドット打ち(座標の点を1つずつ入れる)というところから始まるべきだと思うんですよ。
数学科/立崎 宏之先生
「数検1級、数学オリンピック予選通過をするような子は話してみるとおもしろい」
数学でここまで力が伸びたという、印象に残っている生徒さん、卒業生はいますか。
数検で軽々1級を取ってしまって、協会から表彰された子とか、数学オリンピックの予選を通った子もいて、話してみるとおもしろいです。話していると、この子、なんだかちょっと違うというのがわかるんですよ。
さっきの20面体も、「体積を計算したらこうなりますよね」とか。「正多面体って必ず角錐に分けられるんですか」というような話を始めるんですよ。12面体なども、「全部五角錐のパーツになるんですか」というようなことを聞いてくるんです。「どうやって証明すればいいんですか」と聞かれて「おっとマズい」と思ったのですが(笑)。「無限に相似で内側に小さくしていけば点になるよね」というような説明をして、最終的にはできるという話になったんですけど。いますね、この子、違うという子が。
「数学はもちろん、すべてにおいて最短の方法を求めるのはよくない」
他に数学科で話していることがあれば教えてください。
数学のベースの力は落ちていますよね。学力というよりも、知能レベルで落ちてきていると思うんですよ。だから教え方が悪いとか、学び方が悪いとかではなくて、ものの思考力が足りないと思っています。
中2にも話をしたのですが、小さい頃からテレビゲームなどをしているので反射力はすごくあるんですよね。何かが来た時にボタンを押すとか。瞬発的に何かをすることには長けているのですが、一旦止まって考えてというところにあまりいかないんですよ。だから入試問題でも、この問題がきたらこう、この問題がきたらこう、でも、ちょっと出題の形を変えると見たことがないからダメ、というようなことになったりすると思うんです。だから発想自体を転換してもらわないと、いくらテキストや問題集をやっても、あまり効果が上がらないというか、ハナから覚えようとしてやっている気がするんです。
ならば数学らしさというか、思考力をもっと鍛えなければいけないと思います。アタマの使い方が少し違うんだということに気づかせてあげたいんですよね。あと、すぐ攻略法に飛びつきたがるんです。この問題だったら、「どう解けばいいんですか」とか「もっと簡単なやり方はないんですか」というように。テレビゲームの攻略本を見れば、全部答えが載っているわけですよ。それに慣れてしまっている子がいるので、すぐに一番ミスのない最短の方法というのを求めるのですが。本当は、自分で気づくのが一番いいと思うんですよね。いろいろな問題をやって、つまずきながら、最終的に洗練された答えが自分なりにわかってくるという。親御さんにもそういう傾向があって、「どうすれば数学ができるようになるんですか」と単刀直入に聞かれるんです。それを知っていたらやっていますよ。攻略法に飛びつきたがるというのは、まさに時代だと思いますね。みなさん忙しい、だから最短の方法を求める。それではまずいなと最近思っています。
「もともとのおもしろさに気づけば、もう少し数学をやっていけると思う」
曲がり角で理数をあきらめてしまう子たちに、アドバイスはありますか。
中3、高1の、いわゆる中だるみの時期での動機づけが難しいんですよね。4年生(高1)の時に数学IIと数学Bが終わるんですよ。そして数III、数Cまでやるかどうかというところで、理系・文系に分かれるんです。数学が苦手な子は、数II、数Bでアップアップですから、学ぶことの楽しさに立ち返らないと、本当の動機づけはできないのかなと私は考えているんです。
なんでもいいと思うんですよ。英語でも理科でも国語でも歴史でも。もちろん数学でも、わからないけどなんだか解くのが楽しいと思ってくれればこっちのもの。「誰がサイン、コサイン、タンジェントなんて考えたんだよ」など、そういうもともとのおもしろさに気づけば、文系・理系に分かれてからも、もう少し数学をやっていけると思うんです。
ところが我々がそれを忘れてしまって、「受験があるから」ということばかりに走ってしまうと、解けない子はあきらめるしかない方向へ行くし、できる子はしょうがないからやるかという感じですよね。そこを本当の学ぶことの根本へ戻らないと、モチベーションは上がらないし、やらされている感をずっと持ったまま、数学を終わる気がするのです。
「文系・理系、両方を目指して今がある」
先生はいつ頃から数学に興味をもったのですか。
私は中学生の頃からですね。高校が、普通科と理数科のあるちょっと変わった学校でして。理数科というのは少し理数の単位が多い公立の学校だったのですが、入る時に「数学の授業がたくさんあるならそっちにしよう」と思って入ったんです。
でも、入った時から文系の大学に行きたいと思っていたんですよ。弁護士のドラマをやっていて、これはおもしろい仕事だと思って、弁護士になりたいという夢をもって高校へ入ったのですが、高校で教員もいいなと思って教員の道に進みました。
一番お世話になったのは、化学の先生と数学の先生でした。でも、国語の先生もいいなと思っていて、国数英で受けられる文系・理系どちらの大学も受けたんです。一応、数III、数Cまでは一通りやっていたので。第1志望が国語で、第2志望が数学だったのですが、第1志望の大学は落ちてしまったので、数学の教師になりました。
読解力もあったのですね。
そうですね。だからこういう問題が大好きなんですよ。本当の力というのは教科にとらわれないと思うんです。数学が、その力を学ぶための入り口であればいいかなと思っています。本当のアタマのよさというのは、文系・理系に関係ないんだということを伝えられればいいなと思っています。
私は小さい頃、病弱だったので、絵本が大量にあったんですよ。3歳くらいの頃、病院通いをしながら本を読んでいて、その後も本は読んでいました。自分は勉強が好きでしたから、勉強が嫌いという子は自分にとって「壁」なんですよね。義務感でやらせても、本当には伸びないですからね。それを破ることが使命だと思って頑張っています。
数学科/立崎 宏之先生
インタビュー 3/3

1863(文久3)年、蘭学者の近藤真琴が創立。89(明治22)年、海軍予備科を設置。海軍軍人の養成など頂点を極めたエリート教育はつとに有名。1947(昭和22)年、学制改革により新制攻玉社中が発足。66年より中高一貫校となり、念願の英才開発教育体制が整う。基本的に90(平成2)年に高校募集廃止。
校地はそれほど広くないが、室内温水プール、コンピュータ使用のLL教室、目的別理科実験室、地下に柔・剣道場を備えた地上4階建ての2号館など施設は充実している。03年には、1500名収容の講堂兼体育館や図書室、生徒ホールなどを完備する新校舎が完成した。自然光を取り入れた吹き抜けた回廊式の構造で、屋上は庭園になっている。雨水の利用など環境にも配慮。明るい学校生活が送れる。
道徳教育を教育の基礎とし、詩経の「他山ノ石以テ玉ヲ攻(みが)クベシ」に由来する「攻玉」の2文字を理想に掲げる。自主性を尊重し、体力・気力の強化をはかり、6年一貫英才開発教育を推進。校名から受ける硬派でスパルタ的なイメージとは違い、生徒はいたってのびやかで、先生と生徒の距離が極めて近く、一体感のある面倒見のよさが感じられる。帰国生のための国際学級がある。
高校の募集は補充程度で、ほぼ完全中高一貫といえる。英・数・国の時間数が多く、中3で高校の内容に入る。中2~高1まで選抜クラスを1クラス設け、成績により進級時に入れ替えを行う。成績不振者には指名制補習、希望者には特別講座、選抜クラスの希望者にはハイレベル特別講座がある。英語は2005年から『トレジャー』を使用し、中1から外国人教師による英会話が週1時間。中3では自由題材の卒業論文に1年間取り組む。高2から文系・理系に分かれ、それぞれに国公立大志望クラスを設置。希望制の特別講座・指名制の補習・補講などバックアップ体制も充実。
クラブ活動は原則として週3日で、中学生の約95%がいずれかに所属している。中高一緒だが、練習、試合は別に活動している。バスケットボール、サッカー、野球、テニス、バレーボール部は人気が高く、50名以上の部員がいる。学校行事は多彩で、英語暗誦大会、芸術鑑賞、中学自由研究発表会などの文化的な行事のほか、中学生は20km、高校生は34kmを歩く耐久歩行大会、夏の臨海・林間学校、スキー教室など体育的行事も多い。中3では希望者制海外ホームステイも実施。中1~中3の国際学級に所属する帰国生とは行事やクラブ活動などで接し、海外への視野を広げる一助になっている。