
攻玉社中の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
「パズル的な発想で解けるというのがこの問題のコンセプト」
この問題は特別選抜入試で出題した問題です。計算だけでは差がつかないので、矛盾がないように考えるとか。与えられた条件から証明していくというような力を見てみたいと思って作りました。論理的な思考力をもった生徒が入ってきてくれたらいいなという思いもありました。
正答率は2割から3割くらいでした。この問題ができるかどうかは、算数ができるかどうかとはまた違うと思うんですよ。水を汲む問題がありますよね。1リットル、3リットル、5リットル入る容器があって、「○リットルを作りなさい」というような問題です。ああいうイメージなんですよ。ひらめきも必要。パズル的な発想で解けるというのがこの問題のコンセプトですね。
数学科/立崎 宏之先生
「21+17=38という誤答が多かった」
印象に残った解答は?
解答用紙に「できない」と書いていた子がいましたね(笑)。あとは単純に足し算をした子がいました。例えば2のつく数字が3種類ある。6個覚えていれば覚えられるからということで「×7」ですね。3×7=21それに17個を足して38という誤答が多かったです。
受験生には、まず条件5つを理解するのが大変だったのではないでしょうか。使わない条件があったり、この条件のほうが使いやすいに違いないと思って進んでしまうと、間違いにつながりやすかったのではないかと思います。
中身を把握しないで、単純にいくと38日になるんですよ。2のつく数字が2と12と20、3つありますよね。覚えようとすると6個忘れるので、6個覚えて、1個覚えて、6個覚えて、1個覚えて、6個覚えて、1個覚えて…とやっていくと、7×3になります。21日かかるわけです。それで2のつくものは消化したから、残り17個は単純に覚えればいいということで、21+17=38という答えが多かったんですよ。そうすると覚える数が、実は1個足りないので誤答になるのですが、それが一番多かったです。
「大人でもパッと見ただけでは解けない問題」
特別選抜でも2~3割の正答率ですから、この問題は特別選抜の問題の中でも難しかったといえますよね。
そうですね。特別選抜の1回目の入試というのは、計算問題、道のりの問題、水が流れる問題、お金に関する問題、倍数の問題、四捨五入の話、この忘れんぼ村、図形…と、小問が10題並んでいて、時間内に解けるだけ解きなさいという総当り的な問題でしたので、この問題が解けなかったからといって落ちるわけではないと思うのですが。その中でも毛色の変わった問題ですよね。入試が終わってから、知人にこの問題を見せたのですが、大人でもパッと見ただけでは解けなかったですね。やはり38と答えた人が多かったです。「どうして忘れるの?」「覚えろよ、数字くらい」って、逆に文句を言われました(笑)。
「忘れんぼ村」という、やわらかいネーミングにしたのは、とっつきやすくするためです。「攻玉社村」ではまずいですよね。A君が数字を覚えられない…という(笑)。なので、最初からネーミングは考えていました。
「一般入試でこの問題を出したら正答率は1ケタになっていたかも」
在校生にこの問題をやらせたりするんですか?
はい。終わってからやらせてみました。やはり特別選抜で入ってきている子は解きますね。算数が得意な子、数学が得意な子というのは一生懸命考えるし、そうでない子は「もういいです」というような感じでした。
気づいた子はいると思うんですよ。「数字が1つ足りないから、どうやったって全部忘れちゃうじゃん」と。解けないのは、それはそれである程度問題を読み込んだ結果だと思うんです。38日と解答する子よりは、気づいた子だと思っています。
一般の入試でこの問題を出したら、大変だったんでしょうね。
正答率は1ケタになってしまうと思いますね、きっと。特別選抜・第1回について、全体の正答率は5割くらいだったと思います。合格者は7割くらい正答している子が多いですね。
相関というのはそんなにないと思うのですが、この問題を解けた子は他の問題もできていたと思います。この問題を正答できるのは、発想力があり、頭の柔らかい子だと思いますから。
まさに特別選抜を象徴する問題ですね。
一般入試についても、「攻玉社はどうして算数だけ難しいの?」と、よく外部の人に 言われます。まぁ、特別選抜については、「こんな問題もありますよ」というか、いろいろな問題を出したいので。通りいっぺんの問題ではなくて、こんな問題を好きな子に来てほしいなと思います。
「途中式を見て、こちらが予想したとおりにやってくれていると嬉しい」
特別選抜・第2回のほうで、「途中式を見るよ」と言われているせいか、ここ(計算らん)に書き込む子もいますね。でも、採点には関係ありません。途中式は合っていても答えが合っていなければ×になってしまいますので、どちらでもいいのですが…。途中式を見て、こちらが予想したとおりにやってくれていると嬉しいですね。この問題ですと、やはり図にしますよね。書いている子は解けています。
(模範解答について、)私はあまり小分けにはしないんですよ。2の付かない数字が18個あれば覚えられるという発想がまさにそうだと思うのですが。6個ずつ忘れてしまうので、18個あればじゃまな2のつく数字を一気に覚えられるわけですよね。なので先に6個を覚えて、これを消して、いったん2を覚えて、その後に17個をくっつけてしまうんですよ。これで18個を作ってしまって、3連続で3つ覚えてしまえば、発想としてはシンプルかなと思うんですよね。
数学科の中でも、じゃまな数字を3連続で覚えてしまえば…ということで、例えば2を1個覚えておいて、残りの17個をくっつけて18を作ってしまうんですよ。作ってしまってから、12を覚えて、20を覚えて、2を覚えてというように、2のつく数字を3連続で覚えていけば、あとはプラス17個ですよね。
先にいらない17個を覚えてから…という方法でももちろんいいのですが。こういう発想を数学科の中では模範解答としています。
「算数特別選抜入試の子は自信家が多い!?」
これは図で表現しないといけないと思いました。数式で表現すると、わからなくなるんですよね。
実際に手を動かすことだと思うんですね。書いているうちに、分類されてくるんです。
2がつくのと、つかないのと、というように。そこで、じゃまなものを先に覚えないと消えてしまうから…というところに、たどりついてほしいんですよね。
特別選抜入試の算数は2種類の試験が続けて行われますよね。間にあまり時間がありませんが、1回目を引きずってしまう子はいないんですか?
算数特選の子は自信をもっている子が多いんですよ。第2回が始まる時点ではまだ採点結果が出ていませんから、間違えているかもしれないけど、「僕はできた」と思っているはず。例えばこの問題でも「38 よし、できた」と思って次の問題にとりかかっていると思います。
そういう意味では、算数特選の子は自信家が多いです。中学で鼻っ柱を折られると、凡人と化していくんですけれどもね(笑)。
数学科/立崎 宏之先生
「算数特別選抜入試で入ってくる生徒は毎年約20名」
1学年の中に、どのくらい算数特選で入ってきた子がいるんですか?
毎年だいたい20名くらいですね。多い時で24~25名です。
やはり数学の授業で食いつきはいいですか?
そうですね。食いつきがいいのと、彼らは違うところから攻めてきますよね。別解がいきなり出てくるんです。だからこちらもうかうかしていられない…。よくも悪くも、楽しみではあります。
特別選抜入試が始まった頃は、よほど算数が得意でなければ受けられないという感じがあったと思うのですが。
そうですね。やはり算数がちょっと得意という子では太刀打ちできないというイメージを、みなさんお持ちになられていると思います。正直なところ、算数以外の科目もできる子が受けているのが実際かなと思います。総合力のある子が。
そういうところを狙って、文章を読めないと解けない問題を出したいなというのもあるんです。数式処理や、図を見て、瞬間的に暗算できてしまうような問題だと算数力しか問うことができないのですがこのような問題だと文章も読みますよね。読解力なども問いたいという気持ちで出題している部分もあります。
そういう子のほうが伸びますか?
「算数」で満足してしまう子は、中学に入ってから落ちますね。中学の「数学」では、独特の難しい文章になってきますから、文章を読む力がないと、「何が書いてあるんですか?これ」と言う生徒が出てきます。
インタビュー 1/3

1863(文久3)年、蘭学者の近藤真琴が創立。89(明治22)年、海軍予備科を設置。海軍軍人の養成など頂点を極めたエリート教育はつとに有名。1947(昭和22)年、学制改革により新制攻玉社中が発足。66年より中高一貫校となり、念願の英才開発教育体制が整う。基本的に90(平成2)年に高校募集廃止。
校地はそれほど広くないが、室内温水プール、コンピュータ使用のLL教室、目的別理科実験室、地下に柔・剣道場を備えた地上4階建ての2号館など施設は充実している。03年には、1500名収容の講堂兼体育館や図書室、生徒ホールなどを完備する新校舎が完成した。自然光を取り入れた吹き抜けた回廊式の構造で、屋上は庭園になっている。雨水の利用など環境にも配慮。明るい学校生活が送れる。
道徳教育を教育の基礎とし、詩経の「他山ノ石以テ玉ヲ攻(みが)クベシ」に由来する「攻玉」の2文字を理想に掲げる。自主性を尊重し、体力・気力の強化をはかり、6年一貫英才開発教育を推進。校名から受ける硬派でスパルタ的なイメージとは違い、生徒はいたってのびやかで、先生と生徒の距離が極めて近く、一体感のある面倒見のよさが感じられる。帰国生のための国際学級がある。
高校の募集は補充程度で、ほぼ完全中高一貫といえる。英・数・国の時間数が多く、中3で高校の内容に入る。中2~高1まで選抜クラスを1クラス設け、成績により進級時に入れ替えを行う。成績不振者には指名制補習、希望者には特別講座、選抜クラスの希望者にはハイレベル特別講座がある。英語は2005年から『トレジャー』を使用し、中1から外国人教師による英会話が週1時間。中3では自由題材の卒業論文に1年間取り組む。高2から文系・理系に分かれ、それぞれに国公立大志望クラスを設置。希望制の特別講座・指名制の補習・補講などバックアップ体制も充実。
クラブ活動は原則として週3日で、中学生の約95%がいずれかに所属している。中高一緒だが、練習、試合は別に活動している。バスケットボール、サッカー、野球、テニス、バレーボール部は人気が高く、50名以上の部員がいる。学校行事は多彩で、英語暗誦大会、芸術鑑賞、中学自由研究発表会などの文化的な行事のほか、中学生は20km、高校生は34kmを歩く耐久歩行大会、夏の臨海・林間学校、スキー教室など体育的行事も多い。中3では希望者制海外ホームステイも実施。中1~中3の国際学級に所属する帰国生とは行事やクラブ活動などで接し、海外への視野を広げる一助になっている。