
女子美術大学付属中の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
「美術大学の付属校らしい校外学習」
小島先生 中学のカリキュラムは美術が週4時間ですが、どの教科もバランスよく学習しています。補習も随時行っています。中学では美術は目的ではなく学ぶための手段と考えています。高校も芸術科のような特別コースを設けていません。美術の授業は8時間ありますが、それ以外は一般の普通科と変わりません。
一方、行事には美術大学の付属校らしさがよく出ていると思います。毎年5月の「特別週間」に実施する校外学習は、中1・中2・高1は、山野でのスケッチや散策を行う春期旅行を、高2は女子美術大学の工房を見学します。
修学旅行(京都・奈良)も美術大学付属にふさわしいプログラムを組んでいます。とくに高3は寺院の特別拝観が中心で、ふだん一般公開されていない襖絵や建造物、庭園といった重要文化財等を鑑賞し、神職の方から直接説明を聞きます。
「美術が横串となって各教科をつないでいる」
小島先生 生徒を教えていると、絵を描くことがいろいろな教科の学習の入口になっていると、つくづく感じます。花を見て「きれいだな」と感じるだけでなく、その花を描きたい、もっとよく知りたいと思うことで、花びらの数や形、並び方など、細部までよく見ます。漠然と花を見ているだけではすぐに飽きてしまいますが、花を描くという目的があると何時間でも観察します。そうした姿勢は、学問でいえば興味をもって学びを深めていく過程に似ています。
青山先生 本校はほとんどの生徒が美術系の大学に進学します。理科は受験には直接関係ありませんが、だからこそ大事にしたい。理科という教科を通じて、私たちが生きているこの世界のことを理解してもらいたいのです。現在だけでなく未来にもつながっていることなので、生きていく上でしっかり学んでほしいと思います。
それに、理科と美術は意外にも関連性があるのです。化学は身の回りのものの性質を学びますが、それは絵の具の性質を理解することにもつながります。色については、美術でだけでなく、物理の光の三原色からも学びます。物事の原理や仕組みを理解することは、作品づくりに必ず活きてくると思います。
小島先生 筋肉の描き方など、美術の授業では理科的な説明がよくされますね。納得しやすいだろうし、同じことを別の角度から見ることでまた違った発見もあるでしょう。美術系大学をめざす上で、実は理科は大切な教科なのです。美術が各教科を横断する「横串」になっていると思います。
「お互いの個性を認めているから、異なるものも受け入れられる」
小島先生 本校は、よい意味で、自分の世界をもっている生徒が多いと思います。自分らしさや長所をよくわかっているし、周りと違っていてもそれは当然のことだと思っているので、他者と比較することがなく、過度な競争もありません。
生徒を見ていると、似たもの同士がグループになるというよりも、まったく個性が異なる者同士で仲がいい。私は他校で教えた経験がありますが、この点でも女子美はユニークな学校だと思います。自分とは異なるものをむしろ「おもしろい」と感じ、認め合い、受け入れる柔軟さがあります。
「美大卒業後の将来像が見える情報提示を」
小島先生 中高一貫生の約9割は女子美術大学を含む美術系大学に進学します。大学卒業後の就職を見ると、画家になるのは一握りで、多くは一般企業に就職します。配属部署は持ち前の表現力を活かして企画や広報関係が多いようです。
飲料パッケージのデザインを担当したり、玩具やゲームの人気キャラクターの商品化に携わっていたり、生徒の身近な商品に関わっていることが少なくありません。また、宝飾やアパレルなどのファッション関係も多く、映画の美術監督や舞台装飾でがんばっている卒業生もいます。活躍のフィールドは多方面にわたっています。
中学受験をしようとする場合、親御さんが入口だけでなく出口も知りたいのは当然です。美術大学の付属校では進路が限定されるのではないか、また、美術系の大学に進学して卒業後どのような職業に就けるのか、いろいろな疑問がわいてくるでしょう。
学校説明会では大学のコーナーを設け、大学の入試広報課の担当者が質問にお答えしています。今後は中高大の連携をさらに強化し、お子さんの将来の姿が想像できるような情報を積極的に提示していきたいと思っています。卒業生が実社会でどんな活躍をしているかを知ってもらえれば、進路に関する不安が少しでも解消されるのではないかと思います。
2010年4月に新校舎が完成します。これを機に新たな取り組みも計画しています。生徒の個性を伸ばし、感性を刺激して社会でいきいきと活躍できる人材育成に取り組んでいきます。
インタビュー 3/3

1900(明治33)年、私立女子美術学校設立。15(大正4)年に同付属高等女学校を開校する。35(昭和10)年、現在地に移転。49年に女子美術大学が発足し、翌年同短期大学を併設。51年に女子美術大付属中・高と改称。90(平成2)年、大学が神奈川県の相模原へ移転。2000年に創立100周年を迎えた。
「わが国の文化に貢献する有能な女性」の育成を主眼に発足。中・高・大学を美術という共通の絆で結んだユニークな名門校。一般教科の学習によって、幅広く知識や教養を身につけるとともに、美術をとおして各人が個性や感性を磨き、より創造性豊かな人間の育成を目指す。明るく自由で、個性的な生徒が充実した学園生活を送る。卒業生には世界で活躍する美術家やデザイナーなども多い。
杉並の落ち着いた住宅街のなか、併設の短大と敷地が同じだけに芸術的環境に恵まれている。美術に慣れ親しみ優雅で情操豊かに育てることを目的とし、軽井沢の寮で校外学習などを行い、自然美の観察もする。7つの美術室、工作染色室のほか、カウンセリングルーム、売店、食堂などがある。
文科省に定められた教科、科目はすべて履修するが、美術は週4時間をあて、のびのびとした感情の表現、創造力の育成、美的感覚の洗練をはかる。絵画、デザインが中心だが、彫刻、陶芸、版画、染色、美術鑑賞なども行っている。パソコンも美術で活用。一般教科では英語に力を入れている。高校では7~8時間を美術にとり、さらに専門的な美術理論の学習と、実技の練達をはかる。外進生とは高1より混合。高3で絵画、デザインのどちらかのコースを選択し、より専門的に学習する。併設の大学・短大へ70~80%が推薦入学するほか、超難関の東京芸大に進学する生徒も毎年見られる。
10月に開催される文化祭は、中高の全生徒の作品を展示。日ごろの学習の成果が発揮された創造性豊かな作品は、観客の目を十分に楽しませてくれる。校外での学習もひと味違って、中3・高3の修学旅行は、京都、奈良で寺院や美術館を見学して日本の古い美術文化を研究する。中1・中2・高1の春季旅行は自然のなかでスケッチ、山歩きなど、高2では女子美大工房見学を行う。クラブ活動はすべて中高合同で、美術、絵本、アニメーション、漫画研究など文化部が充実している。運動部はテニス、バスケットボール、卓球など9部が活躍。落語研究、コスチュームアートなどユニークな同好会もある。