
東京農業大学第一高等学校中等部の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
「図形に対する興味を図りたかった」
山野 本校では、図形(普段、目にするマンションにしても、車にしても、それらの影にしても…)に対してどのくらい興味をもって見ているのか、立体的な感覚というものをどのくらいもっているのか。そういう力を問いたくて、このような問題を出し続けています。
正答率は集計中なのですが…。図2の方向から見たもので、ずいぶん絞れるので、正答率はそれなりだったのではないかと思っています。
1番大きいAは決定するんですよね。それ以外のB、C、D、Eは、図1も図2も4つしか山がないということで、例えば一番小さい山がEとは限らないわけですよね。これも問題の難しさに含めての出題だったのでしょうか。
山野 そこまでは考えていませんでした。選択問題ですし、2月1日の問題は時間との勝負ですから、おおざっぱに見られればいいかなと。山の斜面角度を変えるという手もあるかなと思ったのですが…そうはしませんでした。
山の斜面の角度を変えたら、結構難しいですよね。
山野 そうですね。
中等部数学科/山野峰貴先生
「世の中そのものを観察してほしい」
これは観察が命の問題ですよね。
山野 とにかく、世の中そのものを観察してほしいということで、本校ではずっとこういうかたちの問題を出しています。
試験時間を問題量で割ると、1問あたり平均2分弱で解いていかなければならないので、与えられるヒントは多めになってもかまわない、図1、図2から答えの候補がすぐいくつかに絞れるように作っています。
図2を見ると、答えが1つに絞られていくんですよね。それを図1で確認する流れが効率的かと思うのですが、図1と図2の左、右の位置は意識されて作ったのですか。
山野 そうですね。数学で条件を使う場合、これを先に使った方がやさしいという、順序による差が出ますので、もしかすると図1を見てわかる子もいたかと思うのですが、たいていは図2から見たほうがわかりやすいですね。
そこで、どっちを左、右にしようかと考えた時に、図2を右側に置いて、こっちを先に見られた子は早いかなと。それは若干、意識しましたね。
「全体を眺めて、いらないものを排除する力に子供は長けている」
おそらく受験生にとっては、解きなれていない問題。初めて見るような問題だったと思います。そこで、直感に近いところから入っていくのかなと。なんとなく(イ)っぽいなというところから、図1の方は山と山の間が開いているところがある。図2の方はいくつかの山が続いたところがある。そういうところに目をつけて小学生は解くのかなぁと思います。
村上 受験生はきっと全体を眺めて解くだろうなと思ったんですね。1つずつ、これは違うだろうなとやるよりも、全体を眺めて、まずこれはカットしようとか、ありえないものを即、落としていくだろうなというふうに思ったんです。
即、いらないものを排除するには、全体を眺める力が必要。大人の方が、この力をもっているような感じがするのですが、実は子どもは瞬間的にそういうものを判断できる能力を持っていて、それはうちの学校に入ってきてから、理科でもそうだし、いろいろなところで、とても大事になる能力だと思っています。
山野 誤答を作るのが、本当に毎年苦労するところで(笑)。一番初めは手探りなんですね。適当にいくつか図を描いて、このカタチだったらおもしろそうだな、子どもたちはどう考えるかな、と考えながら…。そして1つ正しい答えをまず決めてしまって、その後にこの山の図を描いて、例えば間が開いたところがある、3つ続いたところがあるといったところが特徴的なので、眺めた時にこういうような感じの図が出てくるように、うまく5個の絵図を散らばせて、なんとか作り出すということをやっています。このあたりは、作るほうも試行錯誤するところですね。
入試広報部部長/村上修一先生
「メッセージ性のある出題が特徴」
中学入試を始めてから5年が経ちましたが…。
山野 そうですね。毎年3回入試を行っているのですが、図形に限らず、2月1日の問題がベースになるかと思います。
では、基本的な計算力をもっているかを問いたいので計算問題。中でも(2)は毎年工夫する問題を出しています。計算は力ずくでもできると思っている子が多いのですが、計算を工夫すると、それだけでスピードがずいぶん違ってきますし、大学入試では計算を工夫して、できるだけ短時間で解くということがポイントになってきますから、そういう意識を持って欲しいというメッセージです。少なくとも本校は、そういうところに意識を持つ生徒に入ってきてほしいということですね。
今年の(2)は、なかなか思いつかなかったかもしれないですね。
山野 左から順番にやっていくということなんですが…。例年と比べると、やや難しいかなという気はしますね。
は、数に関する問題ですね。本校では「大小関係」「約数・倍数の関係」「規則性」、この3つを小学生時代に身につけておいてほしいと思っているので、説明会でもそうお話しています。
中学生になると正・負の感覚が入ってきますが、小学生は正の数だけ。正の数は大小関係が一番基本なので。整数の大小関係と小数の大小関係がありますから、どちらにも対応できるかたちで。小数の大小関係には近似の感覚も含まれますね。約数・倍数の関係や規則性は、整数の問題を解き明かす鍵なので、これも大切です。これらを特に身につけてほしいと思っています。
は毎年、このような問題ですね。例えば初年度の問題では、3つの500円玉にそって1円玉を動かした時の1円玉が通過する部分を選択肢から選んでもらう問題を出しました。通過する部分の輪かくに若干とんがりがあるのか、滑らかなのか。感覚的なもので、おそらく答えが2つに絞られると思うのですが、もう少し分析すると1つに絞り込めるというような問題ですね。例年、感覚で一つに絞り込めるものや、感覚で二つくらいに絞って、もう少し分析を加えることが必要なものということで出題しています。
「感覚⇒分析 は数学を学ぶうえでとても大切な力」
子どもが分析するとなると、とんがるのか、滑らかなのかというのは、細かい図を描いていく必要がありますよね。
山野 そうですね。
選択肢なので取り組みやすいのですが、最後のどちらかにするというところでは、見た目よりも難しく感じると思いますね。
山野 それは確かにあると思います。これを作った時には、特に(ウ)と(エ)、2つの図が微妙なところがありますので、少し難しめかなとは思っていたのですが…。ただ、感覚的なもの、さらに分析というのは、数学を学ぶうえでとても大切なものだと思うんですね。私はメッセージとして出したいという気持ちがあって、この問題を出題しました。
ただ、出したところまではよかったのですが、この問題を説明会で解説する時に、パワーポイントでどう説明しようかと悩みました。
500円玉があって、1個の500円玉のまわりを1円玉が回るとこんなふうになる。これが3つあるので、次の500円玉に移るところでは滑らかにならないというような内容で作ったのですが…。試験場ではきっと思いつかないですよね。
みんなが遊びやゲームでやっていることを、遊びながらこんなことを考えている子はいないでしょうけど、現実とリンクさせている部分がありますね。
インタビュー 1/3

1891(明治24)年に榎本武揚が創立した育英學農業科が起源。1925(大正14)年に東京農業大学となる。農大一高は1949年(昭和24)年に東京農業大学予科の伝統を引き継ぎ開設。1956年に女子部を開設、1964年には男子部・女子部を合併した。2005(平成17)年に男女共学中高一貫校を開校した。
近隣には駒澤大学附属高校などがあり、東京農大に隣接した文京地区にある。緑の多いキャンパスにはパソコンルーム、メディアセンター、人工芝グラウンド、ビオトープなど充実した施設がそろっている。廊下の幅は4mと広く、オープンスペース、屋上日本庭園など校舎の随所にゆとりが感じられる。
生徒の「夢の創造と実現」が図れるよう、中高一貫の進学校として05年に開校した。「世界で通用する学力・心の教育・国際化・実学教育」を教育方針に掲げ、さまざまな状況でベストを創出できる能力と、能動的な学びのスタイルを確立し、幅広い進路の実現を目指す。知耕実学を学びの基本姿勢とし、独自の体験学習プログラムを通じて、受験指導だけではない豊かな人間性を涵養する。
東京農大だけでなく国公立・他の難関私大への進学希望をかなえる中高一貫カリキュラムを組む。中1を基礎期、中2・中3を充実期、高1・高2を発展期、高3を完成期とし、シラバスに沿った指導を展開。高2で高校課程を修了し、高3では目標大学別の演習にあてる。週6日制で授業時間にゆとりを確保し、学んだことを実際に応用し、また体験から得たことを学習に生かす実学的学習を実践する。中学では主要5教科を重視し、英・数・国は公立の2倍の時間を配分。英・数の中2~高2の習熟度別授業、英・数・国の確認テスト、補習・講習など、きめ細かく生徒それぞれの学習進度に合わせて指導する。
国語の文学散歩や、社会科見学、理科校外学習は各学期で実施。球技大会、醤油づくり、合唱コンクール、スキー教室などの行事があり、オーストラリアでのホームステイが、中3・高1・高2で行なわれる。クラブ活動は、中学は文化部11、運動部13のクラブが活動。高校は野球、陸上、バレーボール、ハンドボールなどが活躍、高校のみ馬術部もある。制服は男子は詰襟、女子は紺のブレザーに赤いネクタイとチェックのプリーツスカート。