
獨協埼玉中の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
「裁判員制度は憲法と実生活との関わりを考える好材料」
この問題は、初め裁判員制度導入の目的を書かせるつもりでしたが、再度練り直し、裁判員制度に対して賛成・反対の理由を書いてもらう問題としました。実際に世論が賛否両論で興味深い状態でしたから、おもしろい問いかけではないかと思ったのです。
公民分野はつねに憲法のことを意識して作問しています。日本国憲法の三原則の1つである「国民主権(主権在民)」の考えを生徒にどのように伝えるか。これは授業でいつも苦労します。用語は知っているけれど、それがふだんの生活とどのような関わりがあるのかは、大人でもあまり意識することがありませんから、生徒はなおさらです。
その点、裁判員制度は将来自分が裁判員に選任されれば、刑事裁判の有罪・無罪や量刑を判断しなければならない。どこか遠い存在だった裁判の当事者になり得るわけですから、主権在民と実生活との関わりを考える材料として最高の素材だと思います。
社会科/古田辰也先生
「死刑制度が裁判員制度を考える意義を強くしている」
また、この問題は死刑制度のテーマから派生した問題です。死刑制度を取り上げなければ、おそらく裁判員制度に触れることはなかったでしょう。裁判員に選任されれば、死刑を判決することになるかもしれない。死刑制度の存廃は主権者として当然向き合うべきテーマです。だからこそ「考える問題」になったのだと思います。
国際的には死刑制度は廃止の方向へ動いている中で、日本はむしろ死刑執行が増えています。こうした背景からも、大人はもちろん、子どもたちも裁判員制度について深く考える必要があるのではないかと思います。
「一般の人の立場で答える難しさがあったのでは」
この問いの配点は、賛成・反対それぞれ2点ずつ、合計4点です。正答率は完全解答が3割を上回りました。部分解答も約6割でしたから、予想よりもよく書けていたと思います。白紙の解答もほとんどありませんでした。こちらが感心するような解答があり、採点していて楽しかったですね。この問題は思いつきで正解できるような問題ではありません。それだけふだんから世の中の出来事について関心をもって考えているのだろうと感じました。
印象としては、賛成・反対どちらかが書きにくかったということはなかったように思います。ただ、両方の立場で、しかも「世論の」賛否ということで、世の中ではどうなのか、一般の人の立場に立って答えるのは、小学生にとっては難しかったかもしれません。ご家庭で裁判員制度について話したことがある受験生は、お父さんやお母さんの意見が参考になっただろうと思います。
社会科主任/高田晶子先生
「読み手に伝わる説得力のある理由が書けているか」
この問題は賛否の「理由」を聞いています。「理由を聞く」ということは、「説明する」ということですから、説得力のある文章が書けているかどうかが完全解答の分かれ目になりました。
キーワードを押さえていても、用語の羅列では読み手に伝わりにくい。わかっているのだろうけれど、表現力がもう一歩及ばないという解答が見られました。
反対の理由として「イヤだから」というのは、確かに心情的にはそうかもしれませんが、感情的な理由では説得力がありません。なぜイヤなのか、つまり、なぜ反対なのか理由を書ききれなかった受験生も少なくありませんでした。
また、賛成の説明をしているつもりが、賛成の理由になっていないといった解答も見られました。主語と述語がつながらずねじれていたり、考えの“かけら”は見えるのですが、考えがきちんと整理されていないのでしょう。入試では制限時間内に伝わる文章を書く力も求められます。
社会科/田口淳先生
「公民では多角的に物事をとらえられる力が目標」
中学の授業で裁判員制度を取り上げると、生徒の反応は世論と同じく、「自分が裁判員になったらどうしよう」というものです。学べば学ぶほど、「どちらともいえない」という考えになるようです。
死刑制度については、生徒は語彙が少ないこともあり、「大変」「つらい」といった感情的な表現が多くなります。自分の言葉で書く作業は容易ではありません。模範になるような生徒の意見を紹介すると、刺激になりますね。自分の言葉で表現する訓練を積み重ねていくと、その生徒なりに消化した考えが出てくるようになります。
中には裁判員制度を中3の卒業論文のテーマに取り上げた生徒もいます。実際に裁判所を見学し、「自分がもし裁判員になったら、このような立場で考えたい」というところまで達している生徒もいました。
公民ではとくに、取り扱うテーマが白黒はっきりできないものが多い。死刑制度であれば、被害者、加害者それぞれの立場でどのように考えるか、子どもなりに、いろいろな角度から考えられる力を身につけられるように心がけています。
インタビュー 1/3

1881(明治14)年にドイツを主としたヨーロッパ文化を学ぶことを目的とした獨逸学協会としてスタートし、以後120年間のうちに獨協大学、獨協医科大学、姫路獨協大学、獨協中学・高校を有する総合学園に発展。獨協埼玉高校は1980(昭和55)年に開校。2001(平成13)年に待望の中学校が開校した。
都内と違い、まだまだ多くの自然が残る環境のなか、約8万m2の広大な校地をもつ。300mトラック、サッカー・ラグビー場、図書館棟、和室棟などがある。中学開校に伴い、中学の校舎を新築。普通教室のほか、カリキュラムで使い分ける選択教室が8教室、250名収容の多目的ホールや、各階の談話コーナーのほか談話室を兼ねた食堂もあり、弁当、パンや飲み物を販売する売店も備えている。
地域の農家の協力を得て田圃でイネを育てたり、ボランティア活動や地域学習を通じて、頭だけでなく心を育てる指導をしている。
併設大はあるが、他大学進学へのウエートが大きい。英語は中1では週6時間のうち4時間は外国人教師と日本人教師による交互授業で、1クラス2分割の少人数制。数学は中2・中3で習熟度別・少人数の演習授業、高校の英・数は習熟度別・少人数授業。指名制・希望制の補習が放課後あり、定期考査後や、学期末にも特別補習を実施する。中3で卒業論文に取り組む。毎日10分間の朝学習では、読書、新聞、学習チェックの3つの内容で行われる。伝統のドイツ語は高1から自由選択科目となる。外進生とは高2まで基本的に別クラス。
中学のクラブの活動日は週4日で、完全下校を中1は5時に設定。運動部は陸上、軟式野球部など13、文化部は吹奏楽、演劇部など7、文芸、サイエンスなど7つの同好会がある。授業のほか体、心を鍛える総合学習プログラムがあり、中1では農家の協力を得て稲を育てるネイチャーステージ、中2では地域の歴史・文化を調べるコミュニティーステージや、ブリティッシュヒルズでの「英語ですごす3日間」を体験するコミュニケーションステージ、中3ではボランティアステージなどが用意されている。学校行事は、文化祭、修学旅行、マラソン大会など多彩。希望者対象に中3はニュージーランド、高校はカナダ語学研修、オーストラリア・ドイツとの国際交流がある。