
法政大学中の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
「時代が進み、理科として見せたいものが隠されている」
森田 今の子どもたちは、バーチャルな世代なわりには見ていないんですよね。
最近一番悩んだのは、高校1年の話で恐縮ですが、円運動に入った時の回転体です。円運動を見ること自体、あまりないのですが…、今の子たちは回転自体も見ていないんです。私たちは33回転といえばすぐにわかるのですが(笑)。「君達、33回転て知ってる?」と聞くと、「何だ、それは?」って言うんですよね。だから「家に帰ってお父さん、お母さんに聞けばすぐわかるよ」って。CDも実は回っているのですが、ほとんどブラックボックスですよね。自転車の車輪などと言うとわかるのですが、あれは円運動ではなくて回転運動なんです。ですから見ているようで見ていないし、見る素材や材料も結構少ない。最近は中に隠れているものが多いんですよね。
理科/森田 勉先生
「表面に見えているものだけにとらわれてはいけない」
森田 見えないものを見ていくというのは、実際に見る経験が少ないということもありますけれども…。例えば力学などでは、力の働きといっても力そのものを見ているのではなくて、物体の運動状態の変化を見ているわけですから、そういった思考とか。簡単にいえば風が吹いていても風は見えないわけですから、何をもって感じ取るかということですね。表面に見えているものだけにとらわれてはいけないんです。
SLなども、そのものですよね。
森田 そうですね、蒸気機関車ですから。
「こういうものがあるだろう」と言って通じた世代もあるんですけど、今はほとんど通じない。逆に何か見せていかないとイメージを共有できない。また、それを見せても、同じものを見ていないかもしれないということなんですね。テレビのチャンネルを回すという世代ではないですからね。
マッチをすったことのない子も多いですよね。
森田 マッチ、見ないですね。喫茶店でも見ないですね。
余宮 子どもたちはガスバーナーのつけ方は知っているんですよ。最初にここをひねって、次にここをひねって…というのは。だけどマッチがつけられない(笑)
森田 最後の工程が…。
余宮 ライターじゃないと火をつけられないんです。ライターといっても着火マン。あれじゃないとダメなんです。
「新キャンパスはフィールドワークに適した環境」
実験はたくさんやっていますか?
余宮 中学の方が多いですね。
森田 見せたり触らせたり…いろいろやっていますね。
井の頭公園に移転してきて、ご覧のようなキャンパスですから、春になると花が咲いて、フィールドワークをすると中学1年の生徒はキャーキャー言って喜んでいます。
あまり手は加えなかったんですか。
森田 自然を残すと雑草だらけになりますから、だいぶ手は入れていますけど、できるだけ自然に触れられるというコンセプトはもっていますね。それと幸いなことに、都の保有林が手つかずに残っていますから恵まれていると思います。
チョウチョとかいますからね。ゴマダラチョウとかね。野鳥も結構いるし、今日は白い小サギが飛んでいましたよ。玉川上水もすぐそこに流れていますから、材料には事欠かないですね。
移転して、学習環境は良くなりましたか。
森田 いろいろ長所・短所はありますね。理科室や実験室は今までの3分の2くらいに縮小せざるを得なかったんです。また、新しいところに移ると使い勝手の悪い面も出てきますから、これから改善していかなければならないところもあります。でも環境はいいですよ。(以前キャンパスのあった)武蔵野市も文化レベルは高かったのですが、(現キャンパスのある)三鷹も高くて天文台などもありますし、いろいろな意味で活用度が高いですから、いろいろな可能性を秘めていると思います。
理科/余宮 賢先生
「大切にしているのはきちんとした日本語で表現できる力や論理的な思考力」
6年間の教育の中で大事にしているものは?
森田 これも理科の教員の間でよく話題になるのですが…。理科の考え方も大事ですが、しっかり話ができるとか、文章が書けるとか、主語述語が明確になるとか。そういったことが結構大切だと思うんですよ。きちんとした日本語を基に、コミュニケーション能力というか、「表現力=論理的な思考力」ということになると思いますが、こうした力は生物・地学・化学・物理に関係なく、しっかりと生徒に発信できるようになってもらうということは意識しているのではないでしょうか。
また、特に中学では、自然の不思議さ(恐ろしさも含めて)をしっかりと見る、しっかりと触れて自然の対象物を身近なものにしていくという意識はずいぶん浸透していると思います。
正しい科学観とよく言われますが、そういうことも意識して、当然テストとなれば覚えることも必要ですが、記憶だけでできる問題ではなくて、考えて解いていくということを重視しようということは話し合っています。それと身近な教材から普遍化していくというスタイルは、みんな取っているのではないかと思いますね。
「法政大学への推薦権を保有したうえで他大を受けられるチャンスを生かしてほしい」
森田 それとやはり大学がありますので、大学で活躍できる力をつけていきたいと。それは理科だけではないですが…。いろいろと理科で実験し、他教科で教養を身につけて、活躍できる人物を発掘したいということですね。
ただ、いわゆる演習力の弱さは否めない。大学付属校なので、どうしても受験志向というものが薄れてきますので、そこは課題として力をつけてあげなければいけないと思います。
これからは法政大学だけに行けばいいという時代ではありませんから。他にも行ける力をつけてあげる方が現代的だろうと思いますね。
今は他私大を受ける場合でも推薦権を保有できます。第一志望優先というのが原則ですけれども、他大は私大、国公立に関係なく、法政大学の推薦権は保有できるということです。
恵まれていますよね。
森田 そうですね。そういうチャンスをどんどん生かしてもらいたいですね。何も法政だけにこだわらず、極端にいえば日本にこだわらず。
国公立大だけでなく、他私大にも推薦権をもって受験できるようになったのはいつからですか?
森田 おととしくらいからです。外に打ち出したのは、今の高校2年が入学してきた時だったと思いますね。
浸透するのに3年くらいはかかるかもしれませんが…。この間の模試などでも、高校1年あたりはいい成績を挙げてきていますから、だいぶ違ってくると思いますよ。実績が少しでも出始めれば早いと思います。
「大学にパイロット養成コースが。文化祭ではフライトシュミレーターが大人気」
進路の幅も広げていいし、活躍の場も求めていいということですか。
森田 私たちは新たな付属校の価値感を作っていくというか、提供しなければいけないわけですから。大学の知的財産、人的財産、物的なものも含めてですね、フル活用して、世界で活躍できる人材、10年、20年先の夢実現に向けてクリエイトしていける人材を輩出するために、大きな視点に立って大学改革を進めていきたいと思っています。
今、一番関心を示しているのは、理工学部の機械工学科に「航空操縦専修」というパイロット養成コースという学科ができまして、プロジェクトリーダーになった御法川准教授は本校の卒業生、教え子なんですよ。ですからこの間の文化祭でも、玄関のところに、中学受験の特に男子向けにフライトシュミレーターを置いたら、すごく人気がありましたね。
実際、うちから2人、1期生が出ています。今年は1人。高校3年にも1人行きたいと言っている生徒がいるので、この先も続いていくと思います。パイロットの資格が国内で取れますからね。大きな目玉になりますが…。そういうものにこだわらず、大学との連携では理系の新たな戦略的展開としてできることがたくさんありますので、いろいろと手がけていきたいと思っています。
「こつこつ勉強する女子。学習する雰囲気を作ってくれる」
大学は女子に人気。中高も共学になりました。女子にどんなことを期待していますか?
森田 この4月から6学年に男女が揃います。私は今年初めて高校1年の物理で女子に教えたのですが、割合食いついてきましたね。もちろん物理が苦手な子もいて、ハッキリ口に出すんですよ。一番驚いたのは「ガリレオ、嫌い」って言った子がいました(笑)「なぜガリレオはこんなよけいなことをやってくれたのだろう」って。あれはおもしろかったなぁ。
私の思い込みもあるかもしれませんが、女子生徒には割合こつこつ勉強するタイプが多いと思うので、学習する雰囲気を作るという意味では、かなり大きな貢献をしてくれていると思います。
余宮 私も今年初めて共学の担任になりまして、もちろん男女に根本的な違いはあるのでしょうが、やりにくさというのはそんなに感じませんでした。私は化け学なので、やはり女の子受けは悪いんですね。数学や理科というのは女の子に苦手意識をもたれてしまう部分があるのですが、最近の子は点が取れるとおもしろくなってくるというところがあって、取れた子はさらに勉強するんですよね。
あとは教員との人間関係で、変な話「私、この先生が好きだから勉強する」というような傾向が、男子生徒に比べるとあると思いますね。
また、解き方を覚えてくるんですね。例えば実験の現象を検証したり、理論を考えたりする時に題材を出すわけですが…。そうすると、「こういうふうに書いてきたんですけど、あっていますか? 間違っていたら直してください」と、ノートを差し出して来ます。男子はこれこれこういうことだから…と頭の中で考えて、それをレポートなりテストに書いてくるのですが、女子は事前に聞いて、それを一言一句丸暗記して試験対策をしてくるという、今までになかったパターンだったので驚きました。ですから授業中に、私の話す言葉をよくメモするんですよね。男子生徒は「ここは大事だぞ」と言わない限り赤線を引っ張ったりしないのですが、女子はこと細かにメモするんです。
それは小学生も同じですね。
余宮 ですから男子生徒は女の子にノートを借りて、写して…。借りているくせに「誰のノートがいい」などと批評したりしています。そういう意味では、相乗効果があったのではないかなぁと感じております。
インタビュー 2/3

市ヶ谷の法政大学のなかに1936(昭和11)年に法政中学校として創立。46年9月、現在地の吉祥寺に移転した。48年に法政大学第一中・高等学校を開校して現在に至る。85年にはニュージーランドのケルストン高校と兄弟校となる。2007(平成19)年に三鷹に移転し、法政大付属校では初めて共学校化。
法政大学の「自由と進歩」の学風を継承し、付属校の中でももっとも大学と緊密な学校だった法政大学第一中・高が、創立70周年を機に校名変更、校地移転、男女共学校化、中高大一貫体制の強化など、学校大改革を実施する。魅力ある男女共学校として、相手を思いやり、人と人とのふれあいを大切にする教育に積極的に取り組み、高い学力とすぐれた人間力を獲得させることを目標とする。
三鷹市の東京女子大学の跡地に移転した新しいキャンパスはエコ、グリーン、コミュニケーションをテーマに、環境に配慮した。中高の校舎、グラウンドや体育館があり、マルチメディア教室、図書館、食堂などを備える。地域に開放する生涯学習施設などもある。
6年間一貫の特性を生かした独自の「2(中1・中2)-2(中3・高1)-1(高2)-1(高3)」システムで、基礎学力の育成から大学・大学院への進学も視野に入れた授業を行う。国際教育プログラムに力を注ぐほか、中3・高1では「発表」や「書く」機会を通して、表現力を身につける。なかでも英・数・国に特に力を入れ、英・数では学習室を18室設け、少人数制・習熟度別授業を実施する。高2・高3では大学の授業に参加することができる制度もあり、週1回は高2・高3合同のゼミ形式の授業も。高3では「高大ブリッジ講座」という高大連携プログラムも用意されている。
これまで中学生は詰襟の制服、高校生は私服可だったが、2007年からは法政カラーのオレンジと紺のネクタイ・リボンをつけるブレザータイプの制服に変更。全校で制服を着用するなどモラル・マナー指導もしっかり行う予定。中学では全員がオーストラリア短期研修に参加。希望者には英国研修もある。高校はインターナショナルプログラムを選択した生徒を対象に、2~3週間の海外研修も予定している。法政大学のキャンパス見学会、六大学野球応援など大学との連携した取り組みもある。