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シカクいアタマをマルくする。

出題校にインタビュー!

2009年 法政大学中 【理科】

法政大学中の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1. 身の回りのものを観察し、考え、イメージできる力を!

「ものごとを具体的にイメージできない子どもたちが増えている」

森田 この問題(走っている自動車から他の自動車を見た時の動きについての問題)は高校の物理で学ぶ「相対速度」の問題です。高校生に教えている時に、私と同じピクチャー(イメージ)を描いていない子が、少なからずいるのではないかと感じたんですね。

「相対速度」という、よく見ていれば自分の頭の中で描けるはずのものが、実際には描けていないと。高校1年でもそういうことがあったので、ちょっとショックだったのですが。最近は「相対速度」に限らず「あれっ? 私と同じ絵を描けていないな」と思うことが多いので、これは子どもたちの生活習慣病なのではないかと。つまり自分の中でものごとを具体的にイメージするということが訓練されていない、習慣化されていないというのを強く感じたことが、この問題を作ろうと思ったきっかけです。

理科/森田 勉先生

理科/森田 勉先生

「見えないものをどう見るかという視点や考えが弱い」

森田 子どもたちがイメージしにくいのは…例えば熱や温度、色の関係などですね。私たちは子どもの頃に石炭ストーブや、石炭で風呂を沸かすといったことを、身をもって体験してきているので非常にわかるのですが、今の子どもたちはそういうものを知らないので共有できないのです。

今の子はバーチャルな世界に慣れていると思うのですが。

森田 そういった意味では、視覚は鋭いはずですよね。ただ、入ってきたものを見てはいるけど、見えないものをどう見るかという視点や考えが弱いのではないかと思うんですね。

高校生でも「いつも見ている信号機。赤と青、どっちにある?」と尋ねると、意外と答えられないんです。つまり見てはいるのですが意識して見ていない。ただ見ていると。
私は大学のデザイン工学部でも講義を行っていて、そこでも聞いたことがあるんです。車でパッと止まった時に信号機のダイオードの数が気になったことがあったので、「何個あると思う?」と。するとわからない。「気にしたことはあるか?」と聞くと、全然気にしてないんです。

つまり毎日目にしているものに目を留めてもう少し見るというか。見抜く力が足りないと思うんですね。バーチャルなビジュアルは見ているけれど、そこに隠れている原理原則を含めて、その奥をさらに見るというところまでいっていない。ぜひそうした習慣を身につけてもらいたいと思いますね。

「正答率は33.4%。意外と低くて驚きました」

森田 この問題の正答率は33.4%です。正答が3分の1というのは意外でしたね。関連した問題を全部で5問出したのですが、次の(2)が70%、(3)が71.1%、(4)、(5)も低くて46.9%と39.4%でした。

1番(この問題)の正答率が、5問の中で一番低いんですよね。誤答としては(イ)の「東向きに走って見える」が多かったです。問題文の中に「東へ向かっている」とあったので、「そうだ、東向きだ」と思ってしまったのかな。それでは理科の問題にならないですよね(笑)。そこだけを考えても(イ)にはつけないと思うのですが、つけてしまう受験生が多いのでびっくりしました。

理科/余宮 賢先生

理科/余宮 賢先生

「今の子どもには、考えるゆとりがないのかもしれない」

正答率、低いですよね。考えるうえで、二次元という部分もあるのではないかと思うのですが…。

森田 確かに二次元的な…と言われるとそうかもしれませんが、空間知覚的なものかなぁ。高校2年生などを教えていても、一面的な見方になってしまいますからね。逆から見たらどうなるか、などという発想は弱いかもしれないですね。

私たちが小さい頃というのはもっと時間にゆとりがあって、追われていないというか…。例えば夜、祖母の家から自宅に帰る時に電車に乗ると、昔は連結しているところにも窓があったんですよね。そこから景色を見ようとすると、夜などは外が見えなかったりして。電車だけが映って、そこに窓が映って、反射してくるものを見ていると逆行していたり…いろいろなので、私は「不思議だな?」「どうなっているんだ?」と考えながら見ていましたよ。そんな幼少の頃を思い出しながら問題を作っていたのですが…。今の子どもには、そんなことを考えるゆとりがなかなかないのかもしれませんね。

「イメージする力をつけるには、実体験を積むことが大切」

先生が大学で教えていらっしゃるデザイン工学でも、見るチカラは大切ですよね。

森田 大学は講師でおじゃましているだけなのですが、やはりイメージ化していく力は基盤基礎になりますからね。大学生・高校生・中学生…小学生も含めて、共通して問える問題ではあると思いますね。

(5)はエレベーターに乗って体重をはかる実験の問題。私自身も近くのマンションで、ヘルスメーターに乗って試したことがあるんですよ。最近エレベーターの機能が良くなっているから、どうかなと思ったのですが…。あまりできていなかったですね。

(4)は慣性の問題。これも小学生には難しかったかもしれませんね。こういうのもね、小さい時につり革を持たずに電車に乗ってみるとか、いろいろなことをやっているとわかるのですが…。最近はみんな、電車に乗ると携帯やゲームですから、もったいないですね。

ある女子校で、電車内で実験しているという話を聞いたことがありますが。

森田 やってみたいですね。授業よりも課題にしてやって来いと。うちでも電車の速度を測らせるようなことはやりますけれども。中央線がまっすぐな線路なものですから、吉祥寺―西荻窪間で時速何キロとカウントするようなことを2人1組でやって来いとかね。そういう実験でレポートさせるということはやっています。

「見えないものをどう見ていくか。そこにこだわった問題を出していきたい」

理科の入試問題の全体的な出題コンセプトを教えてください。

森田 私は昨年まで6年間、校長をやっていたので、入試問題の作成は初めてだったんです。入試管理部から「基本に忠実な問題が望ましい」という指導がありましたので(笑)、難しくしたつもりは全くなかったんですね。可能な限り、日常生活でちょっと注意深く見ていればわかるようなものを題材にしたいと思って作問しました。

先ほどから言っている、見えないものをどう見ていくかということは常に考えていきたいですね。とっつきづらいものではなくて、普通にしっかりものを見ようとしていれば解ける問題を作っていきたいと思っています。

法政大学中 先生

「授業でも、見せて、そこに隠されているものに気づかせることを大事にしている」

森田 授業にもそういう考えを反映させています。例えば、わかるというのはどういうことかと考えると、理科ですから一定の法則やルールに基づいて理解することだと思うんですね。先ほどの問題でいえば「どちらから見ているのか」ということをしっかりと考えられる力。高校へ行けば座標軸の原点はどこだとか、観測している座標系はどこだとか、そういうことになると思うのですが…。そのうえで判断する、わかるということです。そういうものが何もなければ、勝手なイメージがどんどん出てしまい、それは科学的な思考でもなんでもなくなってしまいますから。

授業では、例えばいろいろなものを見せて、そこに何が隠されているのかということを気づかせていく…、考えさせていく…ということでしょうかね。そういうことを大事にしています。余宮先生の方がもっとうまいと思いますけど。

余宮 いえいえ。

森田先生が物理、余宮先生は化学なんですよね。

森田 化学の方が見た目にはおもしろいことが起こりますから。

余宮 確かにインパクトはあるかもしれませんが…。

中高生が食いつくテーマ、あるいは見せ方で、工夫していることはありますか?

森田 見て驚く…、改めてそういうことかと気づく…、そういうことは意識していますね。特に上級生に行くに従って、見た目ではなくて中身に深く入っていきます。物理の法則は普遍的なものを追究しているわけですから、時々身近なものを見せつつ、そこから思考をつなげていくということは意識していますね。

インタビュー 1/3

法政大学中学校

法政大学中学校市ヶ谷の法政大学のなかに1936(昭和11)年に法政中学校として創立。46年9月、現在地の吉祥寺に移転した。48年に法政大学第一中・高等学校を開校して現在に至る。85年にはニュージーランドのケルストン高校と兄弟校となる。2007(平成19)年に三鷹に移転し、法政大付属校では初めて共学校化。
法政大学の「自由と進歩」の学風を継承し、付属校の中でももっとも大学と緊密な学校だった法政大学第一中・高が、創立70周年を機に校名変更、校地移転、男女共学校化、中高大一貫体制の強化など、学校大改革を実施する。魅力ある男女共学校として、相手を思いやり、人と人とのふれあいを大切にする教育に積極的に取り組み、高い学力とすぐれた人間力を獲得させることを目標とする。
三鷹市の東京女子大学の跡地に移転した新しいキャンパスはエコ、グリーン、コミュニケーションをテーマに、環境に配慮した。中高の校舎、グラウンドや体育館があり、マルチメディア教室、図書館、食堂などを備える。地域に開放する生涯学習施設などもある。
6年間一貫の特性を生かした独自の「2(中1・中2)-2(中3・高1)-1(高2)-1(高3)」システムで、基礎学力の育成から大学・大学院への進学も視野に入れた授業を行う。国際教育プログラムに力を注ぐほか、中3・高1では「発表」や「書く」機会を通して、表現力を身につける。なかでも英・数・国に特に力を入れ、英・数では学習室を18室設け、少人数制・習熟度別授業を実施する。高2・高3では大学の授業に参加することができる制度もあり、週1回は高2・高3合同のゼミ形式の授業も。高3では「高大ブリッジ講座」という高大連携プログラムも用意されている。
これまで中学生は詰襟の制服、高校生は私服可だったが、2007年からは法政カラーのオレンジと紺のネクタイ・リボンをつけるブレザータイプの制服に変更。全校で制服を着用するなどモラル・マナー指導もしっかり行う予定。中学では全員がオーストラリア短期研修に参加。希望者には英国研修もある。高校はインターナショナルプログラムを選択した生徒を対象に、2~3週間の海外研修も予定している。法政大学のキャンパス見学会、六大学野球応援など大学との連携した取り組みもある。

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