
日能研教務部社会科
このコーナーでは、今年度入試に取り上げられた時事的話題や来年度の入試での出題が予想される時事的話題について、不定期的に取り上げていきます。
年が明け、いよいよ2011年度中学入試がスタートしています。受験生は最後の追い込みに余念がないことと思いますが、当コーナーでは2011年度入試で出題(大設問での)が予想されるいくつかの時事的テーマを取り上げ、そのポイントについてアドバイスをしておきたいと思います。
2011年度中学入試で出題が予想される時事的テーマの第一は、2010年7月に行われた参議院議員選挙(以下、参院選)とその結果です。そこでおさえておくべきニュースのポイントや関連する基本知識については、すでに『2011重大ニュース』等で確認済みのことと思いますが、入試直前にとくに注目しておくべきポイントを、過去の入試問題を参照することでおさえておくことにしましょう。
そこで、前回2007年の参院選の翌年、2008年度入試でその結果がどのような形で出題されていたか、一つの例をあげてみます。
以下の文章を読み,問いに答えなさい。
昨年7月,参議院議員選挙が行われた。結果として( A )の歴史的な大敗となり,参議院では( B )が第一党となった。この大敗によって衆議院と参議院の第一党が異なるという事態が生まれた。こういった場合には衆議院と参議院とで異なる決議がなされる可能性が大きくなる。衆参両議院での決議が異なる場合,法律案の場合には,衆議院が出席議員の( C )以上の多数で再可決すれば,国会の議決となる。また,予算の議決では,( D )を開催し,それでも不一致となった場合には衆議院の議決となる。
(2008年 森村学園中等部)
この問題ではまず、この前年(2007年)の参院選において敗れた(議席を大きく減らした)政党名と勝った(議席を大きく増やした)政党名とが問われています。これらは2010年の選挙についても大きなポイントとなるでしょう。下の2010年の参院選の結果の表から、この選挙で敗れた政党名(民主党)、勝った政党名(自民党とみんなの党)をもう一度確かめておきましょう。
| 選挙区 | 比例代表 | 合計 | (改選数) | 参議院 新勢力 |
|
|---|---|---|---|---|---|
| 自由民主党 | 39 | 12 | 51 | 38 | 84 |
| 民主党 | 28 | 16 | 44 | 54 | 106 |
| みんなの党 | 3 | 7 | 10 | 0 | 11 |
| 公明党 | 3 | 6 | 9 | 11 | 19 |
| 共産党 | 0 | 3 | 3 | 4 | 6 |
| 社民党 | 0 | 2 | 2 | 3 | 4 |
| 新党改革 | 0 | 1 | 1 | 5 | 2 |
| たちあがれ日本 | 0 | 1 | 1 | 1 | 3 |
| 国民新党 | 0 | 0 | 0 | 3 | 3 |
| 新党日本 | ─ | ─ | ─ | 0 | 1 |
先の問題では、選挙の結果もたらされた新たな政党の勢力関係やその下での国会運営のことも取り上げられています。
2007年の参院選では、衆議院で多数をしめる政権党としての自民党が、選挙の結果、連立政権を組んでいた公明党と合わせても過半数をしめることができない、逆に言えば、参議院では民主党をはじめとする野党が過半数をしめる“ねじれ国会”といわれる状態がもたらされました。
2010年の参院選では、これとちょうど反対のことが起こりました。すなわち、衆議院で多数をしめる政権党としての民主党が、選挙の結果、連立政権を組んでいた国民新党と合わせて過半数をしめることができない、逆に言えば、参議院では自民党をはじめとする野党が過半数をしめるという“ねじれ国会”状態がもたらされたわけです。
2008年度入試ではこの“ねじれ国会”について、文で説明させる問題が目立ちました。
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(2008年 東京女学館中学校)
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(2008年 頌栄女子学院中学校)
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(2008年 成蹊中学校)
ここから考えると、2010年の参院選後の新たな“ねじれ国会”についても文で説明することができるようにしておきたいところです。
次に注目しておくべきテーマは、国の財政問題です。民主党政権は2010年度の一般会計で史上最高の約92兆円の予算を組みましたが、歳入にしめる税収入はその4割でしかなく、半分は国債の発行でまかなわれるというものでした。例年、国会のことにくらべると予算のことは入試の出題件数としてはそれほど多いとはいえませんが、昨今このことをぬきに日本の未来は語れなくなっています。当然、入試においても多く出題されるはずです。
そこで、このテーマについても過去の入試問題を参照して、重要なポイントをつかんでおきましょう。
(前略)
国の収入は主に租税・印紙収入,公債金収入,その他収入に分けられます。こうして集められた国の収入を歳入と呼び,その支出を歳出と呼びます。図1(省略)は5平成19年度の国の一般会計の当初予算の歳入額および歳出額の内訳を示しています。1年間の歳入と歳出の計画を予算と呼び,これは国会の議決をへて決定されます。各省庁は毎年8月ごろまでに次年度の活動に必要な金額をそれぞれ財務省に提出し,財務省がその内容を確かめた後にその結果を( イ )に報告をします。その報告を受けて( イ )が「予算案」を作成して,翌年1月に召集される( ウ )国会に提出し,6国会議員が審議します。
現在,日本では歳入に占める公債金収入の割合の高さや,歳出に占める7国債費の大きさが問題となっており,8財政再建の必要性が叫ばれています。平成19年度末で国債の残高は約547兆円に達すると見込まれており,その額は税の収入の約10年分に相当します。また,これから本格的に少子高齢化社会を迎えることを考えると,財政再建の道は大変難しいものであると予想されます。
(2008年 早稲田実業学校中等部)
この例題も3年前に出題されたものですが、問題にされている事態は少しも変わっていません。というより、むしろさらに悪くなっています。ここで、2010年度一般会計の歳入と歳出の内訳を確認しておきましょう。
| 歳入の内訳 | 億円 | % | 歳出の内訳 | 億円 | % |
|---|---|---|---|---|---|
| 租税・印紙収入 | 373,960 | 40.5 | 社会保障関係費 | 272,686 | 29.5 |
| 公債金 | 443,030 | 48.0 | 国債費 | 206,491 | 22.4 |
| その他 | 106,002 | 11.5 | 地方交付税交付金 | 170,945 | 18.5 |
| 合計 | 922,992 | 100.0 | 公共事業費 | 57,731 | 6.3 |
| 文教科学費 | 55,860 | 6.1 | |||
| 防衛関係費 | 47,903 | 5.2 | |||
| その他 | 111,376 | 12.1 | |||
| 合計 | 922,992 | 100.0 |
先の問題ではまず、一般会計の予算規模(当時約83兆円、2010年度は約92兆円)と最大の歳出項目(社会保障費)が問われています。その上で、予算審議の手順を選ぶようになっていますが、注目しておきたいのは問8です。この問いでは歳出にしめる「国債費」についての説明が求められています。
ふつうに「国債」といえば、国が発行する債券(一定の期間を経て貸したお金を受け取ることができることを保証した証書)のことです。簡単にいえば国が国民からする借金のことです。しかし、それだけでは「国債費」の説明としては不足です。
国債を発行して国が一時的に得る収入は、歳入項目では「公債金収入」とされます。これに対応するのが、歳出項目の「国債費」で、こちらは借金の元金に利子を加えた支払いをさしています。
この国の借金をめぐるほかの学校での出題例を、昨年の入試から見ておきましょう。
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(2010年 法政大学第二中学校)
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(2010年 大妻多摩中学校)
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(2010年 芝浦工業大学柏中学校)
国債費についてのほか、それを国債を発行する目的、その残高が増えることの問題点などが問われています。
これらからすると、「国債」あるいは「国債費」についてもしっかり説明できるようにしておきたいものです。
三番目に注目しておきたいテーマは「中国」です。中国については、日本の歴史における外交の分野でも数多く出題されてきていますが、ここでは歴史のことはとりあえず除いて現代中国のことで考えます。
現代の“躍進する中国”については、日本との関係に限っても次のようなことをあげることができます。
また、日本だけとの関係ではありませんが、次のこともおさえておきたいところです。
現代中国についての過去の出題例には、次のようなものがあります。

(2009年 早稲田中学校)
この問題では、中華人民共和国建国以来の事実上の唯一の政党である共産党、他民族国家ではあるものの13億の全人口中の9割をしめる漢族、ダライ・ラマを宗教的指導者とする少数民族であるチベット族などについての知識も問われていますが、2011年度入試では(4)の選択肢にあるような日本との貿易に関わることがらに注意しておきたいところです。下には中貿易に関わる表をあげておきます。
| 輸出相手国 | % | 輸入相手国 | % |
|---|---|---|---|
| 中国 | 18.9 | 中国 | 22.2 |
| アメリカ | 16.1 | アメリカ | 10.7 |
| 韓国 | 8.1 | オーストラリア | 6.3 |
| (台湾) | 6.3 | サウジアラビア | 5.3 |
| (香港) | 5.5 | アラブ首長国連邦 | 4.1 |
| タイ | 3.8 | 韓国 | 4.0 |
| シンガポール | 3.6 | インドネシア | 4.0 |
| ドイツ | 2.9 | 台湾 | 3.3 |
| 日本からの輸出 | % | 中国からの輸入 | % |
|---|---|---|---|
| 機械類 | 42.7 | 機械類 | 37.9 |
| うち集積回路 | 5.5 | うちコンピュータ | 7.7 |
| 電気回路用品 | 3.8 | 音響映像機器 | 5.8 |
| 鉄鋼 | 5.9 | 衣類 | 17.1 |
| 自動車部品 | 5.4 | がん具 | 3.3 |
| 有機化合物 | 5.4 | 金属製品 | 3.2 |
| プラスチック | 5.1 | はきもの | 2.6 |
最後にもう一つ注目しておきたいテーマが「沖縄」です。沖縄についても、日本列島の最南端に位置する特有の気候・産業や、琉球王国から沖縄県へ、さらに太平洋戦争における沖縄戦から日米安全保障条約の下での米軍基地問題まで、これまでにも多くの出題がされてきました。
2011年度入試で予想される普天間基地の移転問題についても、そうした沖縄県の地理的・歴史的な背景をふくめて取り上げられることが多いと思われます。そうした問題例を一つあげておきましょう。
(前略)
( B )元首相は「( A )の祖国復帰が実現しない限り,わが国の戦後は終わらない」と語り,( A )の本土復帰に尽力した。
言葉通りの国際法では「占領終了」をもって「終戦」とする見方もある。その論理から日本の真の終戦記念日は,( C )講和条約が発効した1952年4月28日とする説がある。
占領終了なら講和発効後も米軍統治下に置かれた( A )の本土復帰が実現した1972年5月15日が「真の終戦」との説すらある。
しかし( A )には復帰後も,復帰前と同じように「占領軍」だった米軍が駐留を続けている。
米軍統治も含め米軍駐留はこの国の「敗戦」の償いである。その償いとなる駐留米軍の過半をなぜ( A )が過重に背負い続けねばならないのか。
敗戦から64年を数えてなお( A )の県土面積の1割を外国軍隊が占拠し続けている。
戦争を始めたのは国である。しかし,戦争被害に対する国の補償は不十分なままだ。
敗戦の残滓,米軍駐留は戦争がなければなかったであろう。
米軍駐留は,講和条約が発効し,その後,( A )が本土復帰した後も「日本の防衛」のためという
日米安保条約の「大義」で正当化された。
有事には国民を守るはずの駐留米軍が,平時に毎年70件前後の犯罪で県民を苦しめ,多い年は100件を超える軍事演習・事故の危険が県民生活の安心と安寧を脅かし続けている。国土のわずか0.6%にすぎない( A )に在日米軍の専用施設の( D )%近くが集中し,安保の犠牲を強いている。
64年の歳月を経てなお「被害」を与え続けている戦争は,( A )にとってまだ「過去」になっていない。
(後略)
(2010年 公文国際学園中等部)
沖縄については下に近現代の略年表をあげておきますので、参考にしてください。
| 年代 | できごと |
|---|---|
| 1872(明治5) | 日本政府が琉球王国を琉球藩とする。 |
| 1879(明治12) | 琉球藩および琉球王国を廃して沖縄県を置く。 |
| 1945(昭和20) | アメリカ軍が沖縄の島々に上陸、多数の戦死者を出す。 日本の敗戦で沖縄全島がアメリカ軍の占領下に置かれる。 |
| 1951(昭和26) | サンフランシスコ平和条約が結ばれ日本は主権を回復するが、 沖縄は引き続きアメリカによって統治されることになる。 |
| 1972(昭和47) | 沖縄が日本に返還されるが、アメリカ軍基地はそのまま残る。 |
| 1975(昭和50) | 沖縄海洋博覧会が開かれる。 |
| 1992(平成4) | 首里城の正殿(せいでん)が復元される。 |
| 2000(平成12) | 沖縄で先進国首脳会議(サミット)が開かれる。 |
