
日能研教務部算数科 真藤 啓
「算数エッセー『算数学入門』」です。
偏差値50位の人が一回読むだけでたちまち80になってしまう、……というものが書けないかなあと思いながら書いていこうと思います。また、次のそれぞれの算数エッセーのうち、問題や解説など、紙面で書ききれなくなったことの補足も続けたいと思います。けれども、毎月それらの文を読まなくても本稿が読めるようにも心がけています。受験算数の根っこの部分とか背景といったものがしっかりわかるようにすることを漠然と目標にして、思いつくまま書いています。
『キッズレーダー』7月号(日能研) 算数エッセー「おいしい算数 スージーちゃん魔女になる」
『学校選択』7月号(全国中学入試センター) 算数エッセー「算数好きのきっかけをもとめて フラフープのとまどい」
『キッズレーダー』ではさいころの目について扱うことにしました。
「さいころの目は上の目と下の目を合わせるといつも7になる」ということを、スージーちゃんはおばあさんやお母さんから聞きますが、そのときは言われた意味がわかりませんでした。その後、自分でその意味がわかったというお話でした。
今後も、やさしいけれども重要なことを幼い子が自分で気づくというようなお話を書いていこうかと思います。
次回は、この知識を使った中学入試問題も扱う予定ですが、その問題を解くことが目的ではありません。中学入試にもしっかりつながっていることを示したいということです。
また、「キッズレーダー」は9月号から、小さな版になる予定です。より読みやすくなるように原稿の書き方もくふうしたいと思っています。よろしくお願いします。
半径1cmで中心角60度の扇形を4つを重ね合わせて、図1のように、正方形を膨らませたような図を作ります。円の6等分を4つ重ね合わせたような形です。

半径1cmで中心角90度の扇形を4つを重ね合わせて、図1のように、真中に正方形をふくらませたような図を作ります。円を4等分して4つ重ね合わせたような形です。

さて、図3の斜線部分のように、この「ふくらんだ正方形の差」の面積を求めてみましょう。

図3を2色に塗り分けると、次のように合同な4つの「ゆがんだ扇形」になります。

この「ゆがんだ扇形」1つ分の面積は半径1cmで中心角30度の扇形と等しくなります。ふくらんだ弓型部分をへこんだ部分に埋めると、中心角30度の扇形になります。

この4倍を求めればよいので、
1×1×3.14÷12×4=
=
(cm2)
答え
cm2
問題
![[問題] 2010年 開智中先端A4番](../../../images/column/essay/sansu/10_m07/1007_0301.gif)
(2010年 開智中先端A4番)
開智中先端A4番(1) 着眼点
(1) 円を移動するとみると難しいので、円に内接する正六角形を考え、正六角形を回転させると考えると、

点Aを中心に60度回転させます。

さらに点Aを中心に60度回転させます。

ここで、正六角形は点Bでつかえてもう回れません。そこで、点Bを中心に120度回転させる。

実際には、正六角形の外接円が回転します。


左側は半径が2cmで中心角120度の扇形の弧になり、右側も半径が2cmで中心角120度の扇形の弧になり、上側は半径が1cmで中心角60度の扇形の弧になり、下側も半径が1cmで中心角60度の扇形の弧になります。
ただし、真中にダブルの弓型の穴が開きますから上下から削って埋め込みます。

ここまでくれば、ちょうど半径2cm、中心角120の扇形2個分の形になることがわかります。

解法
図のように半径2cm、中心角120の扇形2個分の形になる。
![[解法] 2010年 開智中先端A4番(1)](../../../images/column/essay/sansu/10_m07/1007_0310.gif)
2×2×3.14×
×2
=25.12×
=
(cm2)
答え
cm2
開智中先端A4番(2) 着眼点
円を移動するとみると難しいので、円に内接する正六角形を考え、正六角形と一緒に円を回転させると考えると、

となります。

解法
![[解法] 2010年 開智中先端A4番(2)](../../../images/column/essay/sansu/10_m07/1007_0403.gif)
2×2×3.14×
×3=2×3.14=6.28(cm2)
答え 6.28cm2
この形、何に見えますか、おにぎりですね。おにぎりなら中は梅干しでしょうか。実はこの中の物の形は「ルーローの三角形」といいますが、日本の工場では「桃の実形」といって、円形のものを作るときに、ときどき紛れ込んでできる形だそうです。
「もものみがた」と言うと、「もののみごと」と聞き間違えそうですが、失敗作なのだそうです。ロータリーエンジンは「ルーローの三角形」になっています。
開智中先端A4番(3) 着眼点
これも円を移動するとみると考えにくいと思うので、円に内接する正六角形を考え、正六角形を回転させると考えると、

となります。

これは、つぎのような形になります。

外側の線は、アとイが交互に並んでいるような形になります。アは半径1cm中心角60度の扇形、イは半径2cm中心角30度の扇形から半径1cm中心角30度の扇形を除いた形です。

というわけで、次のような面積なら、

(1×1×3.14÷6+2×2×3.14÷12-1×1×3.14÷12)×4
=(2+3)÷12×3.14×4
=5÷3×3.14(cm2)
と求められますが、中の穴は、

ではなく、

です。
だから、

この差の分を引かなければなりません。
第1節より、この差は、1×1×3.14÷12×4=3.14÷3です。
よって求める答えは、
解法
5÷3×3.14-3.14÷3
=4÷3×3.14
=
(cm2)
答え
cm2
開智中先端Aの4番でつい字数を使ってしまいましたが、「ふくらんだ四角形」の面積をあらかじめ知っている人なら、もう少し、雑な説明でもピンとくるかもしれません。
いまさらですが、ここで4つの四分円の重なりである「ふくらんだ四角形」の面積を求めてみましょう。もともとは40年くらい前の東京大学の問題だということを聞いたことがあります。中学入試では、最近20年間に7題ほど見たことがあります。10題強くらいは出ているのではないでしょうか。私立中学の校内の期末テストにも時折出ているようです。ここでは、出典を「古典(過年度 東京大学入試問題)」という表示とします。要するに、私には出題年度が特定できません。
問題
次の図は半径2cm中心角90度の扇形を4個重ねたものです。斜線部分の面積を求めなさい。ただし、1辺の長さが2cmの正三角形の高さを1.73cmとします。答えは四捨五入で小数第2位まで求めなさい。
古典(過年度 東京大学入試問題)
解法1
2×1.73÷2+2×2×3.14÷12-2×2×3.14÷6
=1.73-3.14÷3
2×2-(1.73-3.14÷3)×4
=4-(6.92-4.19)
=1.27(cm2)
解法2
2×2×3.14÷12-(1.73-1)×1÷2×2
=3.14÷3-0.73≒0.32
0.32×4=1.28(cm2)
答え 1.27cm2 (1.28cm2)
前節の問題の類題では、例えば、フェリス女学院中(1999年)に出ています。ルート3にあたる値が間接的に求められるようになっています。
問題
(1999年 フェリス女学院中8番)
解法
9.6×2÷12=1.6 12÷2-1.6=4.4
12×12×3.14÷12-4.4×6÷2×2=37.68-26.4=11.28
11.28×4=45.12(cm2)
答え 45.12cm2
付記
この問題に限らず、フェリス女学院中では、ルート3の近似値が間接的に求められる問題が時々出ます。近年では、2000年、2003年、2008年、2009年に出ています。
ルート3とは、1辺の長さが2の正三角形の高さにあたります。およそ、1.73です。
人並みにおごれや(1.7320508)という暗記方法が知られています。作問者がルート3の近似値を使って作っているということであって、こうした値を覚えていなくても解けるようにはなっています。
参考類題1![[問題] 2000年 フェリス女学院中5番](../../../images/column/essay/sansu/10_m07/1007_0704.gif)
(2000年 フェリス女学院中5番)
参考類題2![[問題] 2003年 フェリス女学院中4番](../../../images/column/essay/sansu/10_m07/1007_0705.gif)
(2003年 フェリス女学院中4番)
参考類題3
![[問題] 2008年 フェリス女学院中2番](../../../images/column/essay/sansu/10_m07/1007_0706.gif)
(2008年 フェリス女学院中2番)
参考類題4![[問題] 2009年 フェリス女学院中1番(5)](../../../images/column/essay/sansu/10_m07/1007_0707.gif)
(2009年 フェリス女学院中1番(5))
フェリス女学院中は神奈川の女子中で最も人気のある中学の1つです。「目につく形は近似値でもいいから求めたいのだという少女に入学してもらいたいものだ」と問題は言っています。
大学入試問題研究は今回は、「数列の和の公式」について九州大学文系4番の問題を考えてみましょう。
(2010年 九州大学文系4番)
解法
(1) これは、三角数(初項1、公差1の等差数列)だから、
(n+1)×n÷2=
×n×(n+1)
(2) たとえば、n=5のときは、次のようになる。
![[解法] 2010年 九州大学文系4番](../../../images/column/essay/sansu/10_m07/1007_0801.gif)
(n×2+1)×(1+2+……+n)÷3
=(n×2+1)×
×n×(n+1)÷3
= ×n×(n+1)×(n×2+1)
別解
![[解法] 2010年 九州大学文系4番](../../../images/column/essay/sansu/10_m07/1007_0802.gif)
(n×2+1)×(1+2+……+n)÷3
=(n×2+1)×
×n×(n+1)÷3
=
×n×(n+1)×(n×2+1)
(3) たとえば、n=5のときは、次のようになる。
![[解法] 2010年 九州大学文系4番](../../../images/column/essay/sansu/10_m07/1007_0803.gif)
(1+2+……+n)×(1+2+……+n)
=
×n×(n+1)×
×n×(n+1)
=
×n2×(n+1)2
答え
(1)
×n×(n+1)
(2)
×n×(n+1)×(n×2+1)
(3)
×n2×(n+1)2
注意
九州大学では解法を公表していません。この解法は、もし小学生が解くとしたらこう解けるということを示したものであり、同学受験生にお勧めするものではありません。この3つの公式は、高校のどの教科書にも載っているもので、典型的な「教科書程度の問題」です。おそらく、同学合格者は100パーセント解けたのではないかと思います。
中学校・高校の文字式では、ふつうかけ算の記号「×」を省略しますが、本稿では省略しません。
A×A×Aのように同じ数を3個かけ合わせたものをA3と書き、「Aの3乗」といいます。一般にAをn個かけ算したものを、Anと書き、「Aのn乗」と読みます。本稿では、この表記は使います。
中学入試では、別な表記で出されることも多いです。
A3の3など、数を何個かけ合わせたかを表す右肩に小さく書く数を「累乗(るいじょう)の指数(しすう)」とか単に「指数」と言いますが、このことばは覚えなくても大丈夫です。
なお、「n個かけ合わせる」ことを「n回かける」という表現で出ることもあります。「n回かける」という表現は広く使われていますが、×の記号の個数は(n-1)個なので、日能研の指導では「n個かけ合わせる」という表現を使います。
ただし、高校入試、大学入試のほか、公務員試験など就職試験に至るまで、「n回かける」という表現が多いので知っておいたほうがよいでしょう。
問題
(2010年 春日部共栄第1回6番)
解法
答え (1) 9 (2) 3 (3) 5個
付記
この問題は、小学生にはかなりややこしかったのではないかと思われます。
晃華学園中は日能研と同じく「n個かけ合わせる」という表現を使っています。小学生にはこの方がわかりやすいかと思います。累乗の指数は、1997年にはそのままの表記で使っています。
参考類題
(1997年 晃華学園中)
略解
答え
(1) (ア) a6 (イ) a6
(2) (ア) 1 (イ) 3 (ウ) 1、3、5、7、9 (エ) 1、3、9
参考類題
![[問題] 2005年 晃華学園中](../../../images/column/essay/sansu/10_m07/1007_0901.gif)
(2005年 晃華学園中)
略解
(2) 2×2÷2=2 2+4+8+……+128=256-2=254
答え (1) 7 (2) 254cm2
ところで、今月号の「学校選択」に次のような日能研の塾内テストが載っていました。この問題はなかなか軽妙な問題だと思います。これは、私の書いたものではありませんが、解説がありませんでしたので、ここでは略解を載せておきたいと思います。
問題
これを逆さにして図3のように置くと、水面は10cm高くなりました。
これを逆さにして図5のように置くと、水面は何cm高くなりますか。(第17回 6年カリキュラムテスト(2009年7月18日実施))
略解![[略解] 第17回 6年カリキュラムテスト(2009年7月18日実施)](../../../images/column/essay/sansu/10_m07/1007_1004.gif)
答え (1) 18cm (2)
cm
7月12日発売の『数学セミナー8月号(日本評論社)』で、日能研の広告「シカクいアタマをマルくする。」に関連する記事が載ります。大学院の先生から見た中学入試という素晴らしい記事ですので、ぜひご覧になってください。
では、今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
