
日能研教務部算数科 真藤 啓
本稿は、次のそれぞれの算数エッセーのうち、問題や解説など、紙面で書ききれなくなったことを補足するために、開設しています。タイトルは『進学レーダー』のものとそろえ、WEB掲載のタイミングも『進学レーダー』の発行日に連動して毎月15日に行います。
けれども、毎月それらの文を読まなくても本稿が読めるようにも心がけています。受験算数の根っこの部分とか背景といったものがしっかりわかるようにすることを漠然と目標にして、思いつくまま書いています。
『進学レーダー』2月号(みくに出版) 算数エッセー「算数好きになるくすり ナポレオンの定理」
『キッズレーダー』2月号(日能研) 算数エッセー「おいしい算数 金種の組合せ」
『学校選択』2月号(全国中学入試センター) 算数エッセー「算数好きのきっかけをもとめて 分数の大きさの図解」
本稿2008年8月号に「カタラン数」について述べましたが、中学入試には頻繁に出てくるようになっていながら、小学生(中学受験生)向けに書かれたものは皆無の状態です。中学入試にこれまで出ていたものや近未来に出そうな問題が解けるようにするため、関連ありそうなところを大学生(や院生)向けのものなどを参考に書きました。いくつかのものを参考にさせていただきましたが、2008年に『数学セミナー』に連載なさっていた岡山大学大学院自然科学研究科教授の山田裕史(やまだひろふみ)先生の『組合せ論逍遙』が特にわかりやすく書かれていましたので大いに参考にさせていただきました。先生は連載されたものに新しいことを加え、タイトルも『組合せ論プロムナード』となって日本評論社から発行されました。
私は小学生向けということで書きましたので、本稿を見て、難しいという方には難しいかもしれませんが、易しすぎる、もっとちゃんと学びたいという方には、レベルは専門家向けの本物の数学の本ですが、分かりやすく楽しく、やさしい配慮のある本ですので、中学入試にも出る最近話題の「カタラン数」や「組合せ」についてしっかり読んでみたい方にお勧めします。
『組合せ論プロムナード』
黄金比やカタラン数といった初等的な話題から最先端の研究内容まで、
数学研究の息吹が伝わる組合せ論への“変格的”入門書。
http://www.nippyo.co.jp/book/5188.html
また、先生の小学時代のことについてご寄稿いただきましたので、次節でご紹介します。
小学生時代のこと
1963年4月に阿佐ヶ谷の杉並第6小学校に入学しました。1年生のときの担任は菊池進先生。幼稚園の時に比べると「先生」という感じで,教室では身が引き締まる想いがしました。
2学期になって三鷹に移りました。三鷹第一小学校。当時の三鷹は相当の田舎でクラスには農家の子どもが多かった。転校生ということでなかなか馴染めず,一時は登校拒否みたいになり,父親が先生に相談する,という事態にまでなりました。後年,大学に就職したとき,母親が「あんなに学校が嫌いだったのに,ずっと学校に行くことになったのねー」と感慨深げに話したのを覚えています。
三鷹の学校には結局,6年間通いました。特別な劣等生ということはありませんでしたが,別段よくできる児童というわけでもなく,めだたない普通の子どもだったと思います。勉強のよくできる児童が学期毎の「学級委員」に選ばれたりするのですが,私は毎年,2学期の学級委員でした。つまり常に2位に甘んじていたわけです。得意科目は何か,と聞かれたら,算数と音楽と答えていましたね。ピアノを習っていたこともあり,音楽は好きでした。4年生のときだったかにステレオを買ってもらい,クラシックに目覚めました。「運命・未完成」のレコードに始まり,現在に至っています。
一方,算数については父親が毎週日曜日,午後に2時間ほど教える,という習慣になっていました。2年生の頃から中学校1年生までずっと続いたと記憶しています。何故かウチには1メートル四方ぐらいの黒板があり,それを使っての「講義」だったのです。父は電気系統の技術者でした,息子を科学畑に進ませたいと思い,そのために大切な基礎である算数,数学を教えたのだと思います。小学校の算数とはいえ,理解するだけでなく教えるためにはかなりの準備が必要になるはずですが,忙しい仕事の合間に人知れず予習をしていたのかと思うと,頭が下がります。
学校で習う算数よりもはるかに進んだ講義を毎週受けることができて,当時は必ずしも楽しいばかりではなかったのですが,自分は幸運だったなあと思います。ここで「はるかに進んだ」というのは進度という意味ではありません。一つの公式を取ってみても,そのいろいろな導出法,使い方等々,話を発展させることが可能です。父はそういうことを理解させようと思って準備し,毎週の講義に臨んだのではないでしょうか。
6年生のときだったか,ある日曜日に友達が一人遊びにきました。ところが父は私たち2人を相手にいつものように算数を教え始めました。そして私は何の疑問ももたずに,その時間を過ごしたのですが,友達にとっては驚天動地(きょうてんどうち)だったみたいで,次の日からしばらく「ヤマダの親父は恐るべき教育パパだ」という噂を流してくれました。まあ,実際そうだったのかも知れないですね。
いつしか算数それ自体の魅力に取り付かれるようになっていました。小学生ですから,数学(算数)を研究する,という職業があるなんて知る由もありません。将来何になるの?とよく聞かれましたが,算数の学者になる,などと答えるわけもなく,技術者に,とかなんとかごまかしていました。矢野健太郎という数学者の書いたものを読むようになったのはもう少しあとになってからのことです。中学生の頃だったかしら。そうして大学の先生というのは数学の研究をしているんだ,ということがおぼろげながらわかってきたのです。
理科も大事だからしっかりと勉強して欲しいという父親の願いとは裏腹に,全然興味を示しませんでした。算数,数学一筋でした。大学で数学科は大抵「理学部」とか「理工学部」に属しています。ところが毎年,数学科の新入生をみていると,いわゆる「理系人間」ではなく,理科はからっきしだめだけれど,数学だけは好きだしよくできる,という私のような人間が少なからずいます。私たちが理学部の中でも異端である,と感じることは多いですね。数学者というのは「数学的自然」を追求していて,それがいわゆる「自然科学」であるかどうかには無頓着なんだと思います。
うまいたとえ話ではありませんが,10人の職人が10日間働いて家が建つとしましょう。比例,すなわち線型関係で考えれば,職人が100人いれば1日で家が建ちます。2400人で1時間。何万人もいれば……となるわけですが,「1秒や2秒で家が建つはずがない。」というのが常識的な考え方です。でも数学では何秒という答えが出ても変ではない。こういうSF的な世界に生きているから,時として「現実離れ」と言われてしまうのでしょう。「数学なんて役に立たない」と言われる所以(ゆえん)です。上の問題に関して言えば「比例」を現実の問題に当てはめるところが間違っているわけで,数学に責任はない。大袈裟(おおげさ)に言えば,学問は「役に立つかどうか」とは無関係な文化であってしかるべきです。なーんてね,大上段に振りかぶった議論をする場ではないですよね。
友人の数学者は例外なく子どもの頃から本好き,読書好きです。私自身は科学の本よりも小説や伝記などが好きでした。本をたくさん読むことにより,日本語,もっと一般に言葉というものに対する感覚が身に付いたのだと思います。算数,数学は計算問題ばかりでなく,証明を書くという作業も求められます。自分の理解を他人に分からせるように文章を書くことの重要性は,数学を学ぶことによっても認識されるでしょう。そしてその根本は読書によって培われるのです。「すべてはロゴスから。」私がなにか伝えられるとすれば,このことに尽きます。
山田裕史(やまだひろふみ)先生
1956年東京生まれ.
早稲田大学卒業,広島大学大学院に8年間通って学位取得.
30歳で琉球大学助手,その後,東京都立大学助手,助教授,
北海道大学助教授を経て,現在,岡山大学教授.
数学上の業績はともかく,沖縄と北海道の大学を経験した希有な数学者として有名.
専門は?と聞かれたら「表現論」と答えることにしている.
この紹介文も山田先生に書いていただいたままをお載せいたしました。
「こんなことに気づいてから算数ができるようになった」という「らくらく算数勉強法」を期待していましたが、やはりよい指導者についてまじめに勉強するしかないようですね。
「表現論」というのは、昔は現代代数学とか抽象代数学とか言われた群論・環論・体論など代数系に関する研究だと思います。
こんな顔だってできます。
青春ドラマの主役のような好男子の山田先生に、アインシュタインに負けない「いい顔」をしていただきました。というか日付を見ると2009年7月6日(6月7日?)となっていますので、日頃からこういう「いい顔」をする趣味がおありなのかもしれません。(まさか本当に載せるとは思わなかったと思いますが。)

どっちがいい顔?!(左はアインシュタイン 右が山田先生)
ナポレオンの定理について考えてみたいと思ったのですが、「学校選択」ではスペース的に無理で、「キッズレーダー」にはレベルが高すぎるので、「進学レーダー」に書くことにしました。「進学レーダー」では、今年度、意識的に直接中学入試問題を扱っていたのでちょっと変則かとも思いましたが。
ナポレオン・ボナパルト(ナポレオンI世)については、映画もたくさん作られていますので、割合よく知られていると思います。
書くために、少し調べてみたのですが、どうしても武力肯定というか戦争肯定のような面が付きまといますが、そういう面を極力排除して、純粋に算数的な面だけについて考えてみたいと思いました。
ナポレオンが生まれたのは、コルシカ島で、イタリアが長靴だとしたら、ひざこぞうの前の位置に浮かんでいる島です。
ところで、「ナポレオンの定理」はナポレオンが考えたのではない、のではないかとする文献がむしろ多いのですが、十分時間をかければあまり高度な数学的知識がなくても、到達できると考えられますので、私は別にナポレオンが考えたとしてもおかしくないと思っています。そこで、ナポレオンが「ナポレオンの定理」を実際に発見したという視点で、どのような順番で考えたか追体験をしてみたいと思ったわけです。中学入試によく出る合同や相似に関する「勘」が養われると思います。
付記 数学ができない国は滅びる
ナポレオンは数学が大好きで、「一国の盛衰はその国の数学の消長にある」と言っていました。
と書きましたが、この部分の出典は『数のユーモア(著 吉岡修一郎 学生社)』です。この本は「数のライブラリイ」シリーズの第1巻で、このシリーズには、筆者の吉岡氏が、ほかのどの本にも書いていないことをたくさん書いています。調べられた限りのことはすべてちゃんと出典がありましたので、おそらくこれも本当に出典があるものと信じています。ただし、この言葉は私が調べた限りではほかには見つかりませんでした。
吉岡修一郎(よしおかしゅういちろう)
大正14年東北大学理学部物理学科卒
昭和9年九州大学文学部哲学科卒
金沢高等工業学校教授
九州大学付属高岡工業専門学校教授
久留米大学教授
九州産業大学経営学部長
医学博士
数学、科学史、心理学、論理学、物理学、医学、などの著作・翻訳多数
(同書の奥付より)
ナポレオンは、1つの頂点をくっつけた2つの正三角形をかきました。
そうして、離れている2組の頂点を太線で結びました。この2本の線分は、合同な2つの三角形の対応辺にあたるので同じ長さであることに気付きます。このことはよく知られている合同の応用問題です。

もとにする2つの正三角形の位置をいろいろ回転させても、できる2本の線分は、同じ長さであることに気づきます。

また、正三角形どうしでなくても、例えば正方形同どうしでも

さらに、正五角形どうしでも

同様なことがいえます。
そうして、正多角形で言えるというよりも、正多角形の一部の二等辺三角形の部分で考えていることに気づきます。

結局、正多角形でなくても、相似な二等辺三角形でいつも言えることがわかり、その等長の線分どうしは二等辺三角形の共通な頂角分だけ回転していることも分かります。

ナポレオンは、2つの正三角形の場合、この2本の線分は長さが等しいだけではなく60度の角度で交わっていることに気づきました。
ナポレオンは、このとき正三角形を3個考えると、3本の太線は正三角形を作って交わるだろうと予想しました。それで、早速かいてみると、
「あれあれ、……」
3本の線は、1点で交わってしまいました。いろいろ図を変えても同じことでした。どうやら、いつも1点で交わるようだと思いました。1点で交わるということの証明を考えましたがうまく思い浮かびませんでした。
3本の線分は60度で交わり、長さは等しく1点で交わる。
ところで、3個の正三角形をいろいろと変えてかいてみると、どうもいつも3つの中心を頂点とする三角形は正三角形になるような気がしました。
「そんなばかな」
そんなことは今まで聞いたことがありませんでした。

これは本当だろうか、いつでも言えることなのだろうか。証明できるだろうか。ナポレオンは来る日も来る日も、考え続けました。しかし、うまく証明できませんでした。
「これは私には無理なのだろうか」と思って、苦笑しました。ふと「私の辞書には不可能という文字はない」と自分で言っていたことを思い出したからです。
そして、その次の日のこと、こんどは「2つの正三角形の共有点からそれぞれの中心を結ぶ辺を使う三角形」など相似な三角形の組み合わせを考えていると、

「2つの正三角形の一辺ずつを使う三角形」と「頂点から中心を結んだ線を結んだ線でできる三角形」が相似であることに気づきました。

60度ずつ回転している三本の線分をそれぞれ30度ずつ回転させても、それらは60度ずつ回転している関係になるから正三角形ができるのでした。ナポレオンはこれまで、こんな定理は見たことも聞いたこともありませんでしたので、とても気持ちが高ぶりました。
ナポレオンは喜びに震えながら「私の辞書には不可能という文字はない」と言いました。
このときから、「ナポレオンの定理」ができたのでした。

ナポレオンは、角度から考えて正三角形であることを導いたのでしたが、相似比が等しいことから、辺の長さから考えても正三角形であることを導びけることに気づきました。
また、三角形に外接する3つの正三角形であるときに言えるばかりか、三角形に内接する3つの正三角形の中心もまた正三角形になることに気づきました。

同じように導けますので、自分でやってみるとよいと思いますが、一応解法の方針を書いておきます。見ないで解いてみると力がつくと思います。
まず、下の図の赤線の長さは等しい。

なぜなら、合同な2つの三角形の対応辺になるから。

そのままでははなれていますが、延長すると1点で交わります。

相似な三角形を考えると、相似比が等しいので、この小さな三角形は正三角形である。

ナポレオンは、わかってくると急にその周辺もわかってきて、とてもうれしい気持ちになりました。
付記 「ナポレオンの定理」は、ナポレオンが考えた?
はじめにも述べましたように、私は、「ナポレオンの定理」は、やはり、ナポレオンが考えたのではないかと思います。直観にはそぐわないような斬新な定理で、すごいなとは思いますが、高度な知識は必要としないので、粘り強く考えればだれでも思いつくことがありそうな定理だと思います。
「ナポレオンの定理」そのものはまだ受験算数には出ていません。ただ、これを考えていくと、「合同」「相似」に関する、「図形どうしの関連」などを気づかせてくれます。
「ナポレオンの定理」はよく知られていて、WEBでも多く紹介されています。ただし、「進学レーダー」にも書いたように、ナポレオンがこのようにして考えついたのだろうという記述は、すべて真藤啓の空想です。しかし、ナポレオンが「ナポレオンの定理」を発見したとすれば、大きく外れてはいないように思います。
というよりも、「読むことは再創造なのだ」と思います。ナポレオンが実際にどう考えて「ナポレオンの定理」を発見したかというよりも、読者が、これを読んで、「ナポレオンの定理を再発見する」参考にしていただきたいと思うのです。
「間の分数」を見つける問題は分数を格子点に対応させるという解法が近年知られています。
往年、奈良学園中などで出たほか、2008年のお茶の水女子大などの大学入試問題にも出ましたが、2009年大宮開成中で出た問題は、この解法を知らないとちょっと難しいのではないでしょうか。
間の分数
分数を座標の点に対応させてみましょう。分母を横軸、分子を縦軸にとると、
,
,
,
,
,……など
と同じ大きさの分数が一直線状に並ぶことが分かります。
値の同じ大きさの分数はいつも同じ直線になり、値の大きい分数がつくる直線ほど傾きが大きくなります。

練習
と
の間の分数を考えます。分母の最も小さい分数を求めなさい。また、分子と分母の和が4番目に小さい分数を求めなさい。
(本稿のためのオリジナル)
略解
次のような図をかくと、
分母の最も小さい分数は
、また、分子と分母の和が4番目に小さい分数は
と読み取れます。
答え
、![]()
問題
ある規則にしたがって,数が55個並んでいます。
![]()
次の各問いに答えなさい。
(2009年 大宮開成中5番)
略解
図から、55個すべての分数の大小関係が一望できる。
答え (1) 5個 (2)![]()
「間の分数」に着眼して2の平方根の近似値を求めるフローチャートが2008年灘中に出ましたが、また、同年お茶の水女子大全学部でも、間の分数を見つける式がでました。
2008年10月号4. 2の平方根を求めるフローチャート (2008年 灘中1日目「7番」)
2008年12月号9. 間の分数 (2008年 お茶の水女子大学全学部1番)
2009年には、学習院大学法学部で出ました。
問題
(2009年 学習院大学法学部)
解説
すでに本稿の読者には解法は不要でしょう。
正の数a、b、c、dが不等式
≦
を満たすとき、
≦
≦
が成り立つのであるから、
そして、
≦
が成り立つならば、
≦
≦
≦![]()
すなわち、
≦
≦![]()
である、と考えてもいいし、または、そもそも、
=
であるから
=
≦
が成り立てば、
≦
≦
は、いわば自明でしょう。
いま、大学入試で活火山的テーマですが、小学生でも理解できますので、そうして知らないと、とても時間がかかりますので、分数は格子点に対応でき、傾きが大きいほど値が大きいということを押さえておきたいところです。
また、「傾き」は、正比例の「比例定数」であると関連づけてみるとよりわかりやすいでしょう。
なお、学習院大学文学部の数学の1番は次のような問題です。剰余系の簡単な問題ですが、こうした指数がらみの問題は小学生には相当難しく感じられるでしょう。一応解いてみます。
問題
(2009年 学習院大学文学部1番)
解法
26n-5=26n-6×2=64n-6×2≡9n-6×2 (法11) です。また、32n=9nだから、
与式=26n-5+32n=9n-1×2+9n=9n-1×(2+9)≡0 (法11)である。
よって、示された。
次に2009年早稲田大学人間科の1番です。これは、書き直さずそのまま小学生に出しても解ける人が多いと思います。
問題
【問1】 正の奇数を次のような群に分けるとき,777は第
群の第
番目にあたる。
(1),(3,5),(7,9,11),(13,15,17,19),・・・
(2009年 早稲田大学人間科1番)
解法
(777+1)÷2=389だから、777は389番目の奇数である。
第20群の最後の数は20×21÷2=210 (番目の奇数)
第30群の最後の数は30×31÷2=467 (番目の奇数)
第25群の最後の数は25×26÷2=325 (番目の奇数)
385-325=50 (番目)
50-26=24なので、27群の24番目
答え ア 27 イ 24
【注意】
この解法は小学生が解くとしたらということで書いたもので、大学受験生にこのまま書くことをお勧めするものではありません。中学受験によく出る問題で、やや数が大きいという印象です。中学受験生でも結構できる人が多いと思います。
中国の算数競技の問題を「奥数」といいます。小学二年生向けの奥数の問題を解いてみましょう。
千円が3枚二千円が2枚
3枚の十元と2枚の二十元で全部で何種類の金額を作れますか?
日本の金種に置き換えると、「千円札が3枚、二千円が2枚あります。これを組み合わせると何通りの金額ができますか」ということになります。
ゆっくり、一つひとつ、図などをかきながら考えたりしていくと誰でも到達できるでしょう。いったん分かると問題全体のようすが分かり、樹形図や表で表して考えると便利なことに気づくでしょう。
大きい方の金額について、場合分けをします。千円と二千円では二千円が大きいので、二千円が2枚、1枚、0枚について、次のように表を作ってダブリと0円を消します。

1000円から7000円までの7通りあります。
等積変形
この問題は「千円札が1枚、二千円が3枚あります。これを組み合わせると何通りの金額ができますか」という問題に還元しても同じ7通りという答えが出ます。

平面図形の問題で、等積変形という解法があります。それは、与えられた図形の面積を問われたときに、面積を変えないまま形を変形して解く解法です。文章題であっても、同じようにいわば広い意味の「等積変形」が使えるわけです。文章題では何が問われているか、そのときに、何が異なり、何が同じ(と見なせる)かということが重要です。「算数・数学の問題を解く」ということは「問題を答えに等積変形する」ことであるという気がします。
もう一度、初めの表で、同じ金額についてしるしをつけてみますと、「二千円分」を、二千円札1枚で払うのと、千円札2枚で払うのかがダブっていることが分かります。


二進法との関連
ところで、この問題では、お金を全部使えば金額は七千円になります。これで上限がわかるわけです。あとは、、千円から千円きざみで七千円まで作ることができるかどうかということになります。
そこで、この問題をもう少し不便にして、千円札1枚、二千円札1枚、四千円札1枚の合計3枚の場合はどうでしょうか。
そうすると、二進数と関連が浮かび上がってきます。千円、二千円、四千円の組を作って、これを組み合わせると、千円から千円きざみで七千円まで作ることができます。
ですから、たとえば、千円札2枚をくっつけて二千円とし、二千円2枚をくっつけて四千円として、千円・二千円・四千円の三つの組合せで考えてもよいのです。
「不便にして」と言いましたが、「同じものがダブらないようにして」という意味であり、これによりダブりが消せるので「便利に」なります。そうしたことを自分で気がつくと楽しいことです。問題を解いたとき、単に答えが出たらよいと、次々に解いていくという試験のときと同じような学習ではせっかく問題が持つ意図を見逃してしまいます。

問題を解いたときに、ほかの方法はないか、とか、これはどういう問題につながるのかとかを少し気にとめてみると、何かに気づけるようになります。すると学びが主体的になり楽しくなります。
難しい複合問題を解きながら、こうしたことに気づく人もいますが、人によっては複合問題で止まってしまう人もいます。そういうことを防ぐには、簡単な問題を解くときにもいろいろ考えを巡らせるようにするとよいと思います。
正三角形マスを並べたときに内在する平行四辺形の面積について述べたいと思います。
その前に、これまで書いてきたことを前提としたいのですが、あちこちさかのぼらなくとも済むように、改めて必要なことを振り返ってまとめてみます。
算数学入門1 能動的に読む
ところで、『伝説の国語教師』として知られる橋本武(97歳)氏のことが、NHK総合テレビの『ザ・コーチ 人生ノ教科書』という番組で紹介されていました。
同番組は、スポーツや芸術や学問など、さまざまな分野で優れた人材を育ててきた名指導者たちの教えを通して、子育てやコミュニケーションのヒントを探る番組だということです。
神戸の中高一貫校、灘中学・灘高校で50年間教壇に立ち、かつては無名だった同校を、私立としては初めて東大合格者数日本一に押し上げた橋本氏の教育実践について放送されていました。
橋本氏の授業はよくある受験勉強とは全く異なるもので、テキストは中学の3年間かけて中勘助の小説「銀の匙(さじ)」1冊でした。そのほかには、毎月1冊の読書感想文の提出を課しました。授業は一字一句にこだわり徹底的に脱線しました。こうした実践は1冊を何十冊分にも相当させるものだと思います。いや、というよりも本をしっかり読むために読める自分を作り上げることだと思います。本を読むときにはわからないところはついつい見当をつけてとばして読みますが、そうして、子どものころは、そういう部分が特に多いと思いますが、わからないことがあるときに徹底的に調べてみる、その調べ方を生徒に見せる、見せるというよりも、生徒にも参加させる、そうすることにより、読書が受身ではなく能動的なものになります。すると、曇りガラスの向こうに見えていた作者の主張が透明感を帯びて見えてくることでしょう。
生徒にしっかりした読書力が涵養(かんよう)されます。身についた読書力は、おのずと課題読書感想文に反映されるでしょう。読むということは再創造だと確認させてくれます。
6年間持ち上がりの灘中高だからこそできたことでしょう。はたして、6年後大量に東大合格へと導いたことにより、橋本氏の教育実践と灘高校は全国に注目されるようになりました。
2009年10月12日 「横道にそれてもいいんだ~伝説の国語教師橋本式~」
http://www.nhk.or.jp/tamago/program/20091013_doc.html#
進学塾では内容のノルマが決まっていますし、また、生徒のクラス移動などもあり、講師が勝手に3年間1冊の小説を読む、などという授業はできません。この「算数エッセー」はカリキュラムとは関係はなく、読ませる強制力もないのであちこちと脱線していますが、結果的に橋本氏の授業に通じるものを感じてしまいました。
さて、今回は「組合せ」の超・発展問題に取り組んでみましょう。こうなると「算数」というより「算数学」といった感じに受け止められるかもしれません。橋本氏ではありませんが、受動的にではなく、ちょっとでもよいから能動的に読んでほしいと思います。
まず、この節では予備知識というか、これまでの振り返りをしてみましょう。
「パスカルの三角形」は格子状の道の交差点までの行き方の「場合の数」の集まりという側面がありました。また、2項係数という意味もありました。
パスカルの三角形

パスカルの三角形の意味1 道順

パスカルの三角形の意味2 2項係数
(
+1)=
+1
(
+1)2=
+2×
+1
(
+1)3=
+3×
+3×
+1
(
+1)4=
+4×
+6×
+4×x+1
(
+1)5=
+5×
+10×
+10×
+5×
+1
「パスカルの三角形」はもっといろいろな意味が重ね合わせられています。「パスカルの三角形」は学びが深まるとともにさらに深まってとらえられるようになります。「パスカルの三角形」のその他の「組合せ(組み合わせ)」の基本については
涙の理由(わけ)【場合の数(パスカルの三角形とその関連)】2007年8月号
第2節. 組合せの「場合の数」の求め方
でも少し書いていますので、興味があればご参照ください。
2数の積の表があって、その総和を求めるには、かける数の総和とかけられる数の総和の積を求めるとよいことを前にも述べましたが、約数の総和を通じて、おさらいしておきましょう。
練習1
解法![[解法]](../../../images/column/essay/sansu/10_m02/1002_1401.gif)
答え (1) 12個 (2) 195
練習2
解法![[解法]](../../../images/column/essay/sansu/10_m02/1002_1402.gif)
答え (1) 24個 (2) 1170
2数の積の表はそれぞれの数の和の積になります。練習形式で解法もつけていますが、ざっと目を通してください。
練習1
次の表の数の総和を求めなさい。
解法
(1+2+3+4+5)2=15×15=225
13+23+33+43+53=1+8+27+64+125=225
答え 225
練習2
次の表の数の総和を求めなさい。
解法
(1+2+3+4+5)×(1+2+3+4+5+6)=15×21=315
答え 315
練習3
次の表で、赤い線で囲んだ数の和を求めなさい。
解法
(6+10+12)×2=28×2=56
1×6+2×5+3×4+5×2+6×1
=1+(1+2)+(1+2+3)+(1+2+3+4)+(1+2+3+4+5)+(1+2+3+4+5+6)
=6番目の三角錐数
=8C3=8 ×7×6÷(3×2×1)=56
答え 56
練習4
次の表で、青い線で囲んだ数の和を求めなさい。
解法
6番目までの「三角錐数の累加」
=9C4=9×8×7×6÷(4×3×2×1)=126
答え 126
付記
8C3=8 ×7×6÷(3×2×1)=56と
9C4=9×8×7×6÷(4×3×2×1)=126を
見比べてみると、
56×(9÷4)=126
となります。
練習
次の図で長方形(正方形を含めます)はいくつありますか。
解法
長方形(正方形を含めます)の右肩になる点の候補と左足になる候補が考えられる。その1つ1つの点に対して、左足の候補の個数を数える。
![[解法]](../../../images/column/essay/sansu/10_m02/1002_1602.gif)
![[解法]](../../../images/column/essay/sansu/10_m02/1002_1603.gif)
(6×1)+(5×2)+(4×3)+(3×4)+(2×5)+(1×6)
=(1)+(1+2)+(1+2+3)+(1+2+3+4)+(1+2+3+4+5)+(1+2+3+4+5+6)
=6番目の三角錐数(8C3)=(8×7×6)÷(3×2×1)
=56
1列の斜めの点に対応する数値の和は三角錐数で、総数は三角錐数のそのまた集まり、これは、6番目の「三角錐数の累加」です。
これは「かけ算九九の表」の答えの集まりの一部である「かけ算三角形」の和でもあります。他の本では見たことがないと思いますがとても面白いと思います。
![[解法]](../../../images/column/essay/sansu/10_m02/1002_1604.gif)
6番目の「三角錐数の累加」
9C4=9×8 ×7×6÷(4×3×2×1)=126
| 単数(モナド) | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
| 自然数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
| 三角数 | 1 | 3 | 6 | 10 | 15 | 21 |
| 三角錐数 | 1 | 4 | 10 | 20 | 35 | 56 |
| 三角錐数累加 | 1 | 5 | 15 | 35 | 70 | 126 |
単数(モナド)「nC0=1」
自然数「nC1=n」
三角数「n+1C2=n×(n+1)÷2」
三角錐数「n+2C3=n×(n+1) ×(n+2)÷(3×2×1)」
三角錐数累加「n+3C4=n×(n+1) ×(n+2)×(n+3)÷(4×3×2×1)」
これは、11月号にも触れたのですが、次節以降に直接関連しますので再掲しました。
以上がこれまで言ってきたことのふりかえりです。
この表を組み合わせの記号nCrを使って表すと、
| 単数(モナド) | 0C0 | 1C0 | 2C0 | 3C0 | 4C0 | 5C0 |
| 自然数 | 1C1 | 2C1 | 3C1 | 4C1 | 5C1 | 6C1 |
| 三角数 | 2C2 | 3C2 | 4C2 | 5C2 | 6C2 | 7C2 |
| 三角錐数 | 3C3 | 4C3 | 5C3 | 6C3 | 7C3 | 8C3 |
| 三角錐数累加 | 4C4 | 5C4 | 6C4 | 7C4 | 8C4 | 9C4 |
となります。これを総和記号Σを使うと、
kC1=n+1C2=n×(n+1)÷2……三角数
k+1C2=n+2C3=n×(n+1) ×(n+2)÷(3×2×1)……三角錐数
k+2C3=n+3C4=n×(n+1) ×(n+2)×(n+3)÷(4×3×2×1)……三角錐数累加
k+3C4=n+4C5……三角錐数累加の累加
k+4C5=n+5C6……三角錐数累加の累加の累加
となります。
さて、やっと、今回の新しいテーマに入ります。
課題
次の図で長方形(正方形を含めます)の面積の合計はどれほどですか。1マスの面積を1として答えなさい。
解法
長方形(正方形を含めます)の右肩になる点の候補と左足になる候補が考えられる。その1つ1つの点に対して、左足の候補の個数を求めた方法にならってみましょう。
![[解法]](../../../images/column/essay/sansu/10_m02/1002_1702.gif)
個々の●に対する○のもたらす面積について調べてみましょう。
![[解法]](../../../images/column/essay/sansu/10_m02/1002_1703.gif)
このことから、次のようなことがわかります。
![[解法]](../../../images/column/essay/sansu/10_m02/1002_1704.gif)
これは、三角数と三角数のかけ算です。
これを簡単な形に直してみましょう。ここで、よくある道順の問題を考えてみます。
次の図をご覧ください。●からそれぞれの
まで進むときの場合の数を赤字で表しています。また青字はそれぞれの
から○まで進むときの場合の数を表しています。
●からそれぞれの
―
を通って○まで進むときの場合の数を考えましょう。
![[解法]](../../../images/column/essay/sansu/10_m02/1002_1705.gif)
さて、次の図で、●から○まで進む場合、その道順は青線を1本だけ通りますが、それぞれの道を通って行くときのそれぞれの場合の数は
1×(1+2+3+4+5+6)、(1+2)×(1+2+3+4+5)、(1+2+3)×(1+2+3+4)、
(1+2+3+4)×(1+2+3)、(1+2+3+4+5)×(1+2)、(1+2+3+4+5+6)×1、
となります。これの総和を求めるということになります。
1×(1+2+3+4+5+6)
+(1+2)×(1+2+3+4+5)
+(1+2+3)×(1+2+3+4)
+(1+2+3+4)×(1+2+3)
+(1+2+3+4+5)×(1+2)
+(1+2+3+4+5+6)×1
です。これは、●から○まで行く道順の場合の数の総数ですから、
![[解法]](../../../images/column/essay/sansu/10_m02/1002_1706.gif)
10C5=(10×9×8×7×6)÷(5×4×3×2×1)=252
です。
nCrで右下のrが0のとき、単数(モナド)です。
rが0のとき、自然数です。
rが1のとき、三角数です。
rが2のとき、三角錐数です。
rが3のとき、「三角錐数の累加」です。
rが4のとき、「三角錐数の累加の累加」です。
rが5のとき、「三角錐数の累加の、累加の、累加」です。
ですから、「●から○まで行く道順の場合の数の総数」は「三角錐数の累加の、累加の、累加」です。
というわけで、求める面積の総和は、
10C5+9C5+8C5+7C5+6C5+5C5=11C6=462
これは「三角錐数の累加の、累加の、累加の、累加」になります。
![[解法]](../../../images/column/essay/sansu/10_m02/1002_1707.gif)
答え 462
付記
いざ、こうしてわかってみると、長方形の「面積」のときだけではなく、前節の長方形の「個数」を求めるときにも同様な方法が使えることに気づくでしょう。

(6×1)+(5×2)+(4×3)+(3×4)+(2×5)+(1×6)
これは、次の図で●から
―
を通って○まで進む場合の数になり、結局、8C3とわかります。

このように、わかったことを使って、振り返ってみると、考えた道筋がまっすぐになって、算数力がパワーアップすると思います。
少し難しくなったかと思いますが、一方、入試問題を見ているとここまで及んでいることが確認できると思います。最後に、正三角形マスを並べたときに内在する平行四辺形の面積について述べ、今回の「算数学入門」を終えたいと思います。
問題
面積1の正三角形マスを並べた図です。
この図の中の平行四辺形の面積の総和を求めなさい。
解法の指針
平行四辺形は、2組の平行線で決まります。図では、3組の平行線がありますから、1組の平行線の除き方は3通りあります。
![[解法]](../../../images/column/essay/sansu/10_m02/1002_1802.gif)
3通りありますが、どの組み合わせも答えは同じで、しかも、重複しませんので、1つを求めて単純に3倍すればよいことがわかるでしょう。
これは、平行四辺形を長方形に変えて考えても同じです。
![[解法]](../../../images/column/essay/sansu/10_m02/1002_1803.gif)
すると、前節で学んだことがそのまま使えることになります。
正方形マスは正三角形マス2個分の面積ですから、そのことも考慮しましょう。単純に2倍するだけですが。
462×3×2=2772
答え 2772
付記
最近、早稲田大学、慶応大学、中央大学、青山大学など有名大学で、新たに中学校を新設するなど、中学からの募集枠を増やしています。中学受験を志す人は学習習慣が身に付いているということが強く見直されているという見方もあるようです。
今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
